契約更改、年棒、引退後……野球選手の懐事情は意外と厳しい!? マンガ『グラゼニ』が描くリアル

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2020年11月18日 09:01  リアルサウンド

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 『ナニワ金融道』や『ミナミの帝王』などお金をテーマにした漫画には一定の人気がある。日本ではお金を稼ぐことはあまり美徳とされないが、それ故にフィクションの世界では広く親しまれているのかもしれない。一方、スポーツ漫画はその対極に位置するものだろう。友情、努力、勝利、これらはフィクションだろうとノンフィクションだろうと否定する人は皆無だ。


 お金とスポーツ、一見すると対極にあるこの2つの要素を混ぜこんでしまった漫画が『グラゼニ』だ。プロ野球選手を主人公としたれっきとした野球漫画なのだが、実のところ野球をプレイする描写と同じくらいの量で、お金が描かれる。


 主人公である凡田夏之介はプロ8年目の左の中継ぎ投手。年俸は1800万円だが、これは華やかなプロ野球界では決して高給取りとはいえない。


 凡田は金勘定に関しては一家言を持ち、周囲のプロ野球選手の年俸についてはソラで当てられてしまうほどの年俸マニアだ。そのせいか、自身の年俸である1800万円以下の打者は見下ろして投げるために次々と抑えていき、逆に年俸1800万円以上の打者には萎縮してしまい、打たれる。ただし1億円プレイヤーなどの超高給取りの打者相手は開き直って次々と抑えてしまう。そうした特殊な能力は大きな特徴だが凡田自身は地味なキャラクターに抑えられており、むしろ主人公はお金だとも言えるほどだ。


 言うまでもなく、プロ野球選手の寿命は短い。彼らが引退してしまう年齢の平均は29歳、在籍期間でいうと9年だ。平均的な年俸は800万円ほど。これをかけ合わせると7200万円という計算になる。一般的なサラリーマンの生涯給料は2億1800万円ほどであるが、引退したプロ野球選手がこの差額の1億4600万円を引退後に稼ぐのは至難の技だと言わざるを得ない。


 もちろん、引退後に球団の監督やタレントなどになれたらそれ以上を稼ぐことは可能だが、毎年100人以上が引退していく中でその椅子はあまりにも少なすぎる。球団職員などの職に就くことが多いようだが、それでも引退した全ての選手を受け入れるにはキャパが足りない。そうしたことから、引退後の生活における収入面での不安は常にプロ野球選手につきまとうわけだが、『グラゼニ』の主人公である凡田もその例に漏れない。それ故に、彼はグラウンドに埋まっているお金(銭)を掘り起こそうとしているのだ。


 お金の話と同時に詳細に描かれるのがプロ野球選手のリアルだ。お金の面はもちろんのこと、ドラフトや球団間の移籍など、多くのプロ野球事情が描かれる。「リアルな描写」の中で特に野球ファンが興味を惹かれるのは契約更改と年俸ではないだろうか。


 当然、作中ではその部分にも描かれている。例えば、凡田は冒物冒頭の年俸1800万円から1億円プレイヤーにまで成長していくが球団との交渉は熱烈だ。行き過ぎた交渉によって他球団に移籍してしまうほどに。(詳細は割愛するが、メジャーを含めた4球団以上を渡り歩いている)


 野球選手の年俸が選手名鑑やスポーツ新聞に掲載されることは、考えてみると非常に不思議であるが、作中ではその理由も描かれる。実のところ、メディアに出る推定年俸はほとんどがあっているそうだ。どうやって年俸を推定しているのかというと、契約更改後の会見で「〇〇円まで上がりましたか?」「いえ、そこまでではないです」「じゃあ〇〇円?」「そんな感じです」と、こんな具合だ。もちろんこの流れは漫画の中にもある。


 作者はインタビュー(グラゼニ作者と元プロ野球選手が明かす”漫画界と野球界の裏側”!?:https://trendnews.yahoo.co.jp/archives/445656/)の中で「セカンドキャリアまで含めて、野球選手の人生自体に興味がある」と語っている。そのために多くの取材を重ねて、リアルなプロ野球をコミカルに描いているのだ。


 『MAJOR』、『ダイヤのA』、『おおきく振りかぶって』などに代表されるように、野球は漫画のジャンルの中でもポピュラーな題材の1つだが、その中身はほとんどが試合だ。そんな作品群の中で野球の“お金”を大きなテーマとして描かれる『グラゼニ』は率直にユニークだ。このシリアスなお金の話を楽しむのも、現代野球漫画の一興かもしれない。


■嵯峨駿介
23歳でBass Shop Geek IN Boxを立ち上げ。楽器関連の他にグルメ、家電など幅広い分野でライターとして活躍中。Twitter:@SAxGA


■書籍情報
『グラゼニ』
原作:森高夕次
漫画:アダチケイジ
出版社:講談社
http://morning.moae.jp/lineup/109


現在は『グラゼニ 〜パ・リーグ編〜』として連載されている。
https://morning.kodansha.co.jp/c/gurazeni_paleague


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