『鬼滅の刃』ノベライズでも破格の部数を突破 10月期月間ベストセラー

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2020年11月10日 10:01  リアルサウンド

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10月期月間ベストセラー【総合】ランキング(トーハン調べ)

1位 『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ』吾峠呼世晴(原作)、矢島綾(小説)、ufotable(脚本) 集英社
2位 『ディズニー ツイステッドワンダーランド』公式ガイド+設定資料集 Magical Archives』 スクウェア・エニックス
3位 『半沢直樹 アルルカンと道化師』池井戸潤 講談社
4位 『転生したらスライムだった件(17)』伏瀬、みっつばー(イラスト) マイクロマガジン社
5位 『白石麻衣 乃木坂46卒業記念メモリアルマガジン』講談社(編集) 講談社
6位 『突然ですが占ってもいいですか?PRESENTS とにかく運がよくなりたい!』木下レオン、ぷりあでぃす玲奈、星ひとみ(監修) 扶桑社
7位 『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ みらい文庫版』吾峠呼世晴(原作)、松田朱夏(著者)、ufotable(脚本) 集英社
8位 『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』武田友紀 飛鳥新社
9位 『明るい暮らしの家計簿 2021年版』ときわ総合サービス株式会社(編集) ときわ総合サービス
10位 『少年と犬』馳星周 文藝春秋
11位 『鬼滅の刃 風の道しるべ』吾峠呼世晴、矢島綾 集英社
12位 『いちばんかんたん いちばんお値うち 家計ノート2021』 小学館
13位 『シンプル家計ノート2021』 オレンジページ
14位 『鬼滅の刃 しあわせの花』吾峠呼世晴、矢島綾 集英社
15位 『「育ちがいい人」だけが知っていること』諏内えみ ダイヤモンド社
16位 『鋼鉄の法 人生をしなやかに、力強く生きる』大川隆法 幸福の科学出版
17位 『FREESTYLE 2020 SATOSHI OHNO EXHIBITION 大野智 作品集』大野智 KADOKAWA
18位 『約束のネバーランド 戦友たちのレコード』白井カイウ(原作)、七緒(小説)、出水ぽすか(作画) 集英社
19位 『鬼滅の刃 片羽の蝶』吾峠呼世晴、矢島綾 集英社
20位 『NHKまる得マガジン ホットケーキMIXで絶品おやつ&意外なランチ』Mizuki(講師) NHK出版


 2020年10月のベストセラーランキングは同月16日からの映画公開に伴い『鬼滅の刃』フィーバーと言っていいものだった。コミックは言うまでもなく、書籍総合でも『鬼滅』関連が複数ランクイン。注目してほしいのは『劇場版鬼滅の刃 無限列車編』のノベライズはみらい文庫版とjBOOKS版で集英社から2冊出ていることだ。


“こどもの本”総選挙に新規ベストテン入りした唯一のシリーズが『鬼滅』

 全国の小学生に「今まで読んだなかで1番すきな本」に投票してもらう企画「小学生がえらぶ! “こどもの本”総選挙」は2020年5月に第2回の結果が発表されたが、トップ10内にランクインした作品・シリーズのなかで唯一、第1回には入っていなかった作品がjBOOKSから刊行されている『鬼滅の刃』のノベライズだった。


 映画化以前から小学生すら『鬼滅』の小説を読んでいた。これを受けてか、jBOOKSで刊行されるスピンオフ小説ではなく、集英社みらい文庫からはマンガ本編のノベライズが刊行され、映画公開以前の段階で2冊で43万部と小学生向けの児童文庫作品としては破格の部数を叩き出していた(今回の『無限列車編』を入れた3冊で50万部を突破)。


 ただ、小学生を対象読者にしたみらい文庫と、主に「ジャンプ」作品のノベライズを刊行しているjBOOKSでは本来、読者層が異なる。みらい文庫は総ルビだが、jBOOKSはルビが少ない。内容面でも小学生が読むという配慮があるのがみらい文庫、中学生以上が読む前提になっているのがjBOOKSだ。


 『無限列車編』の小説版は2種類あるが、みらい文庫版とjBOOKS版では小説を書いた作家自体が違う。これはファンに2冊買わせようということではなく(両方買う人もいるだろうが)、同じ原作ではあるが異なる読者層に向けて、異なるパッケージングと内容を提供しようという試みだ。


 『無限列車編』で言えば、たとえばみらい文庫版では小説を読み慣れていない人向けにジャキ、シャキシャキといった擬音が多用され、おどろおどろしさを演出するフォントいじりも多いが、jBOOKS版はそうではない、といった特徴がある。


集英社の小説展開に見るワンコンテンツ・マルチユース

 『鬼滅の刃』以外でも、集英社はマンガ原作ないしマンガ原作映画の小説版をみらい文庫とjBOOKS、集英社オレンジ文庫で2種類ないし3種類刊行するという、いわゆるワンコンテンツ・マルチユース展開をしてきた。たとえば『ヒロイン失格』『ひるなかの流星』『かぐや様は告らせたい』などがそうだだ。


 これらの原作マンガは基本的に中高生以上向けだが、映画では小学校高学年もターゲットの一番下の年齢層に入る。同じ映画の小説版が書き手を変えてみらい文庫、オレンジ文庫、jBOOKSから同時刊行されることもあるものの、それぞれ書店店頭での売場は異なり、読者層は食い合わない。


 少女マンガ原作の実写映画の小説版では、人気俳優が表紙になっているが、これは2014年刊の『アオハライド 映画ノベライズ』の前後から確立されていったものだという。こういう手法はそんなに昔からあったわけではない。


 これに先行する他社の試みとしては2012年刊の細田守『おおかみこどもの雨と雪』の小説が角川つばさ文庫と角川文庫で2種類刊行される、というものがある。ただKADOKAWAの場合、細田作品にしても2016年刊の新海誠『君の名は。』の小説版にしても、総ルビかどうか以外には本文を児童文庫と一般文庫で基本的に大きく分けてはいない。パッケージや流通(児童文庫と一般文庫では書店での棚の場所が違う)だけでなく、書き手自体を分けている集英社のほうがより徹底している。


 さすがにライト文芸レーベルであるオレンジ文庫版は『鬼滅』の小説版は出なかったが、ファッション誌「Seventeen」の表紙は飾っている。このあたりの展開のさせ方はさすがに上手い。


 『鬼滅の刃』は「国民的大ヒット」と言われるが、「国民」とひとことで言っても年齢・性別など属性も異なれば楽しみ方もそれぞれであり、そういう多様なニーズに応える展開ができる組織は強い。


 それは『鬼滅』ほどのメガヒットではない作品であっても丁寧に需要を拾い、また、「同じ映画のノベライズでも2,3パターンあってもいいんじゃないか?」といった従来の常識から外れたチャレンジを(失敗も含めて)積み重ねてきたからこそだ。


 いま『鬼滅』の小説出せばなんでも売れるーーわけではないのである。


■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。


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