ロナウドはポジション転職最大の成功例。ウインガーからストライカーへ

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2020年12月01日 06:31  webスポルティーバ

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サッカースターの技術・戦術解剖
第35回 クリスティアーノ・ロナウド

<プレースタイルを変化させる>

「私なら、ここで起用する」

 読売クラブ(現在の東京ヴェルディ)の監督だったペペが指したのは、ペナルティーエリアの左角あたりだった。四捨五入すれば40歳になろうとしていたラモス瑠偉について、聞いた時の回答である。

※ペペ...ブラジル代表の58年、62年W杯優勝メンバー。引退後約30年に渡ってブラジルを中心に各クラブを指揮




 そのころ全日空(のちの横浜フリューゲルス)の加茂周監督は、他チームの選手であるラモスの「リベロ」での起用について話していた。獲得する気満々だったのだと思う。ポジションを「下げる」加茂構想とは逆に、ペペ監督の見解は「上げる」だった。

「プスカシュもそうだった」(ペペ)

 結局、ラモスはMFのままプレーしたが、ふたりの監督でアイデアが違うのが面白かった。ペペが引き合いに出したフェレンツ・プスカシュは、1950年代のハンガリー代表のインサイドフォワードで、プレーメーカー兼ゴールゲッターとして活躍。現在、毎年の最も印象的なゴールに贈られる「プスカシュ賞」にその名を残している、サッカー史上屈指のスーパースターだった。

 のちに亡命してレアル・マドリード(スペイン)でも活躍した。その時は少しプレーの比重を前に移し、ゴールゲッター兼プレーメーカーに変わっている。そのため「ピークが2回あった選手」とも呼ばれた。

 体力が落ちてきた時に、よりプレッシャーのないエリアへ移動するか、それとも相手のプレッシャーは厳しくなるかわりに運動量をセーブできる場所へ行くか。

 クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)は、後者のプスカシュ型である。

 運動量をセーブしつつ、ペナルティーエリア内での仕事に比重を移して得点を量産するようになった。だが、ロナウドのトランスフォームはそれが最初ではなく、スポルティング(ポルトガル)でデビューした17歳のころは、生粋のドリブラーで典型的なウイングプレーヤーだった。

 マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)に移籍して、途中でゴールゲッターになっている。さらにレアル・マドリードでは、徐々にゴール前に集中するスタイルに変化していった。

<得点への特化>

 現在、ミラン(イタリア)で好調のズラタン・イブラヒモビッチ(スウェーデン)について「50歳までプレーできる」と言う人もいるそうだ。ロナウドは33歳時点のフィジカルチェックで「20歳のレベル」だったという。

 セリエAで得点王を争っているふたりの共通点は、老けない肉体とペナルティーエリア内での圧倒的な実力だ。

 不老の肉体については生まれつきもあるかもしれないが、ロナウドの徹底した自己管理とハードトレーニングはよく知られている。

 マンチェスター・ユナイテッドに移籍した18歳のころは、細身で華奢だった。シザースや引き技を連続的に組み合わせたフェイントモーションが独特の左ウイングで、スピードとキレが持ち味。得点よりもアシストの選手だった。

 ユナイテッドでのキャリアの途中から、猛烈に得点し始めている。肉体的にもどんどん強靭化していった。ただ、当時の得点パターンはペナルティーエリア外からのプレーがメインだった。

 得意としていたのは、左サイドからカットインしての右足でのシュート。ウイングとしての突破力を得点に結びつけている。当時からヘディングは強かったし、ボックス内で味方のパスを得点に変えるプレーもしていたが、まだそこに特化はしていない。ペナルティーエリアの外からプレーをスタートさせていた。

 24歳でレアル・マドリードへ移籍すると、味方の援護もあって1試合1得点を超えるペースでゴールを重ねた。ブレ球のFK、PK、ミドルシュート、ヘディングなど、あらゆるパターンでゴールしている。

 33歳でユベントスに移籍。このころにはすっかりプレースタイルが変わっていた。かつて猛威を振るったドリブルシュートはあまり使わなくなり、使っても短い距離だけ。得点のメインは、クロスボールをヘディングで仕留めるパターンだ。ボックスの外ではシンプルにボールを捌き、ゴールに近いところでチャンスを待つやり方になっている。

◆ロナウドがゴールを量産できる要因を分析。駆け引きのポイントは?>>

 スポルティングからユナイテッドに移籍したころ、ロナウドが現在のようなストライカーになるとは誰も想像していなかったはずだ。本人も同じだったと思う。

 かつて、FWをMFに下げるのは延命策の定番だった。相手の厳しいマークから解放し、よりプレッシャーの少ない場所で技術と経験を発揮して、第二のピークを迎える。

 マルコ・ファン・バステン(※80年代〜90年代頭にミランやオランダ代表で活躍したFW)について、ヨハン・クライフは「少しポジションを下げていくだろう」と予言していた。そこで第二のピークを迎えるはずだと。しかし、ファン・バステンは相次ぐ背後からのタックルで負傷が重くなり、ストライカーとして3回のバロンドールを獲得したあと、引退を余儀なくされた。

 クライフの予言は当たらなかったわけだが、ファン・バステンが少し引いた位置で技術とビジョンをどう発揮していくのかは見てみたかった。

 ただ、ポジションを下げる形のかつての定番は、現在は使いにくくなっている。

 中盤へ引くことでプレッシャーは多少軽減されるかもしれないが、そのかわりに多大な運動量がのしかかってくる。以前は中盤にひとりくらい運動量の少ない選手がいても何とかなったが、現在のサッカーではそれは許容されなくなっている。

 逆に運動量を減らして、ゴール近くのプレーに集中するプスカシュ型のほうが、現代のポジション転職には向いているのかもしれない。ただ、それができるのはロナウドのようにゴール前で圧倒的な能力を発揮できるタイプに限られるわけだ。

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