感染リスク高い場所は断トツ「レストラン」 会食リスク 9800万人のデータで判明

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2020年12月02日 08:05  AERA dot.

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写真感染リスクの高い場所は、会食の行われるレストランというデータが出た。今年3月、空席の目立つニューヨークのレストランで(gettyimages)
感染リスクの高い場所は、会食の行われるレストランというデータが出た。今年3月、空席の目立つニューヨークのレストランで(gettyimages)
 米スタンフォード大学の9800万人のスマホ調査で、感染リスクの高い場所の筆頭はやはり断トツでレストランだった。英国でもクラスターの8〜17%が英国版イート事業由来という分析があがった。AERA 2020年12月7日号から。

【グラフ】場所ごとの感染者の増加予測

*  *  *
「Go Toトラベルだけが感染リスクではない。飲食店での感染もきわめて多い」

 11月25日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は記者会見でこう述べた。

 分科会は会見に先立つ会合で、感染者や重症患者が急増し医療崩壊の恐れがある流行段階の「ステージIII」に相当する地域が複数あるとして、流行地ではより強い措置を講じるよう求める提言を出した。

「強い措置」の筆頭に挙げられたのが、酒類を提供する飲食店の営業時間の短縮だ。同時に利用者に対しても、酒類を提供する飲食店の利用や夜間の遊びを自粛するよう求めた。また、Go To イート事業の運用見直しも求めた。

 新型コロナウイルスについて、飲酒を伴うかにかかわらず、飲食店で感染が起きやすいことは、世界のさまざまな研究で指摘されている。

 11月10日、米スタンフォード大学の研究チームは、英科学誌「ネイチャー」のオンライン版に、セルフサービスではなく、店員が注文を取ったり料理を運んだりといったサービスを提供するレストランが最も感染リスクが高い、とする論文を発表した。

■レストランで60万人増

 研究チームはニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスなど全米10都市に住む9800万人の今年3月1日から5月2日までの携帯電話の位置情報を基に、住民が600〜3千人程度いる居住地をひとつの単位とし、各地区からレストランやジム、日用品店など、居住地以外の目的地に移動が起こった回数や日時を分析した。調べた居住地区は10都市の5万7千地区、目的地は55万3千カ所にのぼる。

 そこに、居住地区や目的地のある地域の感染者数の動向を組み合わせて解析した。同時に、調査対象の期間内にどの都市でもロックダウンが実施されたため、ロックダウン開始の前後での変化も比較した。

 こうした解析結果を基に、研究チームはどんな場所でどの程度の感染が起きるのか予想する数理モデルを開発。10都市の3月8日から5月9日までの1日単位の感染者数は、モデルを使って計算した予測値と実際の数字がほぼ一致し、モデルの正確さが確認できたという。

 さらに、目的地別の感染の発生を予測すると、55万カ所以上ある目的地のうちわずか10%の目的地で全感染の85%が発生すると予想された。

 感染が起きやすい「スーパースプレッディング」な場所の筆頭が、前述の店員が給仕するレストランだった。シカゴではロックダウン中に休業していたレストランを再開すると、約1カ月で感染者が59万6千人増えると予測された。レストランに次いで感染が起きやすいフィットネスセンター(ジム)の3倍超で、他の都市でも同様の結果だった。

 研究チームは、「訪問客が多く、滞在時間が長い傾向があるため、感染の恐れが高いと考えられる」としている。

 英ウォーリック大学のティエモ・フェッツァー准教授は、8月初旬から9月初旬に英国内で発生したクラスターの8〜17%は、英国版Go To イート事業に起因するのではないかと指摘する報告書を発表した。

 英国の事業は「Eat Out to Help Out(外食して飲食店を支援しよう)」と呼ばれ、8月3〜31日の4週間にわたり実施された。

 事業に参加した飲食店では、月曜日から水曜日の食事とソフトドリンクの料金が、1回につき1人あたり最高10ポンド(約1400円)を上限に50%オフになった。割引した金額は政府が店に補助する仕組みだった。利用回数に制限はなく、報告書によると、延べ1億人近くが利用した。テイクアウトには適用されなかったため、全員が店内やテラスで飲食した。

■イートが経済に悪影響

 フェッツァーさんは、グーグルが提供する携帯電話の位置情報やレストランの予約サイトの情報、事業に参加した各飲食店が政府に申請した補助金の件数、感染者の統計、当時の天気を組み合わせて解析した。その結果、事業が始まって1週間以内に感染者が大きく増加し、終了後2週間以内に感染者が減少したことや、月曜から水曜のランチタイムや夕食時に大雨が降った地域では飲食店の利用が少なく、また感染報告も少なくなったことなどから、事業と感染者の増加には相関関係があると結論づけた。

 地区ごとにこの事業が利用された件数や、クラスター発生件数の相関関係の分析から、事業が原因で発生したクラスターが8〜17%と推計した。

 フェッツァーさんは英国版イート事業を批判する。

「実施期間中は飲食店の利用が例年より増えたところもあったが、実施が終わると利用者は減り、結局飲食業界に客は戻ってこなかった。そればかりかこの事業による感染者の増加が秋の感染者急増にもつながり、かえって経済に悪影響を及ぼしたのではないか」

■イートの一時停止も

日本のGo To イートが第3波の一因になっているかどうかはまだ不明だが、利用者が大勢いることは確かだ。10月1日に始まった、オンラインで予約した場合にランチで1人500円分、午後3時以降の食事で1千円分のポイントがもらえるキャンペーンは、開始から1カ月半ほどで利用者が延べ5千万人にのぼり、農林水産省の予算がなくなって早期に終了するほど人気だった。これ以外に、食事券を購入するタイプなども人気で、いまなお継続中だ。

 以前から、政府の分科会は、会食、特に飲酒を伴う会食や懇親会、ホストクラブなど接待を伴う飲食店で感染が広がりやすいと注意喚起していた。

 10月下旬に公表したクラスター分析では、結婚式のような式典で複数の家族が集まる会食や学生の懇親会でのクラスターを紹介。式典でクラスターが発生した原因として、2次会や3次会で長時間一緒にいたこと、大声で長時間にわたり話したこと、スプーンの共有、大皿での食事や、予定より大人数が参加した点などを指摘した。

 分科会は11月25日、飲酒を伴う懇親会や、大人数が集まり長時間に及ぶ飲食は、酔って注意力が低下したり、聴覚が鈍くなって大きな声になりやすいことなどから感染リスクが高いので、開催をなるべく避けるよう改めて促した。

 分科会の提言などを受け、「ステージIII」に相当する地域とされた、札幌市や大阪市、東京23区、名古屋市などがある都道府県は、繁華街の飲食店に営業時間の短縮を要請した。Go To イートの食事券の発行や利用などを一時的に停止する自治体も出てきた。

■感染爆発を防げるか

 ただし、欧米で再び実施されたロックダウンとは異なり、国内の営業時間短縮の要請はあくまで“お願い”ベースで、受け入れるかどうかは各店舗に任されている。時間短縮とはいえ、都内では午後10時までは営業でき、忘年会なども1次会なら十分開催できる。

 分科会も全面休業は求めず、「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」を紹介する。

 ▽飲酒するなら少人数、短時間で▽箸やコップは使いまわさず、一人ひとりで▽正面や真横はなるべく避け、斜め向かいに座る▽(飲食時以外の)会話をする時はマスク着用▽大声を避け静かに会話。

 こうした対策で感染爆発や医療崩壊を防げるか。分科会は、3週間後の12月半ばをめどに感染動向をみながら、さらなる強い措置が必要かどうかを判断するという。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2020年12月7日号

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