最高級車センチュリーに自腹で乗る人々 オフ会に潜入、オーナーに聞いた公用車問題と「ふさわしい人」論

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2020年11月24日 07:00  ウィズニュース

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写真トヨタ・センチュリーのオーナーズクラブ「鳳凰倶楽部」オフ会の参加車両(ナンバーにモザイクをかけています)
トヨタ・センチュリーのオーナーズクラブ「鳳凰倶楽部」オフ会の参加車両(ナンバーにモザイクをかけています)

「センチュリーに知事が乗るのはけしからん!」と今秋、にわかに全国で巻き起こった公用車論争。このVIP御用達の最高級車をマイカーとして所有する、巷のセンチュリーオーナーたちは何を思うのか? 夜な夜な開かれるオフ会に潜入して聞いてみた。トヨタ・センチュリーに乗る歓びとは?(北林慎也)

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近寄りがたい駐車ゾーン
11月のとある週末、圏央道外回りの厚木PA。
午後8時ぐらいから、トヨタ・センチュリーが一台、また一台と、音も無く静かに入ってくる。
高架下の一角に集まった、センチュリーばかりおよそ20台。オーナーズクラブ「鳳凰(ほうおう)倶楽部」の定例オフ会の始まりだ。

センチュリーだけが並ぶ駐車スペースは異様だが、どこか威容も醸している。
見た目はフルノーマルの車両がほとんど。気合の入ったカスタム仕様も何台かあるが、ベタベタのシャコタンはおらず、下品さは感じない。
ただやはり、気安く近寄りがたい雰囲気のゾーンではある。
少なくとも、ここに後から横付けで停める休憩ドライバーは見当たらない。

やや緊張しながら遠巻きに眺めていた記者に気づいて、代表の川原弘幸さん(53)が声をかけてくれた。
怖い人ではないようでホッとする。

交通ルールをきちんと守る
鳳凰倶楽部は、神奈川県内で中古車販売業を営む川原さんが2011年に立ち上げた。
関東と北海道、東海にそれぞれ支部があり、会員の所有するセンチュリーは合わせて50台近くにのぼる。
川原さん自身もマイカーとしてセンチュリーを30年近く乗り継ぎ、現在は6台目。
ボディーカラーは、お気に入りの水色メタリック「瑞雲」だ。

中古車市場でのタマ数はけっして多くないが、官公庁の払い下げなどで一定数が出回っている。
長く使われたハイヤー上がりなどは低年式の過走行車が多いが、こまめにメンテナンスされ丁寧に扱われるため、程度の良い個体が大半だ。

会員はサラリーマンに会社役員、主婦……とさまざま。20代の若者もいる。
ずっと乗り続けている人が多く、50万キロ近く乗り続ける個人タクシー運転手もいるという。
いかつくてカッコイイから、と安易な気持ちで購入する「オラついた輩」も世間にはいるが、たいがいはすぐに飽きて手放してしまうため、入会には至らないという。

整備工場などでは、厳格な身分証明を求められることもある。「反社会的勢力」と誤解されないように神経を遣う。
公道では徹底して交通ルールを守り、ジェントルに走るよう会員に呼びかけている。

徹底した後席ファースト
センチュリーは、トヨタブランドの最上級に位置づけられる大型セダン。
初代は1967年に発売された。車名は、グループの祖業である自動織機事業の創始者・豊田佐吉の生誕100年と、維新からの「明治100年」にちなむ。
1997年に2代目となり、2018年に現行の3代目となった。

それぞれ20〜30年前後、と異常に長いモデルライフから分かる通り、購入したオーナーが自らハンドルを握るのは想定しておらず、限定的な用途を念頭に作られている。
世界的な分類に従えば、このクルマは「ショーファードリブンカー」とされる。職業運転手(ショーファー)が運転するクルマ、という意味だ。
つまり、皇族や政治家、財界トップを後席に乗せてお抱え運転手が走らせる、VIP御用達カーである。

初代と2代目はまったくの専用設計。足元の広さや座り心地、乗り降りのしやすさなど、徹底的に後席ファーストの思想が貫かれる。
特に2代目は、いまだ国産車で唯一のV型12気筒エンジンを積む稀有な存在だ。
3代目は、レクサスLS600hとプラットフォームを共用するハイブリッド車となったが、いまだドメスティックな国内専用車であり続ける。

銀モールやメッキ、木目を多用した、抑揚の少ない穏やかな水平基調の内外装とスタイリングは、線香の匂い漂う仏壇を思わせる和テイストに満ちている。
グローバル高級ブランドの「レクサス」を名乗らないのはおろか、楕円形のトヨタマークすらも付いていない。
代わりに、神話上の霊鳥である鳳凰をモチーフにした専用エンブレムが随所にあしらわれる。

実はドライバーズカー?
その鳳凰を会の名前に冠する「鳳凰倶楽部」。会員たちは、そんなセンチュリー独特の佇まいに魅せられ、自ら所有して乗り続けている。

彼らの多くが、センチュリーが醸す独自の空気感を「オーラ」と表現する。
商売柄、さまざまなクルマを見てきた川原さんも、「中古のセンチュリーでも、最新のメルセデス・ベンツに引けを取らない特殊なオーラがある」と太鼓判を押す。
元々クラシカルな造形で、モデルチェンジのたびに大きくカタチが変わらないのも、そう思わせる要因だ。

また意外にも、センチュリーを優秀なドライバーズカーとして評価する人も多い。

「フツーに流しているだけで職務質問をよく受ける」と笑う都内在住の男性(49)が乗るのは、2010年式、ブルーブラック「摩周」の2代目。
美点に運転のしやすさを挙げ、「実は運転席が一番最高なクルマ」と絶賛する。
社用車歴のある愛車は、入手時点で21万キロも乗られていたが、乗り心地は良いままだった。

都内から茨城県土浦市まで、往復120キロの通勤の足にする会社役員の男性(49)は、クラウンでの通勤で腰痛がひどくなり、センチュリーに乗り換えた。
乗り心地が柔らかいため高速域のカーブでは不安定になるが、トルクのあるV12エンジンのおかげで、アクセルを吹かさずに走れて運転は安楽だという。
追い越し車線のドライバーが振り向いて、こちらの車内を覗き込むことが多い。やはり誰が乗っているか気になるらしい。
百貨店やホテルなどの駐車場に乗り付けると、たいていのところは対応が良いので助かっているという。

知事公用車に高まる批判
最近、そんなセンチュリーを巡って世間が喧しい。その本来の使われ方、つまり「公金で偉い人を乗せる」ことの是非について議論が沸いている。

兵庫県が昨年8月、知事と県議会議長のリース公用車を、レクサスから最新型のセンチュリーに変更。かたや山口県は、皇族の来県時に使う「貴賓車」として歴代センチュリーを購入してきたが、肝心の貴賓車としての使用実績はほとんどなく、県議会議長の公用車として使っていた。
地方自治体の公用車を巡るこれらの実態が報道で明らかになると、「税金の無駄遣いでは」などと疑問や批判の声が上がった。

これに対して兵庫県の井戸敏三知事は、記者会見や議会答弁で「県土が広大で山道も走るため、馬力があって故障しない走行性能が必要」「その程度の排気量(5000cc)が知事車にふさわしい」などと反論。
さらに、実際に乗れば必要性が分かるとばかりに「乗ってみてください」と繰り返すと、県内外から多くの反発を招き、県庁には電話が殺到した。
そして、公費でセンチュリーを賄う是非を巡る議論は、国会議員の黒塗り公用車にも飛び火しつつある。

「車にふさわしい仕事を」
鳳凰倶楽部に集うセンチュリーオーナーたちは、この一連の議論をどう見ているのか?

黒塗りのセンチュリーでスーパーに買い物に行くという30代の主婦。
「センチュリーに失礼だから寝間着では乗れない」ぐらい、「日本の誇れる素敵なクルマ」だと胸を張る。
彼女は、「VIPの公用車はセンチュリーであるべき」派だ。
「努力して地位を築いた人が、こんな誇らしいクルマに乗るのは、とても素敵なことだと思う」

一方、自らの運転で土浦の勤務先に通う先述の会社役員は、政治家がセンチュリーに固執することに懐疑的だ。
「コロナ禍で世間も行政も大変な中で、わざわざ高価なクルマに乗る必要はない」
「その時どきの時代状況に合ったクルマを選ぶべき。別にクラウンでも構わないはず。それができないなら政治家失格では」と手厳しい。

それぞれ自腹で購入し、高いガソリン代と自動車税を払いながら自らのセンチュリーを愛でる、鳳凰倶楽部のオーナーたち。

代表の川原さんは「センチュリーが悪いわけではない。乗る人がセンチュリーにふさわしいかどうかが問われるべき」と強調する。
「知事として、センチュリーにふさわしい仕事をしていれば、県民も納得するのではないか」

そしてできれば、日本のVIPみんなに乗ってほしい、と川原さんは願っている。
「センチュリーは日本一のクルマだから、それにふさわしい人間であろうとすれば、日本一の知事や日本一の社長になれるはず。センチュリーは、そういう力のある特別な存在だと思う」

このニュースに関するつぶやき

  • センチュリーよりもスバル360ヤングSや日野コンテッサ トヨタパプリカ トヨタ2000GTのが格好いいぜ☆
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  • やたら車高の低い中古のアルベルとかレクサスLS辺りの方が、明らかにガラが悪いと思われる(笑)
    • イイネ!38
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