『ザ・ノンフィクション』覚醒剤で服役12回、結婚4回の男の実像とは「母の涙と罪と罰 2020 後編 〜元ヤクザと66歳の元受刑者〜」

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2020年11月02日 22:42  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月1日は「母の涙と罪と罰 2020 後編 〜元ヤクザと66歳の元受刑者〜
というテーマで放送された。

あらすじ

 依存症患者や前科のある人の立ち直り支援を行う遊佐学。かつて学は少年院にも入った札付きのワルで、24歳でやくざになった。学は薬物売買から自身も覚醒剤を使用するようになり、薬物による孤独と恐怖で5階から飛び降りたこともあり、今も片足に後遺症がある。

 その後、学は獄中で、自分と同じようにやくざで薬物中毒となった過去を持ちながら、牧師となり人を支える側になった進藤龍也氏の書籍と出会い、信仰により自分もやり直せるかもしれないと改心。学は、自分が家族や仲間から支えられた経験から、今度は自分が支える側になりたいと、薬物利用で12回服役した高野の身元引受人となる。高野は66歳だが、30年以上は刑務所暮らしで、薬物による錯乱で過去にビル10階から飛び降りたことがあるという。

 高野はかつて4度結婚し、娘もいるというが、娘や自分を育ててくれた義母とは数十年音信がない。唯一連絡を取っていた父親の死も獄中で知り、墓の所在もわからない。高野は父親の墓を探すため、現在海外で暮らす娘と電話で会話し、義母とも数十年ぶりに再会を果たす。家族と久々に再会できた高野だったが、通う予定だった回復施設や病院の依存患者の支援プログラムは新型コロナウイルスの感染拡大の影響から中止が続く。

 高野は薬物の後遺症から幻聴、幻覚がひどくなっていく。学が病院に連れて行ったときには、足取りがふらついていた。その後、近所の住民とトラブルを起こし、警察官がかけつけたときには部屋で自分の腹を切っており、精神病院に入院。退院後、血まみれの部屋で学と再会した高野は、死に水を学に取ってほしいと言うが、学は「その道を(自分で)選びとってほしいなって」と話す。番組の最後で、ようやく高野は無縁仏になっていた父親の墓を見つけ、手を合わせた。

 高野は主に覚醒剤で12回の服役経験があり、66歳の人生のうち30年は刑務所暮らしで、4度の結婚歴がある。シャバに出ても半年ももたず、またムショへ、という生活だったそうだ。

 言葉だけ並べると、ろくでもない人物像が浮かんでくるが、番組内での高野は「周りに気を使う人」という印象だった。支援をする学にも気を使っていたし、久々の娘や義母との再会では、相手に気を使いに使っていたのが見て取れた。そうした気を使う様子と、近隣住民と警察が来るようなトラブルを起こし、自宅で腹を切るという姿がまったくつながらず、そこに薬物の恐ろしさを見たように思う。

 高野の実の両親は、高野が幼少期の頃に離婚。父親は高野を両親に預け働きに出て、その後再婚するも、高野を残してまた別の女性の元に行き……と、かなりふがいない。高野は幼少期、少年期を寂しく過ごしただろうし、私がその立場なら父親を恨みそうだと思ったが、しかし高野と最後まで連絡を取っていたのはこの父親だ。

 高野にしてみれば義母と娘は、自分の覚醒剤の利用で一方的に迷惑をかけてしまい「会わせる顔がない」という思いから連絡が途絶えてしまったのかもしれないが、一方で父親はそのふがいなさゆえに、気兼ねせず連絡を取り続けることができたのかもしれない。番組の最後で、高野はようやく無縁仏に埋葬されていた父親の墓を見つけだし、スーツ姿で墓を訪れ、骨を分けてもらっていた。骨になった父親が高野の支えとなればと思う。

依存症支援もコロナの影響を受けている

 番組内では、新型コロナウイルスの影響で、高野が当初受けるはずだった依存症患者のための支援プログラムが中止になったと伝えられていた。

 コロナ禍の状況下、オンラインミーティングが増えたことで「実際に対面でのほうが伝わるものが多い」「オンラインでは物足りない」という不満の声をよく聞く。しかし、私自身は、オンライン会議は実際の場所に行かなくて済むし、無駄話も減り、つまらないときは別のことをしても知られることはないし、アフターコロナの世界においてもオンライン会議は是非残ってほしいと願っている。

 しかし、このような依存で苦しむ人たちが集うプログラムにおいては、対面の良さも大いにあるだろう。心の内を伝えるというのは、仕事のように、業務遂行において必要な要件をわかりやすく、簡潔に伝えるといったものではないからだ。だが、さらに別の見方をすれば、こういうプログラムに参加したいが、対面では敷居が高すぎると思う人や、遠隔地に住む人、そしてデジタルになじみや愛着のある人にとっては、「オンラインなら参加できるかもしれない」と、新たな支援につながる可能性もあるだろう。

 以前、元ひきこもりだった人が自分の経験を話すイベントを聞きに行ったが、その際、講演者が、会場の扉のドアは開演後も開けておいてほしいと話していた。引きこもりの人にとっては会場に来るまでがとても高いハードルとのことで、定刻通りに来られないことも多いという。その際、扉が閉じていると扉を開けることに気後れし、諦めて帰ってしまうこともあるそうなのだ。

 実際の対面での開催と、オンラインの開催、どちらにもメリットがある。特に、困難な状況下にいる人においては、さまざまな選択肢があるといいのではないかと思う。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「たたかれても たたかれても… 〜山根明と妻のその後〜」。日本ボクシング連盟の終身会長だった山根明。しかし、2018年の夏、関係者300人以上から「助成金の不正流用」や「審判不正」の告発を受け、その独特のキャラクターもあり世間から猛バッシングを浴びた。山根は会長職を辞任し、連盟からは事実上の永久追放となった。現在の山根と妻の暮らしとは?

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