放たれたひとつの言葉が、少女たちの運命を左右するーー『贖罪』/佐藤日向の#砂糖図書館

0

2020年11月28日 20:11  ダ・ヴィンチニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ダ・ヴィンチニュース

写真佐藤日向
佐藤日向

『ハンズアップ』という舞台が、無事に千秋楽を迎えた。

夢に向かうための意思は、どうやって見つけるの?――『コンビニ人間』/佐藤日向の#砂糖図書館

『ハンズアップ』は、現代社会とリンクする題材を描いていて、台詞の一つ一つが、観劇頂いたお客様に色濃く残っていることと思う。

だからこそ、自分が発信する言葉は、たとえ役を通したものだとしても、責任を持って届けたいと強く思った。

今回紹介する湊かなえさんの『贖罪』は、まさに言葉の影響力によって人生を狂わされてしまった4人の女性と、その引き金となった、とある母親の話だ。

空気が綺麗な田舎街に住んでいた4人の少女は、東京からやってきたエミリちゃんという美少女の存在によって、普通だと思っていたことが普通ではないのだ、と気づき始める。

可愛い洋服を自由に着れる権利、家族の愛情、欲しいと望んだらなんだって手に入る財力。

しかし、エミリちゃんは、彼女たち4人と校庭で遊んでいる時に、殺害されてしまう。

負の連鎖は、ここから始まった。

エミリちゃんの母親が、「あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい」と4人に言ったことをきっかけに、彼女たちがその後大人になっていく過程で、無意識に重い十字架を背負ってしまう。

エミリちゃんの母親の言葉によって、各々の心に罪の意識が根深く残ってしまったのだ。

私はこの小説を読み終えたあと、SNSの使い方次第では誰しもがエミリちゃんの母親になりうる可能性を秘めていることに、怖さを感じた。

もちろん、人を傷つける言葉を発してしまう可能性があることはもちろん何よりも怖いことではあるが、傷つけられた側にとって一生心に残ってしまうような言葉でも、その言葉を発した本人はすぐに忘れてしまうかもしれないことを、私は1番怖いと思う。

言葉は時に良い魔法として人に影響も与えるが、その逆もまた然りで、たった一言だとしても、相手に重い呪縛をかけてしまうことがある。

私が『贖罪』を読んでいて特に印象的だったのは、

「人はすべて平等だなんて思ってはいけない。生まれたときから、それぞれが与えられているものは違うんだから。」

という言葉だった。

受け取り方次第で、「夢なんて見るだけ無駄だ。身の丈にあった何かを見つけろ」と言われているように感じてしまう。

これこそまさに、悪い魔法の言葉と言えるだろう。

実際にこの言葉をかけられた『贖罪』に登場する少女のひとりは、自らについて望みを持つこともなく、家から出ることもできなくなり、実の兄を殺害してしまう、という悲劇が起きる。

もし私が、14年の間芸能の仕事を経験してきた今、同じ言葉をかけられたとしたら、「人には向き不向きがあるからやれないことに固執はせず、自分が出来ることを伸ばすことが大切だ」と捉えることができる。

様々な経験を重ねることで視野が広くなり、言葉の受け取り方、その意味のくみ取り方が変わってくるのではないか、と私は思う。

『贖罪』では、それぞれが過ごした事件後の15年間が描かれているが、どこか他人事とは思えないような空気が作中に漂っているように感じた。

湊かなえさんの描く物語は、読んでいて少し親近感を感じる瞬間がありつつも、どこか他人事に感じる絶妙な気持ち悪さがずっと心に残り続ける小説だと思う。

もし、この砂糖図書館を読んでくれている貴方が、とある少女達が大人になるまでの苦悩が描かれた物語に興味を持たれたなら、是非この『贖罪』を手に取って頂きたい。

さとう・ひなた
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして、メジャーデビュー。2014年3月に卒業後、声優としての活動をスタート。TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)のほか、映像、舞台でも活躍中。

    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    オススメゲーム

    ニュース設定