写真 “大物助っ人”として活躍が期待されたオリックスのジョーンズだが… (c)朝日新聞社 |
日本シリーズも終わり、プロ野球はストーブリーグが本格化する時期となった。既に来シーズンに向けての補強に動いている球団も多いが、改めて今シーズンの外国人選手の活躍度と、現時点での来季に向けての展望について診断してみたいと思う。今回はパ・リーグ編だ。
【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!* * *
【ソフトバンク】
2020年外国人選手活躍度:B
来季の外国人選手展望:B
・外国人投手合計成績
68試合10勝8敗1セーブ38ホールド
・外国人野手合計成績
94試合90安打16本塁打47打点2盗塁
※日本人扱いのバレンティンは除く
・外国人選手MVP:モイネロ
50試合2勝3敗1セーブ38ホールド 防御率1.69
MVPは文句なしでモイネロになるだろう。開幕から勝ちパターンのセットアッパーとしてフル回転し、両リーグトップの38ホールドをマークした。150キロを超えるストレートと抜群のブレーキを誇るカーブで奪三振率は驚異の14.44を記録した。現在12球団のセットアッパーの中でもナンバーワンと言える存在だ。野手はグラシアル、デスパイネが来日の遅れの影響で成績を落としたのがマイナスポイントと言えそうだ。
投手ではバンデンハークが年齢的なこともあり去就が不透明な状況だ。ただ投手はモイネロ以外にもムーアと二軍で経験を積んでいるスチュワート・ジュニアが控えているのは非常に大きい。グラシアルもまだまだ余力は十分で、今年以降も大きく戦力が落ちることは考えづらい。
【ロッテ】
2020年外国人選手活躍度:B
来季の外国人選手展望:C
・外国人投手合計成績
82試合6勝7敗2セーブ29ホールド
・外国人野手合計成績
143試合115安打31本塁打80打点7盗塁
・外国人選手MVP:マーティン
104試合84安打25本塁打65打点7盗塁 打率.234
投手ではジャクソンがシーズン早々に退団し、野手ではマーティンが故障で長期離脱となったことが痛かったが、トータルで見ればまずまずという結果と言えそうだ。投手で奮闘したのが新加入のハーマン。勝ちパターンのリリーフとしてチームトップの23ホールドをマークし、防御率も2.15と安定感が光った。そして野手で何より大きかったのが2年目のマーティンだ。シーズン終盤は打率を下げ、最後は故障で戦線離脱したものの25本塁打はチームで断トツ。攻守に粗さはあるものの、その長打力は大きな魅力だ。
他球団への流出も噂されていたマーティンとは早々に契約をまとめたのは非常に大きいが、他の選手については流動的な状況。ハーマンとシーズン途中に加入したチェン・ウェインと残留交渉を進めているが、年齢を考えると大きな上積みは考えづらい。もう1年契約が残っているレアードも同様であり、新外国人の獲得は必要不可欠な状況だ。
【西武】
2020年外国人選手活躍度:B
来季の外国人選手展望:B
・外国人投手合計成績
75試合10勝12敗0セーブ16ホールド
・外国人野手合計成績
185試合158安打26本塁打90打点12盗塁
・外国人選手MVP:ギャレット
49試合3勝2敗0セーブ16ホールド 防御率3.10
昨年先発ローテーションの柱だったニールが大きく成績を落としたが、新加入のギャレット、スパンジェンバーグの二人がまずまずの成績を残した。ギャレットは最速162キロをマークしたストレートを武器に中継ぎの一角に定着。終盤少し成績を落としたが、勝ちパターンの中継ぎの一角として非常に大きな働きを見せた。スパンジェンバーグも三振の多さはあったものの、ともにチーム2位となる109安打、15本塁打を記録。全力疾走でチームを活気づける存在としても非常に貴重な選手である。
新外国人で1勝に終わったノリンは流動的だが、それ以外は残留する見込みと報道されている(※ニールは来季が2年契約の2年目)。投手は先発のニールとリリーフのギャレット、野手はリードオフマンタイプのスパンジェンバーグと大砲のメヒアとバランスは悪くないが、4人とも絶対的な安心感があるわけではない。彼らの不振や故障に備えて新外国人の獲得は引き続き検討すべきだろう。
【楽天】
2020年外国人選手活躍度:B
来季の外国人選手展望:C
・外国人投手合計成績
131試合3勝9敗19セーブ33ホールド
・外国人野手合計成績
140試合125安打26本塁打81打点1盗塁
・外国人選手MVP:ロメロ
103試合97安打24本塁打63打点0盗塁 打率.272
投手では2年目のブセニッツが18セーブ、13ホールドをマークして防御率2点台とまずまずの成績を残したが、新加入のJ.T.シャギワが機能せず、シーズン途中で急遽広島からD.J.ジョンソンを補強して何とか取り繕った格好だ。一方の野手もオリックスから加入したロメロがチーム2位となる24本塁打を放ったが、2年目のブラッシュが大不振。結果としてウィーラーを巨人に放出したのが痛手となった。投手も野手も可もなく不可もなくという印象である。
J.T.シャギワとブラッシュは退団の可能性が高く、ロメロも故障が多いだけに新外国人の獲得は必要不可欠だ。報道では昨年タイガースで15本塁打を放ったブランドン・ディクソンの調査を進めているとのことだが、チーム事情を考えると投手もしっかり補強しておきたい。アメリカにも人脈が多いと言われる石井一久GM兼監督の手腕がここでも問われることになりそうだ。
【日本ハム】
2020年外国人選手活躍度:C
来季の外国人選手展望:C
・外国人投手合計成績
42試合10勝13敗1セーブ4ホールド
・外国人野手合計成績
106試合55安打6本塁打28打点1盗塁
・外国人選手MVP:バーヘイゲン
18試合8勝6敗0セーブ0ホールド 防御率3.22
MVPは文句なしで新加入のバーヘイゲンになるだろう。調子の波は少しあったものの、開幕からローテーションを守り抜いてチームトップタイの8勝をマークした。アベレージで150キロを超えるスピードは12球団でもトップクラスで、来シーズンも先発の中心として期待される。その一方で他の外国人選手は軒並み低調な成績に終わった。特に野手は新加入のビヤヌエバ、2年目の王柏融ともに戦力にはならず、他球団と比べても外国人選手の貢献度は著しく低かったと言わざるを得ない。これは今年だけではなくここ数年続いているだけに、外国人のスカウティングを見直す必要がありそうだ。
投手はバーヘイゲンとロドリゲスが残留予定。ロドリゲスは故障で大きく出遅れたものの、シーズン終盤は復活の兆しを見せており、まだまだ若いだけに上積みが期待できそうだ。とにかく気になるのが野手だ。3年契約最終年となる王柏融だけでは戦力的に不足していることは明らかである。課題である長打力不足を解消するためにも、強打者タイプの選手を積極的に狙いたいところだ。
【オリックス】
2020年外国人選手活躍度:B
来季の外国人選手展望:B
・外国人投手合計成績
96試合7勝15敗16セーブ24ホールド
・外国人野手合計成績
192試合165安打30本塁打106打点2盗塁
・外国人選手MVP:ヒギンス
41試合3勝3敗0セーブ19ホールド 防御率2.40
シーズン開幕前、外国人選手で最も話題となったのはオリックスのジョーンズだ。キャンプでは順調な調整を見せていたものの、開幕が遅れたことで明らかに体重が増えて動きが悪くなり、12本塁打、43打点という微妙な成績に終わった。一方の投手では新外国人のヒギンスが期待以上の活躍を見せた。開幕からセットアッパーに定着し、チームトップの19ホールドをマーク。コントロールはやや不安定だが、球威十分のストレートとブレーキのあるチェンジアップのコンビネーションは安定感がある。また抑えのディクソン、中日から移籍して2年目のモヤも及第点と言える成績で、トータルで見れば外国人選手の貢献度はまずまずと言えそうだ。
来シーズンは投手ではディクソンとヒギンス、野手では来季が2年契約の2年目となるジョーンズとモヤが残留予定と報道されている。ディクソンとジョーンズは年齢的に少し厳しくなってきているが、実績は申し分ないだけにまだまだ戦力とはなりそうだ。特にジョーンズは来年こそ万全のコンディションでシーズンを迎えてもらいたい。ただ過去を振り返ってもオリックスの外国人は長く活躍した例が少ないだけに、投手、野手ともに新戦力の獲得も検討したいところだ。
(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。