やれるか、日産! 新型「ノート」大研究 第2回 日産の新型「ノート」が売れそうな理由

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2020年11月25日 07:02  マイナビニュース

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新型「ノート」は日産自動車の意欲作だ。心臓部の「e-POWER」は第2世代に進化。ノートとして初めて搭載した運転支援システム「プロパイロット」には、ナビと連動する新機能が加わっている。大ヒットとなった2代目ノートのユーザーも含め、このクルマに注目している人は多そうだ。

○日産「ノート」の変遷

2005年に誕生した初代ノートは、コンパクトなスポーツワゴン的価値を新たに提供したクルマといえる。輸入車でいえば、アウディのスポーツバックに似た存在だ。ステーションワゴンほど荷室は広くないが、一般的なハッチバック車に比べれば荷室容量は大きく、遠出にも使えるコンパクトカーである。そうした実用性だけでなく、屋根まで回り込んだテールランプの造形も独特で、人気を呼んだ。

2代目へのフルモデルチェンジは2012年のこと。ここで日産は、ノートをグローバルカーに位置づけた。発表会も、海外との時差を考慮して日本では夕方に開催したほどだ。2016年には日産ファン待望のハイブリッド車(HV)が追加となり、売れ行きは一気に加速。2018年にはトヨタ自動車の「プリウス」や「アクア」を抜いて、乗用車販売で日本ナンバーワンを獲得する。その人気に押され、ミニバンの「セレナ」もHVを本格化することになる。

日産は2代目ノートで市販化したHVシステムを「e-POWER」と呼ぶ。世界初の量産市販HV「プリウス」が採用する方式とは異なり、e-POWERは量産電気自動車(EV)「リーフ」のモーター駆動系を応用した「シリーズ式ハイブリッド」である。

トヨタのシステムがエンジンとモーターの両方を駆動に利用するのに対し、e-POWERはモーターのみで駆動する。そのための電力は、ガソリンエンジンで発電するのである。これにより、EVと同じようにアクセルペダルのみで発進、加速、減速、停止ができるワンペダル操作も実現した。

そんなノートが3代目へと進化し、12月23日に発売となる。

○新型の注目ポイントは?

新型ノートの特徴は、すべての車種がe-POWERになることだ。ガソリンエンジン車は販売しない。そこが、競合といえるトヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」(欧州ではHVのみを販売)らと異なる。その点について日産の星野朝子副社長は、「日産がゼロエミッション社会をリードしていく姿勢の表れであり、クルマの電動化に集中していくことを新型ノートが象徴する」と語る。

日産は新型ノートにe-POWERを搭載するに当たり、ハイブリッドシステムを構成するモーター、インバータ、ジェネレータ、エンジンのすべてを新設計し、よりEVに近い上質な走りを実現したとする。

前型ノート、セレナと順次搭載されてきたe-POWERの進歩は、搭載車第3弾となったSUV「キックス」で先に体感することができた。

前型ノートやセレナは、モーター走行しているとはいえ、必要な電力を確保するためガソリンエンジンが頻繁に発電を行うため、モーター走行の特徴を騒音のせいで感じにくかった。しかし、キックスでは、リチウムイオンバッテリーに充電された電力を可能な限り使い切る制御とした。これにより発電は、ある一定の速度を超えたり、急加速するなどの際に集中的に行うようにして、一般道を安定した速度で走っているときには、ガソリンエンジンを極力始動しないようにしたのである。この制御で走行中の静粛性が高まり、モーター走行らしさを実感できるようになった。まさしく、充電のいらないEVを運転しているかのようなのだ。

そこをさらに進化させたのが、新型ノートであるのだろう。まだ試乗をしていないが、キックスを運転した感覚から想像すると、EVに近い走りを期待できそうだ。

もうひとつのトピックは「プロパイロット」の搭載である。今日では、軽自動車の「デイズ」や「ルークス」にも運転支援機能のプロパイロットが搭載されるようになっている。ノートにも待望の採用だ。

なおかつ、新型ノートのプロパイロットには、カーナビゲーションの地図データと連携し、カーブの手前で減速するなどの機能が追加されているという。完全自動運転ではないが、「スカイライン」に搭載される「プロパイロット 2.0」に似た機能の採用により、前車追従機能付きクルーズコントロールでの単独走行においても、カーブでは適切な速度への減速を支援してくれるのだろう。

日産は、運転者が責任を負う自動運転「レベル2」を守りながら、その範囲内における運転支援機能の進化に力を注いでいる。これによって、実用域での快適で楽な運転が前進していく。「電動化と自動運転が、これからの日産の柱」というのが星野副社長の言葉だ。

新車購入で最も重要な要素となる外観はどうだろうか。

新型ノートのデザイナーは、2021年発売予定のEV「アリア」に通じる造形を施したと語る。フロントマスクには刷新された日産の新しいロゴマークを装着。このマークを付けるのは新型ノートが初めてだ。

車体色が13色もあると聞いて、2002年に発売となった3代目「マーチ」を想起した。多彩な車体色をまとった新型ノートは、走る街を彩ることだろう。

室内は簡素でありながら、造形は新しい時代の電動車両を思わせる。なにより目につくのは、ダッシュボード中央のナビゲーション画面と、それに連動するメーターである。それはかつて、上級ミニバンの2代目「エルグランド」でみたような斬新さがあるし、運転する際には分かりやすく情報を提供してくれるのではないだろうか。

そうした様子は、EVの現行リーフより先進的でさえある。また、リーフから採用が始まった電制シフトの操作も新しくなるようだ。ダッシュボード上面は、ホンダ・フィットのように平らに整えられ、フロントウィンドウへの映り込みを抑えている様子。視界の明瞭さは、安全運転の第一歩である。

新型ノートの商品性からは、世界にe-POWERを売っていこうという日産の並々ならぬ意欲が伝わってくる。早く実車を運転してみたいと思った。

現行ノートのe-POWER搭載モデルは、前述の通り大いに売れた。この事実から、ある程度は新型ノートの売れ行きを占うことができるのではないだろうか。ノートの既存ユーザーを含め、多くの人が日産の販売店を訪れるはずだ。

ホンダも、EVの「ホンダe」を発売し、モーター駆動の魅力と将来性を改めて実感したという。モーター駆動の本当の実力は、技術が裏付けるのではなく、消費者へ売って初めて本質をつかめるのである。

御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)

このニュースに関するつぶやき

  • といってもHV専用にしちゃって値段が5-60万円もアップしたんじゃそんな簡単に売れないと予想。
    • イイネ!12
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