全鍵っ子必見! クリエイター・麻枝 准の完全復活を告げる、新たな決意――『神様になった日』麻枝 准2万字インタビュー

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2020年11月01日 00:41  ダ・ヴィンチニュース

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写真TVアニメ『神様になった日』TOKYO MXほかにて毎週土曜24:00〜放送中(C)VISUAL ARTS / Key /「神様になった日」Project
TVアニメ『神様になった日』TOKYO MXほかにて毎週土曜24:00〜放送中(C)VISUAL ARTS / Key /「神様になった日」Project

「『Angel Beats!』『Charlotte』を経て――、麻枝 准は原点回帰する。」――この言葉を掲げて、10月10日放送開始のTVアニメ『神様になった日』は始動した。『AB!』から『Charlotte』まで5年。そして、『Charlotte』から本作に至るまで、5年の歳月が経過した。PCゲームとしてリリース、のちにアニメ化されたKeyブランドの傑作たち=『Kanon』『AIR』『CLANNAD』『リトルバスターズ!』で、数多くのユーザーの心を揺さぶりまくった麻枝 准が、みたび原作・脚本・音楽を担当する、オリジナルアニメーション。そして宣言された「原点回帰」。麻枝作品で笑い、涙を流してきた者にとっては、最新作で披露される彼の「原点」とは何であるのか、どう心を動かしてくれるのか、楽しみで仕方がない。そんな『神様になった日』の真実と背景に、メインキャラクターを担当するふたりのキャストの言葉、そして麻枝 准自身へのロング・インタビューで迫っていきたい。

 麻枝 准への、合計2万字強におよぶロング・インタビュー。最終回は、『神様になった日』を観ている方はもちろん、麻枝 准のクリエイションに心を動かされた経験がある人には、ぜひ読んでいただきたいテキストである。麻枝はなぜ、物語を作り続けるのか。その先に、何を目指しているのか。最後に恐縮だが、今回話を聞かせてもらった筆者は、『CLANNAD』や『リトルバスターズ!』をプレイして何度も号泣したり、『Angel Beats!』を観たりGirls Dead Monsterのアルバムを聴いて大興奮していたような、ガチの「鍵っ子」である。だからこそ、ここで麻枝が語ってくれた前向きで力強い言葉は、とにかく嬉しかった。同じ想いを持つ皆さんに、ぜひ麻枝 准の決意を知っていただきたい、と思う。

神様になった日

神様になった日

神様になった日

神様になった日

とにかく出てくる登場人物はみんないいヤツにしよう、と思った

──ちょっと感覚的な話なんですけど、『Charlotte』のタイミングでお話を伺ったときに、「物語の中に自分の経験は関わっていない、自分はこの中にはまったくいない」と麻枝さんはおっしゃっていて。で、『神様になった日』も、この中に麻枝 准さん自身がいるわけではないと思うんですけども、物語とか登場人物の振る舞いや言葉、行動に、麻枝さん自身のパーソナリティが映し出されているところは、もしかしたらあるのではないかな、と感じたんです。麻枝さんとこうしてお話するのは2度目ですし、正直どういう方なのかはよく知らないですけど、全体的にやさしい感じがした、というか。ご自身が書かれたシナリオ、登場人物の行動は言葉を振り返ってみて、そういう印象はありますか?

麻枝:いや、自分はもう完全に割り切って、虚構として書くので、自分の中の何かを反映させないタイプのクリエイターなんですけどね。

──ですよね。実際、「俺はこう思う」は入ってないと思うんですよ。こういうことを考えていて、こんな体験をしたから自分はこうなんだ、は入ってないと思うんですけど、麻枝さん自身がもともと持ってる資質みたいなものは、映し出されたり、滲み出た部分はあるんじゃないかなって感じたんです。

麻枝:自分が反映されてるかどうかとは関係ないんですけど、とにかく悪役を作らない、ということはすごく意識しましたね。悪役が出たとしても、顔は出さない、見切れさせる、とか。その辺は、『Charlotte』で最後に出てくる海外マフィアが騒がれたせいなんですけど、とにかく出てくる登場人物はみんないいヤツにしよう、と思って。

──なるほど。ある種のやさしさを感じたと言いましたが、それってつまり、みんないいヤツだからそう感じるのかもしれないですね。

麻枝:そうですね。出てくる登場人物みんないいヤツにしよう、と思いました。

──音楽面について伺います。今回は主題歌と劇伴を作られているわけですが、前2作はバンドがいましたよね。それはバンドを出すことが目的なのではなくて、アニメの内容だけじゃなく音楽でも盛り上がってほしい、という意図があったから、バンドの存在があった、と。で、今回はその選択をしていないじゃないですか。つまり、音楽でも盛り上げる部分は、アニメを作る前提としてはありつつ、一番わかりやすく盛り上げるための選択をしなかった、ということだと思うんですけど、そこの背景についてお話を聞きたいです。

麻枝:……『Charlotte』で無理矢理入れすぎて、もうCD売りたいだけだろ、と叩かれたからです(笑)。

──ははは。もうバンドを封印しよう、と。

麻枝:はい。

──なるほど。これは「原点回帰」という言葉とも関わるかもしれないですけど、劇中で歌ものの楽曲を使ってないですよね。少なくとも、序盤の時点ではなかったと思うんですけど。

麻枝:そうですね。残りも、挿入歌とかしかないですよ。

──バンドが作品の中にいて、アルバムが作れるくらいの曲があって、という構成ではなく、基本的には挿入歌と劇伴の音楽で見せていく。それってある意味、物語の強度に対する自信があるから、そうなっているのかな、とも感じたんですけど。

麻枝:はい、もしかしたらそうかもしれないですね。でもそれもやっぱり原点回帰で、昔作ってた感じになってます。たとえば『Kanon』は、あの時期はまだ挿入歌を乗せてなかったですけど、『AIR』のときはクライマックスで“青空”がかかって、いろんな人に感動してもらったので、その頃のやり方に戻した感じですね。これまでのアニメも、いいところで歌が流れてたんですけど、バンドみたいなものは今回は必要ないだろうな、と思ってました。

──なるほど。ちなみに、『神様になった日』の音楽で、主題歌でも劇伴でもいいんですけど、特に「これはいいものを作れたな」と感じている曲について教えていただけますか。

麻枝:「挿入歌2」と呼ばれている曲があって――よくインタビューで、「自分の作ったボーカル曲で何が一番ですか」って聞かれたときに、“Life is like a melody”“一番の宝物”“Karma”って答えてたんですけど、それらと並んで、“一番の宝物”と同じくらいお気に入りの曲ですね。自分のメロディもすごくいいものが書けたと思っていて、最近も無限に聴いてました。

──無限に聴くほど気に入った曲というのは、さすがに珍しいんじゃないですか?

麻枝:まあ、けっこう自分の曲大好き人間なので、レコーディングが終わったらミックスが届くのをすごくワクワクしながら待って、自分の曲を聴くんですけど、その「挿入歌2」はほんとに大好きで、よく聴いちゃいますね。

──純粋な興味でお尋ねすると、歌ものでお気に入りの曲を挙げてもらいましたけど、いわゆるBGM、劇伴で麻枝さんが好きな曲はなんですか?

麻枝:一番は“渚〜坂の下の別れ”(『CLANNAD』)ですね。あとは“夏影”(『AIR』)と、“hope”(『智代アフター』)。その3曲かな。

神様になった日

神様になった日

神様になった日

神様になった日

自分が作ったもので誰かの心を動かして、感想を見る。それだけが、自分の生きがい

──5年前、『Charlotte』のときは作曲がスランプだった、さらには「深酒をしないと制作ができない」とおっしゃっていましたが(笑)、『神様になった日』の音楽を聴いたり、無限に聴けるほどお気に入りの曲が書けているという現状を考えると、今はスランプではないのかな、と感じるんですが。

麻枝:一度大病を患ってから、音楽、作曲に関してはもう、湯水のように書けるようになりましたね。ほんとに最近は、あのときに才能が枯渇して死んだんだな、と思うような、スピリチュアルなことが巻き起こってますね。新しい話も書けちゃってるので。

──物語も曲も、どんどん出てくる状態?

──その言葉を聞きたかった人が、たくさんいると思いますよ。我々はすごく嬉しい話ですけど、麻枝さんは今の状況をどう思いますか。やっぱり嬉しいものですか? スランプを一回経験して、自身の才能が枯渇した、と思っていたわけですよね。

麻枝:そうですね。本来なら終わっていた寿命が奇跡的に医学によって延長されて、そのときの執刀医に「あなたは何かを成すために助かったとしか思えない」って言われたんですよ。もしそれが本当だったら、これから何かすごいことが巻き起こるのかなって――なんだかスピリチュアルな話ですけど、ちょっとだけそんな期待もしています。

──それで才能が復活して、今後の麻枝さんがどんどん名曲や名作を生み出してくれるんだとたら、そんなに素晴らしいことはないです。

麻枝:確かに。もし、あのとき死なずに生かされた理由があるとしたら、それくらいしかないですね。

──『神様になった日』のシナリオをラストまで書き上げたとき、つまり初稿を出して、いろいろな直しを経て、シナリオが「これで行きましょう」と完成したときに、麻枝さんの中に浮かんだのはどんな言葉でしたか?

麻枝:成功するかどうかは知らないですけど、ある感動させるギミックを思いついて、それを入れた自分を褒めてあげたいです(笑)。ほんとにね、「危なかった! よく思いついたな、これ」と思って。ただまあ、『神様になった日』という作品自体に関しては、まだ不安なままですけど。

──まあ、特集を作って作品を応援したい立場ではあるので、3話、4話がいかに面白いのかを大声で宣伝したい気持ちはありますけども。

麻枝:いやもう、あんまり触れないでほしいです。

──(笑)そこで大笑いすることが、あとあと効いてくるのは間違いないじゃないですか。

麻枝:まあ、ね。別に、ギャグに自信があってギャグ回を書いてるとは思ってほしくないんですよ。お祭りのようなにぎやかな日常を描くことによって、落差で最後のシリアスがさらに切ないものになる、という逆算で作ってるものなので。「ギャグが得意でギャグ回作りましたよ」ではないことを強調したいです。

──(笑)ギャグが得意ではない、という自覚なんですか?

麻枝:アニメでは。アニメでギャグをやるのは、すごく不得意です。だから、「笑ってほしい」なんておこがましいことは言えないです。

──逆に言うと、ゲームのシナリオライターとしての麻枝さんは、ご自身の中でもギャガーとして成立している、という認識なんですか。

麻枝:そうですね。来年サービス予定のソシャゲでは、けっこう切れ味の鋭いギャグを書いてるつもりです。

──麻枝さんの、ゲームシナリオにおけるギャガーとしての才覚は我々を楽しませてくれるので、今のお話には期待が高まりますね。で、前編の冒頭でもお話したんですが、この作品に期待している方がたくさんいるわけですけれども、麻枝さんにとって作品を受け取ってくれるユーザーとはどういう存在なのか、改めてお尋ねしたいです。ご自身のファンというよりは、広く自分の作品を受け取る人、『神様になった日』に触れる人たちすべて、という意味で。

麻枝:今回に関して言うと、「アニメでこんなに泣ける作品があったのか!」って思ってもらいたいです。そもそも、自分がなんでものを作っているかというと、誰かの心を動かしたいから、もの作りをしているのであって。しばらく放心状態になったり、その作品のことをずっと考えてしまったり、たとえばマンガだったら、終わったら次のマンガを読み始めて、前に読んだマンガは忘れちゃう、みたいな消費のされ方じゃなくて、とにかくその人の胸に残り続けてほしい、と思いながら、作品を作っていて。そこで、自分は泣きゲーの先駆者として、一番力を入れた今回の作品が、みんなの胸にどう突き刺さってくれるか、っていうチャレンジなんですよね。そういう意味で、驚いてほしいという気持ちが、今はあります。もちろん、これまでにも泣けるアニメはあったけど、「泣けるアニメは?」って言われたときにトップに来るような作品を生み出したい、という気持ちでいます。

──ユーザーとは、そういうものを届けたい相手である、と。

麻枝:届けたいというか、そのために自分は創作しているので。

──では、「誰かの心を動かしたい」というのは、なぜですか?

麻枝:もう、それだけが生きがいなんですよ。プライベートで家族がいるわけでもなく、恋人がいるわけでもなく、友達がいるわけでもなく、ペットがいるわけでもないので。結局のところ、自分が作ったもので誰かの心を動かして、感想を見る。もう、それだけが自分の生きがいです。

──生きがいであり、新たに生まれ変わったことで、そこに使命のようなニュアンスも加わったりしたんでしょうか。

麻枝:うーん、使命というか、結局のところ自分は、プライベートで誰かを幸せにできたりするような人間じゃないので。せめて、作品で誰かを感動させたいなっていうことですよね。

──それは、麻枝さんの中に何か埋まらないものがあって、創作をすることで満たされる、という部分もあるんですか?

麻枝:結局のところ、普通の人がやっていて楽しいと思えるようなことが、自分は全然楽しくないんですね。作って、誰かに感動してもらって、その言葉を見るのが、唯一の生きがいなんです。

──そういう意味では、今回もいろんな声が届くと思いますけど、「感動した」という気持ちがたくさん伝わってくるといいですね。

麻枝:ほんとに、そうなるといいですね。今も、ドキドキハラハラしてます。

──今回、原点回帰というテーマもあり、新しく生まれ変わった麻枝さんの作り手としてのキャリアの中で、『神様になった日』は大きな位置を占めることになるんじゃないかと思うんですけど、クリエイター・麻枝 准にとってこの作品は、今後どんな意味を持っていくと感じていますか。

麻枝:それはもう、成功するかどうかによるんですよね。成功の度合いもそうだし、最終話まで終わってみないことには、どういう存在になるかはわからないです。

──とはいえ、現時点で作り手としての気づきはありますよね。今日、お話をたくさん伺いましたけど、アニメの構成のしかた、脚本、あるいはギャグの成立のさせ方だったり、今までの2作と『神様になった日』で得た学びは、たくさんあるんじゃないかと思いますけど。

麻枝:でも結局、アニメって自分の手ではどうにもならない部分が多いんだな、という印象はあって。やっぱり、アニメを作るのはなかなか難しいというか……さらに「もう一回アニメ作りましょう」ってなったら、「またこんな大変な思いをするのか」って考えますよね。もちろん感想をもらって、否定的なことを言われるのも大変なんですけど、この3年間、監督とずーっとホン読みをして、戦いのような毎日でしたから。今までの経験を経て、これまで以上にスムーズに作れるぞっていう感じでもないんですよね。

──でも、生きがいを得るためには、作り続けないといけないですよね。

麻枝:そうですね。もちろん、今作の成否に関わっているんですけど。

──(笑)それが、別に誰も待ってないものだったら作らなくてもいいと思いますけど、麻枝さんのクリエイション、先ほどの話にも出ていた新しいゲームや『神様になった日』も含めて、麻枝さんの創作を楽しみに待っている人たちがいます。最後に、その人たちに今、届けたい言葉を聞かせてください。

麻枝:うーん……これもねえ、あまり大きなことを言うと叩かれそうなので(笑)、控えめに言わざるをえないんですけど。どうしようかなあ……でも、これから先に発表されるコンテンツには、自信があります。これから用意されているものに関しては、『神様になった日』が始まって、そこからもカラーの違うコンテンツを送り届けられそうです。だから、自分のファンの方に向けては、「『神様になった日』の後も期待していてください」って言いたいですね。

──『神様になった日』をはじめ、その後のコンテンツを楽しみにしてね、いいもの作れてるよ、と。

麻枝:はい、そんな感じですね。

──素晴らしいです。お話を聞いていて単純にワクワクしましたし、麻枝さん自身が「人の心を動かすのが生きがい」とおっしゃっていて、作品を作る場が立て続けに用意されていることは本当に喜ばしいことですけど、麻枝さんは今、幸せですか?

麻枝:どっちかというと、届いて報われたときに一番多幸感に包まれるのであって、作ってる間はとにかく大変だし、つらいですよ。なかなかにしんどいです(笑)。

取材・文=清水大輔


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