強盗と病に襲われ演奏できなくなったピアニスト 特製手袋で20年以上ぶりにピアノ弾き涙(ブラジル)<動画あり>

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2020年11月09日 05:51  Techinsight Japan

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特製グローブにより再びピアノを演奏できた80歳のピアニスト(画像は『Hindustan Times 2020年11月7日付「Bionic gloves help Brazilian pianist play music using all his fingers again」(REUTERS)』のスクリーンショット)
ピアニストとして世界中で活躍していた男性が強盗に襲われて右手が使えなくなり、その後は病気により左手も使えなくなってしまった。度重なる不幸にも鍵盤を叩くことを諦めなかった男性に技術の進歩が味方をした。3Dプリンターで作られた特製のグローブを装着することにより、20年以上の時を経て両手でピアノを弾くことができたのだ。涙を流しながら演奏する男性の姿がネット上に拡散され、多くの人の感動を呼んでいる。『Hindustan Times』『Reuters』などが伝えた。

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ブラジルのサンパウロに住むジョアン・カルロス・マルティンスさん(João Carlos Martins、80)は指揮者兼ピアニストとしてオーケストラに所属してアメリカやヨーロッパの各国で演奏、バッハのピアノの曲を全曲録音するなどして順調にキャリアを築いていた。

しかし今から25年前の1995年にブルガリアで強盗に襲われてしまい、右手が使えなくなってしまった。その後、局所性ジストニアという神経疾患を患ってしまい、左手も自由に動かすことが難しくなってしまった。ピアノが弾けなくなってしまってからは指揮者として活動を続けながら、24回もの手術を行い再びピアノを弾ける日を夢見たという。

10本の指でピアノを弾けなくなってしまってから、左手と右手の親指や人差し指だけを使って演奏を続けてきたジョアンさんは「私の商売道具だった指の機能を失ってから、体の内側は死んでしまっているような感覚でした」と明かしている。

ジョアンさんの悲しい経歴を知った工業デザイナーのウビラータ・ビザロ・コスタさん(Ubiratan Bizarro Costa)は、ジョアンさんがピアニストを引退するのは早いと思い、彼のために「バイオニック・グローブ」を開発した。

ジョアンさんは局所性ジストニアにより筋肉の収縮が上手くいかず、一度ピアノの鍵盤を押すと離すことができないために演奏ができなかった。ウビラータさんが開発したグローブは3Dプリンターで作られており、指の部分に付けられたプレートが鍵盤を押した指を持ち上げるサポートをしてくれることにより、ピアノを弾くことができるというのだ。

ジョアンさんは「最初このグローブを見た時は、ピアノ用ではなく『ボクシング用のグローブだろ?』と思わず冗談を言ってしまいました」と明かしており、このグローブでピアノが弾けるようになるとは到底思わなかったそうだ。


ジョアンさんはグローブを装着してピアノを演奏する姿を動画に収め、自身のインスタグラムに投稿した。動画では20年以上ぶりにピアノが弾けた喜びから、涙を流しながら演奏するジョアンさんが映っている。この動画は多くの感動を呼び、11月8日時点で再生回数が30万回を超える大反響となった。「80歳にもなって、20年以上も演奏できなかったピアノを再び弾くことができるなんて奇跡だよ」とジョアンさんは喜んでいる。

ウビラータさんは「F1モーターレースの技術から今回のアイディアが浮かびました」と話しており、少なくとも100ドル(約10,300円)をかけてジョアンさんのグローブを作ったという。現在は「Bionic Extender Gloves」というブランドを立ち上げ、ヨーロッパで広めている。



画像は『Hindustan Times 2020年11月7日付「Bionic gloves help Brazilian pianist play music using all his fingers again」(REUTERS)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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