まるで現代の魔女狩り? 性被害を訴えた草津町議会女性議員へのリコール

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2020年11月25日 16:05  AERA dot.

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写真草津町のいたるところに新井議員のリコールを求めるポスターが貼られている
草津町のいたるところに新井議員のリコールを求めるポスターが貼られている
 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、群馬県草津町で賛否が問われている女性議員に対する解職請求(リコール)について取り上げる。

【写真】北原さんが衝撃を受けた草津町議会の様子
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 12月6日、群馬県草津町で、一人の女性議員に対するリコールの賛否が、住民投票で決定される。

 発端は、この女性議員が町長から性被害を受けたと昨年の11月にメディアに告発したことだ。町長は性被害の事実はないとし、女性を刑事と民事で訴え、その後、草津町議会は彼女を「議会の品位を傷つける発言をした」と除名処分にした。その後、群馬県がこの処分を取り消し、女性議員は議会に戻れたのだが、改めて議会で議員辞職勧告を受け、さらに町議等が先導して今回のリコールにつながった。 

 現在の草津町議会は12人。女性は町長を訴えた新井祥子さんただ一人で、彼女は草津町議史上初めての女性議員でもある。小さな地方議会で、「性被害の事実はない」という町長の声が一方的に通ってしまう現実、さらに現職の町議等が町民にリコール投票を求める力には、やはり違和感しかない。日本有数の温泉地でありながら、女性がたった一人の議会。そこはどのような空気で、何が語られているのだろう。気になり、草津町議会の動画を何げなく見た。これがかなりの衝撃的な内容だった。

 まず、男性が圧倒的多数の歪(いびつ)さは映像で見るとやはりインパクトがある。議員12人のうち11人が男性で、ペーパーを配る係に女性が一人いるが、15人ほどいる役所の担当者等も男性ばかり。議場が新しく見えるせいか、まるで女性が生まれない未来社会に来たかのような強烈な世界観だ。視聴したのは新井議員に辞職勧告が出された今年3月2日の議会だが、そこで映されていたのは、男性たちが徒党を組むように、新井議員をおとしめる様子だった。

「(セクハラ告発は)草津町議会にとっても、町民にとっても、経済にとっても、対外的にも非常に迷惑!」と大声をあげる議員がいれば、「レイプされたというのなら、なぜ即刑事事件にしなかったのか?」と、新井議員の告発の真偽を疑う発言も繰り返された。こういう発言に新井議員は「裁判中だから発言を控える」と言い、時には「性被害者はすぐには訴えられないものだ」などと感情を交えず静かに反論していた。

 また過去に新井議員が草津町の権力者をパロディー化(欲深い豚の顔に似せたりなど)したマンガを自身の活動誌に掲載していたことに触れ、「あなたは人を豚にしたりロバにしたりしているんですよ? これほどのパワハラはないんですよ!」と声を震わせる議員もいた。それはパワハラとは言わない……と思ったが、理屈よりも感情がものをいう世界のようで、「草津町議会にはセクハラもパワハラもない」と、何の根拠もなくこの議員はただ大声で言い切った。
 
 衝撃だったのは町長だ。彼は性被害があったと新井議員が訴えた町長室の写真を大きなパネルにして、「どこで私にいかがわしい行為をさせられたのか答えてください」と目の前で迫った。「裁判で明らかにしていきます」と新井議員が答えても「答えなさいよ!」と大声を何度も出した。さらに新井議員の告発によって、「本当に被害にあった女性が声をあげられなくなる、大変な罪作りだ」と責め、こう言った。

「私に犯された女性ならば、とても(加害者と同じ空間の)ここにはいられない」「それがあなたは平然として、平気で私の目を見る」「神経が分からない」。このセリフは何度も繰り返された。

 町長にたとえ加害の事実がなかったとしても、この議会そのものが十分に性暴力でミソジニーだった。「この議会の様子はYouTubeで世界に配信される!」と町長自身が動画内で言っていたので、自身の正しさを証明する機会として、新井議員をおとしめる発言を繰り返したのだろうが、「世界的」には完全にアウトなのは草津町議会そのものではないか。男性ばかりの歪な議会で、性被害を訴えた女性を「嘘つき」とののしる姿を世界にさらしてしまった。

 日本には女性議員がゼロの市区町村が、311あるという(2020年内閣府調査)。全1741市区町村中なので、この国の約18%の“あなたが暮らす街”は、男性だけで大切なことが決められているということになる。日本全国でならすと、市区の女性議員率はたったの16.6%で、町村にいたっては11.1%。草津町のように女性がたった一人しかいない議会は地方にいけばいくほど珍しくない。

 国政に出るより町議や区議のほうがハードルが低そうだし、女性も多そう……ということは全くなく、地域に根づけば根づくほど、そして田舎であればあるほど「女性は家に」の圧力が高く、政治参加が難しい現実があるのだ。

 日本有数の温泉街で繰り広げられるミソジニー議会。温泉街は女性の働き手抜きには語れない。一昔前は、住み込みでの旅館の仕事は、身寄りのない女性の自立の道でもあった。夜のサービス業も過去は非常に盛んで、今もコンパニオンの需要は少なくない。女性議員があげた性被害の声と、それを数の力で潰す光景に、女性たちは何を思うのだろう。

 性被害告発に対する町議等の過剰な反応は、町民たちにどのように届くのだろうか。12月6日の結果を見守りたい。

■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

このニュースに関するつぶやき

  • だってそういう女一匹居るだけで色々面倒臭いじゃん? ブスなんだよ被害がどうの言う奴は100%。イイ女は寄ってくる男を手懐けるから。己の居場所として相応しくないと気付け。
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  • これ、性被害があったかどうかの真偽はともかく、その後の議会のありようとかリコールが生じているっていう状況が異常だよな。真偽が分からない以上は静観してるのが筋だしな、通常。
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