限定公開( 12 )
写真![]() 映画プリキュアミラクルリープ |
「映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日」が2020年10月31日、2度の公開延期を経てついに公開されました。
プリキュア映画恒例のミラクルライトを使っての「プリキュアがんばれー」を禁じられた子どもたちは、この映画をどう見ていたのか?
都合5回この映画を見た筆者が映画館で感じたのは、「とにかく子どもたちの熱量が高い!」ことでした。
●2度の延期を経てようやく公開
プリキュアオールスターズ映画第12作目「映画プリキュアミラクルリープみんなとの不思議な1日」。もともと3月20日公開予定でしたが、コロナ禍の影響で2度の延期を経てようやく10月31日に子どもたちに届けられました。
昨今のプリキュアオールスターズ映画で恒例の近年3作(ヒーリングっど、スター☆トゥインクル、HUGっと!)のプリキュア全13人が活躍します。
監督はテレビアニメ「ONE PIECE」で監督を務めた深澤敏則氏、脚本は数々のプリキュアオールスターズ映画で実績のある村山功氏、そして作画監督にはキュアミルキー、キュアアースらの変身バンクを手掛けた「超絶技巧職人」板岡錦氏が担当し、キレッキレのアクションシーンも見どころの一つとなりました。
●ミラクルライトを使えない
プリキュア映画では子どもたちが劇場でもらえるミラクルライトを使ってプリキュアを応援するのが恒例となっています。しかし、今作ではコロナ禍の影響で安全に配慮し、ミラクルライトを使っての応援は禁止となりました(声を出すのはもちろんのこと、「劇場でライトを光らせる」ことも禁止となったのは意外でした)。
当映画のプロデューサーである内藤圭祐氏は雑誌『プレジデント』2020年11月13日号「コロナ禍でファミリー映画はどう変わるのか」の中で、セリフや一部演出を差し替えたことを語っています。
しかしプロデューサーの内藤圭祐氏は「声を出してライトを振るというギミックは、現在の社会情勢を顧みるとリスクが高く、ライトを振り、声を出して応援するシーンの演出やセリフの差し替えを行いました」と語る。(引用:『プレジデント』2020年11月13日号 P105(プレジデント社))
製作側はこの苦渋の変更がよほど悔しかったのか、「変更前の冒頭5分間のシーン」がプリキュア公式YouTubeチャンネルで公開されています(お家でミラクルライトを振って遊んでね、という趣旨ですね)。
これを見ると「みんなも一緒にライトを振ってほしいラビ」といったライトのレクチャーセリフがカットされていたことが分かります。
本来であれば子どもたちが楽しくミラクルンライトを振っていたかと思うととても残念ではあります。
ただ、コロナ禍の変更により映画本編では登場しないキュアアースが冒頭に登場し、キュアグレースと一緒に注意事項の説明をするという、子どもには(大人にも?)うれしいサプライズもありました。キュアアースも映画に出られて良かったです。
ミラクルライトを禁じられた子どもたち。
どんな感じになるのかと、こっそり周りの子どもたちの様子を見ていましたが、自分の観測範囲ではどの回も子どもたちはプリキュアの言うことを守って静かに鑑賞していました。声を出してしまう子はもちろんのこと、ミラクルライトを映画の最中に点灯させる子どももほぼ見当たりませんでした。
子どもたちは「プリキュアからのお願い」をきちんと守っていたのです。
●興行収入初動は苦戦
そんなコロナ禍の影響を大きく受け公開された「映画プリキュアミラクルリープ」ですが、初動2日間の興行収入は大苦戦しました。
公開からの2日間で9万7000人の動員、興行収入は1億800万円(興行通信社調べ)。2019年のオールスターズ映画「ミラクルユニバース」比で43.5%と、出ている数字だけをみると初動の興行収入は「過去のプリキュアオールスターズ映画の中でも最も低い数字」となりました。
もちろんコロナ禍なので仕方がない部分もありますし、むしろ逆風のなか良く健闘した方だと思います。春休み公開と秋公開を比較するのも意味のないことなのですけど、それにしても2019年のオールスターズ映画の半分も行かないのはとても寂しいことです。内容も素晴らしいだけにもっともっとたくさんの子どもたちに見てほしいというのが本音ではあります。
●とにかく子どもたちの反応が良い
ただ、数字に反してこの映画、子どもたちの反応がとにかく良いのです。
自分はすでに5回見に行っているのですが、どの回も映画が終わった後、子どもたちのはしゃぐ声が至るところから聞こえてきました。「楽しかったー」「また来たい!」「ミラクルンがね」「キュアグレースとスターが」と子どもたちがお父さんお母さんに熱心に語り掛けているのです。
自分も15年近くプリキュア映画を見ていますが、映画終了後に子どもたちの反応がここまで良いのは初めてだったので、少し驚いています。
子どもたちの熱量が高かった要因は一体何だったのでしょうか?
●子どもにも分かりやすい「タイムリープ」
子どもの反応が良かった要因の一つに「タイムリープ」の物語であったこともあるかと思います。子どもにとって「1日が繰り返されるストーリー」は初めての体験で新鮮に映ったことでしょう。
事実、作中で時間が巻き戻ったときに劇場の子どもが「あ! 戻った」「また同じ日になった!」と小声でお母さんに語り掛けているのを何度も聞きました。
子どもには難解かと思われがちな設定が、キュアグレースの視点を通して描くことにより分かりやすく演出され、何度も同じ日が繰り返されることで日常シーンとアクションシーンが交互に展開され、中だるみさせない作りにもなっていたのです。
ただ、その「キュアグレース視点」で物語が進行するため、変身前の先輩プリキュアたちの描写がやや少なめだった感は否めなく、もう少し薬師寺さあやちゃんの活躍を見たかったという個人的な問題はありました(?)。
●キレッキレのアクション
今作は、例年にも増して「アクションがキレッキレ」なのです。変身バンク職人、板岡氏がキャラクターデザインと作画監督を務めていることからも推察されるように、そのアクション一つ一つの動きが最高にカッコイイのです。
個人的には中盤の「キュアスターの空中での腰の入ったスターパンチ」の動きが最高でした。
終盤、みんなの思いを受けたスーパーグレースvsラスボスの超絶アクションシーンも必見です。最終フォームって不思議ビームを撃つだけだと思いがちじゃないですか。違うのですよ。スーパーグレース、滅茶苦茶かっこいいアクションをしまくるのです。熱い挿入歌をバックに繰り広げられる超絶アクションに、2つ隣で見ていた親子もスクリーンにくぎ付けになっていました。
アクションシーンもここ数年のプリキュア映画でもトップクラスのすごさなのです。
●エンディングまで飽きさせない
もう一つ子どもたちが最後まで集中を切らさなかった要因に、エンディングが「ヒーリングっどプリキュア」でおなじみの「ミラクルっと・Link Ring!」(「・」はハートマーク)だったことがあると思われます。
プリキュア映画のエンディングは、映画オリジナルの歌が流れることが多く、正直歌を知らない子どもも多々いるのですが、今回は子どもが毎週聞いていたおなじみの歌で締めたために子どもの食いつきが最後まで良かったように感じます。
事実、座ったままで一生懸命手だけで踊っている子どももたくさん見掛けました。
映画のエンディングダンス映像はプリキュア公式YouTubeでも公開されています。13人のプリキュアの圧巻のダンスシーン、皆さまもぜひご覧ください。
●ミラクルンを守る子どもたち
さて、今作では子どもたちは劇場でミラクルライトを使っての応援を禁じられました。子どもたちはプリキュアのお願いを守って静かに鑑賞していました。
そのとき、子どもたちはどんな気持ちで見ていたのでしょうか?
子どもたちの思いを知るヒントは、キュグレース役の声優・悠木碧さんのツイートにありました。
悠木さんのツイート内容映画プリキュアミラクルリープ観てきました。内容知ってるのに号泣してしまった…。実はミラクルンライトの使用ができない事を子供達はどう思うんだろうと気になってたんだけど上映後「まま!ミラクルン守れたよ!」って大事に握っていたライトをママに見せてるお子さんに私はまた泣いてしまった…。
そう、子どもたちは声を出せなくても「ぎゅっとミラクルンライトを握りしめ」、プリキュアと一緒に戦っていたのです。
子どもたちの中には、この映画が久しぶりのお出掛けで、はしゃぎたかった子もいたでしょう。2019年みたいに、声を出してプリキュアを応援したかった子もいたでしょう。
子どもたちも大人同様にコロナ禍と戦っています。プリキュアからのお願いをしっかり守り、ミラクルンライトをぎゅっと握りしめ心の中でプリキュアと一緒に戦っていた子どもたち。
そんな子どもたちの姿勢を大人も見習わないといけませんよね。
「ミラクルライトの光は明日へと進むための力」
劇中にそんな言葉もあるように、今作品は「春に環境が変わる子どもたちに、明日への一歩を踏み出す勇気を与える」目的もあったといいます。
「映画プリキュアミラクルリープ」にはコロナ禍でしょんぼりしていた子どもたちに、明日への一歩を踏み出させる力があるのです。だって手にはプリキュアと一緒に戦ったミラクルンライトがあるのだから。
●著者:kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
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