東京五輪で「変異ウイルス」持ち込まれたらどうなる? 「恐れなくていい」専門家が指摘する理由

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2020年11月29日 08:05  AERA dot.

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写真感染拡大が懸念される中、東京・渋谷のスクランブル交差点は多くの人々であふれていた/10月22日(写真:gettyimages)
感染拡大が懸念される中、東京・渋谷のスクランブル交差点は多くの人々であふれていた/10月22日(写真:gettyimages)
 新型コロナの感染拡大が止まらない。東京五輪で顧客から変異したウイルスの持ち込みが懸念される。さらに経済との両立など課題は山積みだ。AERA 2020年11月30日号で掲載された記事から。

【グラフ】世界の大都市で気温の低下と感染者数に相関

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 国際オリンピック委員会のバッハ会長が15日に来日し、観客を入れての開催に強い意欲を示した東京オリンピック。気になるのは、様々な国からの訪日客が持ち込むウイルスだ。

 ニッセイ基礎研究所の高山武士・准主任研究員は10月、世界の主な50カ国について新型コロナの感染拡大状況を評価している。10月14日までのデータだが、致死率に注目すると日本は1.8%で韓国と同じ。中国やエジプト、スウェーデンなどが5%台で高く、メキシコは10%を超えていた。高山氏が指摘する。

「新興国では不十分な保険医療体制などによって厳しい封じ込め政策をしてもなかなか収束しなかった国があります」

 一方で、同じ先進国でも国ごとに致死率や感染の広がり方は大きく違う。理由の一つとして考えられるのが、流行しているウイルスそのものの毒性や伝播力が違うという説だ。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう説明する。

「変異を経て、世界中でいろんなタイプのウイルスが流行していますが、毒性については、一般論として東アジアは弱くて欧米が強いと言われています。根拠としてしばしば言及されるのは、第1波のときに米国では、アジアタイプが流行った西海岸と欧州タイプが流行った東海岸で致死率が全然違いました」

 カリフォルニアよりもニューヨークの致死率が高かったが、因果関係ははっきりしない。

「ウイルスの違いで説明できるのか、まだ確定的なことは言えない状況です」(上医師)

■変異しても免疫は働く

 一方、免疫学の権威である奥村康・順天堂大学医学部特任教授はウイルスの変異による毒性の違いを指摘した上で、「恐れなくていい」と話す。

「日本や韓国で流行った『S型』というウイルスが強毒性に変異した『L型』が欧米で流行し、多数の被害を出しました。しかし型が変異しても、体内にある抗体や免疫は有効に作用するので、変異したウイルスの再上陸を恐れる必要はありません」

 ウイルスが変異しても、免疫が有効に働くとはどういうことか。米国の研究機関が6月、新型コロナに感染し、入院せずに回復した20人の体内で免疫を司る「T細胞」が有効に働いたことを証明したという論文をまとめ、科学誌セルに掲載された。初めてかかるウイルスを免疫が撃退できた理由を、奥村教授はこう説明する。

「免疫をウイルスと戦う軍隊だと考えると、一度感染したり、ワクチン接種を受けたりして身につけた『抗体』は特定のウイルスをピンポイントで攻撃するミサイルのような、強力な兵器です。それに対して、T細胞は地上軍のようなもの。未知の敵とも戦う重要な役割を担っています。例えば去年風邪をひいた人などは、T細胞がしっかり強化されているのです」

 とはいえ、様々な種類のウイルスが世界中から集まり、病原性や感染力が強いウイルスが変異で生まれることはないのか。日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大教授はその可能性について否定的だ。

「ウイルスは自分が生き延びて様々な遺伝子を残そうとする方向に進化が働きます。宿主となる人間を殺してしまうような方向に向かうのは、ウイルスにとってはいい話ではありません」

 奥村教授も言う。

「免疫とウイルスの闘いでは、最終的には免疫が必ず勝ちます。それほど免疫というのは巧妙にできていて、今回の新型コロナとの闘いでも、重症者数や死亡者数の推移を見ると実際にそうなりつつあります」

■対策は「迅速」と「個人」

 新型コロナは経済にもすさまじい打撃を与えた。

 帝国データバンクの調べ(11月16日現在)によると、破産や民事再生、事業停止などの「新型コロナ関連倒産」は全国で702件。業種別では飲食店(105)、ホテル・旅館(65)、アパレル・雑貨小売店(46)、建設・工事業(同)、食品卸(36)の順になる。負債総額は約2953億円で5億円未満が全体の8割以上を占める一方、東証1部の老舗アパレル「レナウン」など負債100億円以上の倒産も3社あった。

 そこを襲う第3波にどう対応すればいいのか。ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次さんは言う。

「経済とコロナ対策を両立するためには、本来なら臨時国会で感染症法改正などに取り組むべきだったのに手をつけなかった。感染防御の強化策としてPCR検査の拡充はあっても枠組みは変わっていない。抜本的対策が必要と言いながら、数カ月前と全く同じ議論をやっている」

 工夫のない場当たり的な「対策」は、さらなる懸念を生む。

「感染が広がっている40〜50代は高齢の親の介護で高齢者施設に行くケースも多い。今の態勢でこうした施設が守り切れるか、かなり不安です」

 また、コロナ対策として最も経験値のない「受験」に対する備えにも不安は残る。これから中学、高校、大学入試のシーズンを迎えるにあたり、学校や試験会場でクラスターが発生したらどうするのか。期間中に感染が判明してしまった受験生はどう対処すればいいのか。

「コロナに関して春先から経験を積んできている我々も、受験に関しては初めてのことになる。特に関係者は心配でしょうし、受験が止まってしまった場合の精神的影響は大きい」

 矢嶋さんは、第3波の経済対策についてこう指摘する。

「ロックダウンしない方向にしても、国民の不安が高まったら補正予算を組むなり対策を講じる他はない。やるやらないの議論ではなく、いち早く結論を出すことが大事です。GoToキャンペーンや観客を入れての各種興行についても、感染状況に応じてストップアンドゴーの決断を潔くすることが肝心です」

(編集部・小田健司、小長光哲郎、大平誠、福井しほ)

※AERA 2020年11月30日号より抜粋

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  • 不思議なウイルス湧いたらど〜〜しよ?♪ど〜〜する?
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  • WHOやアエラが大丈夫と言ったら大丈夫じゃないと思うのが常識exclamation ��2www
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