ヤマハのリモート応援システム「Remote Cheerer」がもたらした成果とは? スポーツ関係者が語る現状と課題

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2020年12月03日 07:12  ITmedia NEWS

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写真ヤマハが開発したリモート応援システム「Remote Cheerer」
ヤマハが開発したリモート応援システム「Remote Cheerer」

 スポーツ業界は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けている領域の一つだ。無観客試合や観客数の制限、声を出さない応援が当たり前になり、選手・ファンともに感染予防を徹底しなければならない。こうした中でも、選手・ファンが競技を楽しめるよう、チームや企業はコロナ禍に適した応援スタイルを探り続けている。



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 今まで通りの観戦が難しい状況を受け、ファンがリモートで応援ができるシステムを開発・提供する企業も出てきている。その1社がヤマハだ。



 同社のリモート応援システム「Remote Cheerer powered by SoundUD」は、ファンが中継映像を見ながらスマートフォンアプリ上の声援ボタンを押すと、拍手や声援をリアルタイムで会場に届けられる。運営側が、会場のスピーカーやミキサーにiPhoneをつないで専用アプリを起動すると、ユーザーからの声援を受信して会場内に流せる仕組みだ。



 このシステムはJリーグやプロ野球が実証実験を兼ねて導入するなど、スポーツ業界で活用が広がりつつあるという。今秋にオンラインで開催された「CEATEC 2020 ONLINE」の講演では、ヤマハ社員とプロスポーツ業界の関係者が登壇し、Remote Cheererを導入した背景や、その活用法などについて議論した。



●JリーグがRemote Cheererを導入した背景とは



 Jリーグは新型コロナウイルスの影響を考慮し、3月中に開催予定だった全ての公式戦を延期。J2・J3は6月に再開・開幕し、J1は7月に再開した。この3〜4カ月間、サポーターの熱量や関心を保つために、各クラブはさまざまな取り組みを行っていた。



 当時の状況について、ジュビロ磐田の柳原弘味氏(事業戦略本部長)は「オフラインの場が制限され、不要不急と呼ばれるスポーツ業界のなかで何ができるか模索した。その結果、選手とサポーターとのオンライン会議など、これまでにない試みを行った」と振り返った。



 スポーツのライブストリーミングサービスを手掛けるDAZNの水野重理氏(シニアバイスプレジデント コンテンツ)は、こうした施策の効果について「ユーザーと選手との距離感が近くなった」と評した。従来のスポーツ業界では、ファンと選手がコミュニケーションを取れる機会はそう多くなかったが、コロナ禍によってWebを活用した交流が一気に進んだのだ。



 JリーグとDAZNは公式戦の再開後、“リモート応援熱”の高まりを踏まえ、一部の試合でRemote Cheererをテスト。DAZNユーザーが試合を見ながらボタンを押し、声援を送れるようにした。その結果、「視聴行動が盛り上がった」と水野氏は話す。ファンの盛り上がりには、Remote Cheererの仕様が一役買っていたという。



 例えばRemote Cheererは、配信する映像にファンの声援を加えるのではなく、スタジアムのスピーカーから歓声を流している。DAZNなどの配信サービス側は、それを集音した上で“現場の音”として視聴者に届けている。



 水野氏によると、海外のリーグなどでも、無観客試合の中継映像にシステム側で歓声音を追加して配信する取り組みが行われていたが、いまいち臨場感がなかったという。JリーグではRemote Cheererを使うことで、視聴者が“わざとらしい”と違和感を抱くケースを防ぎ、ユーザーの応援を活性化できたとしている。



 また、サガン鳥栖のスタッフである梅本昌裕氏は、Remote Cheererによる応援が増えるごとに、スタジアムで流す音量が大きくなる点が魅力だったと説明。「音量が大きくなることで、選手は応援されていると感じる。会場にいない人の声が確実にピッチに届くことで、選手のモチベーションにつながっている」とした。



 この他、現役タイ代表のティーラシン・デーンダー選手が所属する清水エスパルスでは、Remote Cheererを活用してタイ国内のファンの声援を同選手に届ける企画を実施。Webならではの利点を生かし、国境を越えて試合を盛り上げたという。



●業界の維持・発展に向けては課題も



 ただし、業界の維持と発展に向けては課題も残っている。従来のプロサッカー界のビジネスモデルは、広告料収入、入場料収入、飲食・物販収入が柱であり、スタジアムへの来場が前提となっていた。コロナ禍で集客が厳しくなった今では、これらに頼るのは難しい。そこで今後は、単にリモートでファンを盛り上げるだけでなく、何らかの形で収益を生み出すことが求められる。



 この点について、福島ユナイテッドFCの井上敦史氏(取締役 営業部長)は「Remote Cheererの画面にバナーを掲示し、(試合の中継画面に)福島県産品の通販サイトへのリンクを貼るなどすれば、(ファンと)地域とのつながりもつくれるのでは」と、ECとの連携などに期待を寄せた。



 また、ジュビロの柳原氏は、コロナ禍の影響によって新たなファンを増やすことが難しくなっていることも、経営上の課題だと指摘。「新たなファンづくりについても考えなければ、クラブの存続にも関わる」と危機感を示し、「リアルの場ではなく、バーチャルの中でいかにコミュニティーをつくり、これまでとは異なる観戦の仕方を提案できるかが重要になる」と、オンラインでサポーター同士をつなげる取り組みに意欲を見せた。



●悪役レスラーに“遠隔ブーイング” 他競技でも活用進む



 Remote CheererはJリーグ以外のスポーツ業界でも活用が進んでいる。プロ野球チームの阪神タイガースはRemote Cheererをカスタマイズし、ファンがスマホを振ると、応援バットを打ち鳴らす音を球場に届ける取り組みを行った。プロレス団体・新日本プロレスリングでは、ファンが離れた場所からRemote Cheererを活用し、悪役レスラーなどにブーイングの声を送れる企画を実施した。



 Remote Cheererの開発責任者である ヤマハの岩田貴裕氏(SoundUDグループ主事/SoundUD推進コンソーシアム 部会長)は、これらの施策の背景について「さまざまなプロスポーツ団体の方と話したが、観戦スタイルはそれぞれ異なれど、ファンやサポーターの思いを選手や会場に届けたいというニーズは共通していた」と明かす。



●実は1年以上前から開発



 岩田氏によれば、同サービスの開発は、実は1年以上前から進めていたという。本来は、入院や子育てなどが理由で会場に足を運べない人向けのサービスとして企画していたが、コロナ禍によって多くのスポーツ業界から引き合いがあったことから、会場に声援を届ける機能にフォーカスすることで時期を早めてリリースした。



 今後は、コロナ禍でのスポーツ観戦を盛り上げるだけでなく、コロナ禍が収束した場合でも会場で観戦できない人を支援できるように、Remote Cheererの開発を継続していくという。



 「アフターコロナの世界では、会場で声援を送る体験は戻るはず。それでも、さまざまな事情で会場に行けない人はいるだろう。そうした人たちがRemote Cheererを使って、会場にいる人と同じように声援を送れるようにしたい。また、リモートでさまざまな人たちとのつながりを生み出せるプラットフォームにもしていきたい」(岩田氏)


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