ロボット配膳「焼肉の和民」、“非接触”セルフレジのくら寿司 コロナ禍の飲食店、勝機はIT&ロボット活用にあり

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2020年12月01日 19:22  ITmedia NEWS

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写真「和民」ブランドを「焼肉の和民」に全面転換したワタミ 配膳ロボットなどを活用してコロナ対策を図る
「和民」ブランドを「焼肉の和民」に全面転換したワタミ 配膳ロボットなどを活用してコロナ対策を図る

 以前の「コロナ前後で飲食チェーンはどれほど打撃を受けたのか 店舗数データで検証する」と題したレポートで、小売やサービス業の中でも外食産業が最もひどく新型コロナウイルスの影響を受けていることを、店舗数の推移から明らかにした。その結果、大型チェーンの店舗数の減少幅は1〜2%と大きく動いた様子はないものの、最も厳しい状況だとこれまでも報じられていた居酒屋とファミリーレストランは4〜5%と顕著な減少を見せていた。特に居酒屋については2018年ごろから減少傾向で、新型コロナでその傾向に拍車が掛かったとみられる。



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 そうした中、外食チェーン大手のワタミは10月初旬に、同社の主たる「和民」ブランドの店舗を従来の居酒屋から焼肉店である「焼肉の和民」へと全面転換すると発表して話題になった。昨今のトレンドを考えれば、居酒屋という業態は対面で客同士が“密”な状態で料理を突き合うという性格上、新型コロナと極めて相性の悪い飲食形態ともいえる。このように、もともと業態自体に厳しい逆風が吹いていたことから「業態転換も止むなし」といった感想は抱くところだ。



 しかしワタミは、この時代を生き抜くための確かな勝算を持ち、新技術やアイデアの積極的な導入で難局を切り抜けようとしている。今回はワタミを始めとする各社への取材を通じ、テクノロジーとビジネスアイデアで飲食業がどう時代を生き抜いていこうとしているのかを紹介したい。



●動画で見る新業態「焼肉の和民」とその勝算 最新の“密”対策は



 ワタミは10月に、それまで居酒屋として運営していた「和民」の120店舗全てを「焼肉の和民」へと転換するとともに、特急レーンと配膳ロボットの導入により接触率80%削減のコロナ対策を施した1号店として大鳥居駅前店をオープンしたと発表した。今回はこの大鳥居駅前店を訪問して、実際にどのように非接触を実現しているのかを取材した。



 大鳥居駅前店には特急レーンに隣接したテーブルと独立したテーブルの2種類がある。1〜2人利用を想定した、区切りのあるカウンター型テーブルも用意されている。実際には1人のみで焼肉屋に来店するケースは少ないようで、2人席を用意しておいて1人または2人で利用してほしいということのようだ。



 注文にはテーブル据え付けのタブレット端末を使い、特急レーンのあるテーブルであればここで注文した商品がトレイで運ばれ、独立したテーブルであれば配膳ロボットが配達するという流れだ。つまり、入店時と退店時以外のタイミングで店員と直接接触する機会がなく、他の客ともニアミスすることもないという点が特徴となる。



 他の席との敷居が高めに設定されている他、最新の排煙・空調設備により3分に一度空気が完全に入れ替わるという仕組みで、屋内でありながら、いわゆる「密」対策が十分に施されているわけだ。



 この配膳ロボットだが、今回取材した大鳥居駅前店では2種類が導入されている。店内には途中に段差があるため、そこを境に2つのエリアをそれぞれのロボットが分担している形だ。



 ロボットのベンダーもそれぞれ異なっており、ワタミの新町洋忠執行役員(焼肉営業本部 本部長)によれば「各ベンダー機器の実地検証も兼ねている」という。基本的にはロボットのホームポジションが決められており、そこに調理場から運ばれてきた商品がいったん集められる。店員がロボットに商品を載せてテーブル番号を入力し、ロボットが指定のテーブルまで商品を運んで戻ってくるという流れだ。



 ロボットは賢く、人や障害物があれば自動的に避けて移動できる。ただ、動画からも分かるように大量のオーダーが入った状態では配達をさばききれないため「状況に応じて店員が直接テーブルに運ぶ場合もある」(新町執行役員)という。



 接触機会は大幅に減らせるが、清掃を小まめにしているとはいえ「据え付けのタブレットを直接触る」ことに抵抗を感じる人もいるかもしれない。新町執行役員によれば、今後QRコードを表示して手持ちのスマートフォンなどで読み込ませることで、アプリのインストールなしにオーダーが可能な仕組みの導入を検討しているという。



 このようにロボットなどを活用したコロナ対策を施したワタミだが、新町執行役員の話を聞いていると「焼肉の和民」のポイントはむしろビジネスモデルやターゲットの方にあると感じた。



●「意外に競争チェーンない」 まずはベッドタウンやハブ駅周辺に展開



 新町執行役員によれば、取材時点でまだ3週間ほどしか経過していないものの、予約含め来店客は順調に推移しており、顧客からのフィードバックも良好なものが多いという。



 ワタミグループの焼肉業態としては食べ放題を前面に打ち出した「かみむら牧場」があるが、値段と品質の面でバランスが取れているとして評価が高いようだ。特急レーンなどの仕組みもかみむら牧場からきているもので、焼肉の和民はそれを発展させたものといえる。



 新業態での一押し商品は「ワタミカルビ」で、通常の赤身中心のカルビ肉とは異なり、脂身を多く含んで柔らかく味の出る比較的希少部位を用いているとのこと。こうした部位のメニュー化は契約農家から複数の一頭買いを行っている結果によるもので、この調達力を価格に反映させてグループ全体でメニュー開発していくというのがワタミの戦略だ。



 焼肉の和民では、通常の焼肉屋には見られない居酒屋メニューや豊富なドリンクもそろえ、これらを手頃な価格で楽しめる食べ放題コースを設定している。



 「意外なもので、このクラスの価格帯と品質で焼肉屋を展開しているチェーンはほとんどなく、ファミリー層まで含めて訴求力があると考えている」と新町執行役員は新業態の強みを語る。



 「居酒屋の和民は駅前などの立地が中心だが、まずはベッドタウンや大きな駅がある周辺などに展開する。コロナ禍で在宅勤務をしている方々がちょっとした外食に夕方や夜間の時間帯に焼肉を楽しんでもらえればいいと思う」(同)



 業態転換には2カ月ほど工事が必要とのことで、ターゲットとなるファミリーやビジネス層の多い店舗から順番に、2022年3月末までに焼肉の和民へと順次改装していくという。



●転換先に焼肉を選んだワケ



 しかし、なぜ業態の転換先として数ある飲食の種類の中でも「焼き肉」を選んだのか。新町執行役員によれば、渡邉美樹会長(兼グループCEO)の「海外進出を進めたい。日本の特徴を出すならやはり『和牛だろう』」という考えが発端だったという。



 コロナ禍やさまざまな事情で海外展開の計画は当初から狂ってしまってはいるものの、「飲食で世界を目指す」という計画は現在も進行中という。その前に「まずは日本で地固め」というのも、焼肉業態を全面的に取り入れたきっかけといえる。



 ワタミグループの店舗数は現在424店(10月13日時点)で、そのうち専門業態としてミライザカが143店、鳥メロが130店となっている。残りの多くが今後焼肉屋へと転換される「和民」ということになるが、新町執行役員は「居酒屋マーケットは形は変わってもなくなることはないし、ワタミ自身が創業形態である居酒屋をなくすこともない」としている。



 牛肉を前面に押し出す過程で、既存業態への展開の第一歩としてミライザカと鳥メロの新メニューが発表されたが、その会見の場でワタミの清水邦晃社長(兼COO)は「居酒屋業界はコロナ前の70%水準程度まで縮小することになる。それでもいろいろ工夫をしてようやく70%という状態で、60店舗の撤退を経て、現在は家賃交渉や生産性向上で黒字になる店舗を残すことにした」と、コロナ禍の店舗整理の方針を説明。



 その上で「コロナ禍でも好調な業態があり、それが『かみむら牧場』『焼肉の和民』『から揚げの天才』の3業態。これからは専門業態の仕入れ力と開発力を生かして居酒屋メニューに展開していく」(同)とした。



 なお、以前のような大規模な宴会は厳しいものの、年末に向けて3〜4人程度の比較的小規模な忘年会需要はあると考えており、こうした利用者をターゲットにした商品開発やキャンペーン展開を進めていくという。



●くら寿司にみる「非接触」 セルフレジは指も“タッチレス”



 「接触機会を減らす」という観点から工夫を行い、その点をアピールする飲食店はワタミだけではない。例えばすしチェーンを展開する「くら寿司」では、10月13日に池袋サンシャイン60通り店で、16日にはなんば日本橋店で「“タッチレス”なセルフレジ」導入を発表した。



 くら寿司はセルフキオスクでの座席案内が行われるサービス機の導入を進めている。テーブル席で利用できるスマートフォンからのテーブルオーダー機能と組み合わせ、入店から退店までほぼ店員との接触がなく、さらに「タッチレス」でのオーダーや決済が可能だ。



 くら寿司では、焼肉の和民も今後導入するとしているスマートフォンからのオーダー機能が利用できるようになっている。回転ずしでおなじみの流れるレーンから商品を取り出すスタイルも継続しているが、これとは別に流れてこない商品を個別注文できる他、オーダーのカスタマイズも据え付けのタブレットやスマートフォン上から可能だ。



 スマートフォンをオーダーに使う場合、タブレット端末に表示されているQRコードを読み込むことでWebブラウザ上でメニューが開き、ここから注文やカスタマイズが行える。注文した商品は専用の特急レーンで配達されてくるため、回転ずしで気になるポイントである「流れてくる商品は時間が経過してないか?」「衛生的に大丈夫か?」といった点で安心だ。



 一方の流れるレーンについても、プラスチック製のケースに収まった状態で席の間を回っているため、衛生面の心配も少ないといえる。



 問題はチェックアウトで、スマートフォンやタブレットを使って注文した特急レーン経由で配達される皿については正確にその内容を把握できるものの、通常の流れるレーンの方では皿を自由に取れるため商品内容の把握が難しい。



 流れるレーンについてはセンサーで商品をいくつ取ったかをカウントしている他、チェックアウト時にテーブル横にある返却口に皿を投入してもらうことで、枚数を比較して“ごまかし”がないかをチェックし、問題なければチェックアウトが可能になっている。チェックアウト時にバーコードが発券されるので、これをレジへと持っていけば会計が行える。



 皿の投入システムや特急レーンは以前からある仕組みだが、会計時のセルフレジは初めて導入されたもので、サービスイン初日は戸惑いながらも多くの客が精算を済ませていった。



 セルフレジの最大の特徴は「タッチレス」であること。タッチパネル下側に指の動きを計測できるセンサーが搭載されており、指で画面に直接触れることなく、ある程度近づけただけで項目が選択できるようになっている。



 この仕組みは、すでに他店舗へも展開が進んでいるセルフ案内サービス機にも導入されており、ともに「他人が触る可能性のある箇所を“タッチレス”で通過できる」というメリットがある。



 ただし、スマートフォンを使ってテーブルオーダーを行った場合でも、チェックアウトのときのバーコード発行処理はタブレットの操作が必要なため、ここだけ「タッチレス」ではない点が玉にきずだ。テーブル案内前に清掃が入るため接触機会の面での安全性は問題ないと思うが、このあたりは今後のオペレーション改善で対応してほしいところだ。



●テイクアウトとデリバリーに特化しつつあるファミレス業界



 居酒屋同様に厳しいといわれるのがファミリーレストラン業態だ。冒頭でも紹介したチェーン店数の推移調査によれば、2019年12月時点までは上昇の一途をたどっていた店舗数は一転して減少へと向かい、6月以降はそれが加速している。



 20年8月時点でのデータで、店舗数は18年6月以前の水準まで落ち込んでおり、こちらも市場の飽和に加え、顧客志向の変化により需要減少が業績に響いたといえる。複数の関係者の話によれば、もともとコロナ禍に突入する前から業績不振の店舗はあり、今回のコロナによる業績低迷を理由に一気に店舗整理に入ったことがチェーン全体での店舗数急減につながったともいう。



 いずれにせよ、従来の営業スタイルでは店舗面積や回転率、人件費などの面で維持できない店舗は少なからず存在し、今後も大きく回復する見込みはない。そこで各社は黒字化に向け、テイクアウトやデリバリーといった、店舗面積やサービス用の人員を削減しつつも客数を増やせる業態を模索し始めている状況だ。



 その一つは、セブン&アイFood Systemsが運営するファミリーレストランチェーン「デニーズ」が10月にオープンした宅配・テイクアウト専門店の「新宿御苑店」だ。



 デニーズではEpark、UberEATS、出前館といったデリバリーサービスに対応するが、それに加えてテイクアウトに特化する形で、主に弁当や総菜の持ち帰り需要を新店舗で開拓していく。



 新宿御苑店は周辺のオフィスや住宅街のはざまにある立地で、日中の昼食需要の他にもテレワークや宅食需要などが狙える。実際、滑り出しは上々のようで、今後都市中心部や住宅街に近い立地でこうした店舗が出現する可能性は高そうだ。



 この他、デリバリーやテイクアウトには比較的消極的だったサイゼリヤも、21年4月までに東京都内に従来比約6割の店舗面積の小型店舗を設置し、こうした需要を開拓していくという報道が出ている。ファストフードのファーストキッチンも東京の神楽坂にデリバリー専門店「ファーストキッチンZero」を設置しており、テナント料や人件費などのコストを圧縮しつつ、比較的人口の密集したエリアでの需要開拓を狙う。



●業態転換か、コスト削減か



 飲食業において共通するのは、コロナ禍により客数が減少し、固定費に見合うほど売上を見込めなくなったことにある。特に営業自粛で深夜営業が難しくなっており、今後の終電時間繰り上げの影響で客足のピークは1〜2時間ほど縮小が見込まれる。多人数で飲食店を利用する件数も大きく減少したとみられ、従来のビジネスモデルのままで営業を継続できる店舗が限られつつあるのが現状だ。



 ワタミのケースが典型だが、客数の回復が見込めない以上は今後は同業者内で客の取り合いになるのは間違いない。各社の取り組みからは、専門業態のアピールなど、特徴を持たせることで差別化を図り、生き残りを目指す工夫が見られる。一方で、ファミリーレストランに見られるような「コスト削減で客数減でも生き残れる店舗を作る」という道を目指す店舗もあり、飲食業界は両極化が進むのかもしれない。


このニュースに関するつぶやき

  • ばかじゃないの。調理担当の負担軽減が先でしょ?
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  • ロボットですか、ワタミは経営者も人間ではないのでお似合いですね。
    • イイネ!4
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