もう夫のがんは治らない…絶望の底で知った、死に寄り添うということ

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2020年10月31日 09:01  女子SPA!

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女子SPA!

写真写真はイメージです(以下同)
写真はイメージです(以下同)
 筆跡アナリストで心理カウンセラーの関由佳です。夫のステージ3Bの肺腺がんが発覚してから約2年半、抗がん剤を中心に闘病生活を続けていましたが、ついに治療が頭打ちとなるときがきました。
 医師から積極的な治療をしない「緩和ケア」へ移行することを勧められたその日。私たちは病院を出てからお昼を食べに街へ向かいましたが、私はまともに会話ができず、気づいたら涙を流していました。それを見た夫も抑えていた感情があふれ出し、私たちは道端で大泣き。そのあと食べたものも全く味が感じられず、現実を受け止められないでいました。

◆夫の死を悟った感覚は、まるでフリーフォールで落とされたよう

 がんが脳に転移し、確実に病状は進行していたものの、夫の様子にそこまで変化は感じられず「本当に打つ手がないのだろうか?」と思わせるほど。「もう少し時間はあるのかもしれない」と少々気楽に考えていたのですが、ほどなく事態は急転。夫の体調は坂道を転げ落ちるように悪化し、週単位で明らかに新しい症状が増えていきました。

 日中は夫を気遣いいつも通りの日常を保つように心がけていましたが、病状悪化のあまりの速さに、夜一人で仕事をしているととてつもない不安に襲われるように。そしてついに「本当に夫は死んでしまうんだ」という現実を悟ったとき、地面が抜けるような、フリーフォールで落とされたときの瞬間のような、ゾッとした感覚を覚えました。このとき私は初めて本当の「絶望」という感情を味わったのです。

 とはいえ、この感情を他人に話すにはまだ頭の中が整理しきれておらず、かといって家族に話すと必要以上に心配をかけてしまいそうでためらわれました。そして何より、言葉にすることで現実を突きつけられ、精神がそのまま崩壊してしまいそうで、とても言う気になれませんでした。

◆心のダメージを最小限に抑えるためにしたこと

 頭を抱えた私が藁にもすがる思いでたどり着いたのが、喪失に関する本を読む、ということでした。

 そのときの私が最も恐れていたのは、「夫をちゃんと見送れなくなるほど心にダメージを負うこと」。なんとしても、できるだけ夫が悲しまないよう、私を心配しないよう、そして自分が悔いを残さないよう、しっかり看取らなければという使命感でいっぱいでした。

 そのためには、まず自分の心のダメージを最小限に抑えることをしよう、と考え、夫が亡くなるとき、そして亡くなったあとにどんな状況になりどんな気持ちの動きが起こるのか予習をすることにしました。そのためには本だ!と私はいろいろと探し、2冊の書籍と出会ったのです。

◆「グリーフケア」と出会う

 1つは玉置妙憂さんの『死にゆく人の心に寄り添う 医療と宗教の間のケア』(光文社新書)。玉置さんは看護師であり現在は僧侶でもあるのですが、実際に夫を自宅看護で看取った経験を看護師と僧侶という視点で書かれています。人間が亡くなる前に起こる現象を知ることで、不思議と少しずつ死を自然なものとして受け止める覚悟ができたように思います。

 またもう1つの本は『喪失学「ロス後」をどう生きるか?』(光文社新書)。著者の坂口幸弘さんは死生学や悲嘆学を専門とした関西学院大学の教授で、この本が初めて「グリーフケア」と向き合うきっかけになりました。

「グリーフ」とは喪失の体験による悲嘆やそれに伴う反応のことで、「グリーフケア」とは、グリーフを抱えた人が再び未来を感じられるようになるために寄り添うサポートのこと。当時は自身が負うであろう心のダメージを予習するために、グリーフの状態で起こりうることやケアの仕方をこの本で学びましたが、「グリーフケア」は私の人生に大きな光と希望を与えてくれることになりました。

◆知識は心を救ってくれる

 もちろん、これらの本を読んだことで夫との死別の恐怖が完全に払しょくされたわけではありません。夫は亡くなる2か月前から入院し、苦しみながらどんどんやせ細る姿を見て、私は人生で最もつらく悲しい気持ちを抱えながら毎日病院に通っていました。

 しかし、夫がどんな様子になり、自分の心がどう動く可能性があるのかを本で事前に知っていたので、実際に本に書かれていたことが起こったときは「このことだったのか」と状況を客観視することができました。気持ちが冷静になれて、心に大きなダメージを受けたという感覚は少し抑えられます。知識は、確かに私の心を救ってくれたのです。

◆心の底の「覚悟」。死は特別なことじゃない

 普通に考えると、死別とは恐ろしいことであり、最悪な事態と思いがちですが、そもそも生物にとって死はごく自然なこと。

 大切な人と永遠のお別れをしなければならないタイミングはおそらく誰もが人生で経験し、全く特別なことではありません。その証拠に、すぐ身近なところにも同じ思いを抱えている人がたくさんいるのです。

 本を読んでそんな気持ちも芽生えるようになってから、私の心の底に「覚悟」という土台がどっしりと構えられるように。病院からの帰り道が寂しくて涙が止まらない日もありましたが、どこかに「私は大丈夫」と思える強さも感じていました。

 そしてその強さは、覚悟だけでなく、夫とのつながりがあったからかもしれません。実は私たちはずっと事実婚だったのですが、次回は、夫が死の数か月前に突然言い出した「入籍提案」のエピソードをお話しします。

―シリーズ「私と夫の1063日」―

<文/関由佳>

【関由佳】
筆跡アナリストで心理カウンセラー、カラーセラピストの資格も持つ。
芸能人の筆跡分析のコラムを執筆し、『村上マヨネーズのツッコませて頂きます!』(関西テレビ)などのテレビ出演も。
夫との死別経験から、現在グリーフ専門士の資格を習得中。
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