「日テレでドラマを書きたい脚本家」はいない? ドラマ視聴率が振るわない日本テレビ、3つの“致命的”理由

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2020年11月30日 23:42  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 日本テレビのドラマが、なかなか振るわない。テレビ朝日と年間視聴率を競い合う日テレだが、その足を引っ張っている一つの要因は、どうやらドラマにあるようだ。

 午後10時台の日テレドラマの視聴率は、11月14日に放送された柴咲コウ主演の土曜ドラマ『35歳の少女』第6話の視聴率は7.6%(ビデオリサーチ調べ、関東/以下同)、21日放送の第7話は7.7%。波瑠主演の水曜ドラマ『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』(11月11日)の第5話は8.1%、第6話は7.9%(同18日)となっている。

 テレビ朝日では、この時間帯は『報道ステーション』が放送されているため、同じく午後10時台のTBSドラマと比較してみよう。

「森七菜主演の火曜ドラマ『この恋あたためますか』の第6話(同24日)は、自己最高で9.8%。木村佳乃主演の金曜ドラマ『恋する母たち』の第5話(同20日)は8.2%となっているので、『35歳の少女』『#リモラブ』とだいたい1%程度の違いです。ちなみに、録画視聴率、いわゆるタイムシフト視聴率のランキングを見てみても、日テレはTBSに負けています」(芸能ライター)

 では、日テレドラマが視聴者にいまひとつ刺さらないのは何が原因なのだろうか。テレビ関係者に意見を聞いてみたところ、3つの“致命的”問題点があるようだ。まず1つ目は、「放送枠」に対するイメージ付けが弱いこと。

「例えば、TBSの『この恋あたためますか』が放送されている『火曜ドラマ』は、ほぼ恋愛路線で一貫しています。『逃げるは恥だが役に立つ』『恋はつづくよどこまでも』『私の家政夫ナギサさん』『おカネの切れ目が恋のはじまり』など、とにかくラブストーリーが多くラインナップされてきた。来年1月も、上白石萌音による『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』と、色がブレていません。 一方で、『35歳の少女』が放送されている日テレ『土曜ドラマ』は、もはやジャンルがバラバラ」(テレビ関係者)

 「土曜ドラマ」の内容を見ると、前クールが『未満警察 ミッドナイトランナー』、その前が『トップナイフ−天才脳外科医の条件−』と、警察・医療モノがあったかと思えば、『俺の話は長い』(19年10月期)というホームコメディもラインナップ。その前は警察モノでも韓国ドラマのリメーク作『ボイス 110緊急指令室』(19年7月期)で、学園ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』(19年4月期)も放送され、確かに「放送枠」に共通項は見えてこない。

「放送枠の色を固めるのは非常に大切なことです。その枠のドラマジャンルが固定化し、枠自体にファンが付けば、キャスティングされる俳優の人気や実力、ネームバリューに関係なく視聴してもらえるからです。これがうまくいってるのが『火曜ドラマ』や、同じくTBSの『日曜劇場』なのです。もし仮に、『リモラブ』が『火曜ドラマ』だったら、もっと人気が出るような気がします」(同)

 2つ目の問題点には、局で独自の脚本家を育てていないことが挙げられるという。かつて日テレは「日本テレビシナリオ登龍門」というコンクールを開催していたが、05年で休止。しかし、TBSは「TBS連ドラ・シナリオ大賞」、テレビ朝日は「テレビ朝日新人シナリオ大賞」、フジテレビは「フジテレビヤングシナリオ大賞」と、各局がコンクールを設けて次世代の書き手を発掘する努力をしている。

「日テレは、その時その時に優れた人材を呼んで書かせるだけで、未来への投資をしていない。例えば、野木亜紀子がTBS『逃げ恥』で高評価を得たら『獣になれない私たち』を担当させたり、フジの『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(1st・2nd season)で有名な林宏司を招へいして『トップナイフ』を書かせるといったように、その場その場だけの付き合いをしている。今、日テレでドラマを書きたい優秀な脚本家はどれだけいるでしょうか?」(放送作家)

 また、3つ目として、「スポンサーや局の編成に目が向いている」との意見も聞こえてくる。

「バラエティが得意なテレビ局らしいなと思うのが、ドラマの内容を聞いた時点で、なんとなく面白そうと思わせる、いわゆる“1行キャッチコピー”の付け方が特徴的なところ。ですが、視聴者に向けたキャッチコピーというより、企画をジャッジする編成局、スポンサーサイドに向けたプレゼンのためのコピーという印象がしなくもない」(放送作家)

 例えば『35歳の少女』は、“不慮の事故で長い眠りについた少女が25年の時を経て目覚め、全てが変わった世界を生きていく成長物語”。『リモラブ』 は、“地上波・ゴールデンのドラマとしては初のコロナのある世界観を真っ正面から描く作品”となっている。

「多くの提出企画から選ばれるためには、とにかく引きのある1行コピーが必要になるのは仕方ありません。ただ冷静になって考えてみてください。例えば『リモラブ』。日常生活で否応なくマスクをつけて出勤し、疲れて帰ってきたとき、ドラマの中でも現実を見させられるのは憂鬱ではないでしょうか。そこまでコロナを描く必要があるのかどうか……。他局より先手、目先だけの新しさ、インパクトを優先しているように思います」(業界関係者)

 厳しい意見ばかりが並んだが、日テレの局員であれば思い当たる部分もあるのかもしれない。近年では人気ドラマ『家政婦のミタ』『ごくせん』なども誕生した日テレだけに、今後の返り咲きも期待したいものだ。
(村上春虎)

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