4日間で80食売れた「昆虫食自販機」が出現! スター食材はコオロギで抜群にうまい

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2020年12月03日 08:05  AERA dot.

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写真よく見ると違和感(撮影/写真部・掛祥葉子)
よく見ると違和感(撮影/写真部・掛祥葉子)
「コオロギっておいしいのかな」「スズメバチもあるよ」……下校中の小学生が興味津々にのぞきこむ自動販売機。ここは京王新線の初台駅(東京都渋谷区)から徒歩10分ほどの静かな住宅地。傍らには「昆虫食はじめました」と書かれたのぼり。セミやバッタのシンプルなイラストが可愛げな、昆虫の加工食品(昆虫食)を販売する自販機を発見した。

【写真】袋を開けるとオオスズメバチがごろりな昆虫食はこちら

 日本全国津々浦々、オモシロ系自販機は少なくないが、“虫モノ”は激レアな部類だろう。はたしてちょっと小腹が減ったから虫でも食べるか、という需要はあるのだろうか。
 
 運営する「セミたま」の伊藤洋平さんに話を聞いてみた。「この自販機は、11月12日から稼働しています。昆虫食の自販機は全国に20台弱ありますが、国産(国内加工)品だけを扱うのはこれが初めてなんですよ」

 インスタ映えしそうなタランチュラやカブトムシなどの“大物”は輸入品なのであえて扱わず、「日本の昆虫食ビジネスを創造したいから、国産にこだわりました」と話す。なんだか高尚な志がありそうだ。

 伊藤さんは2016年に多摩市に多く生息するセミを使って地方創生ができないかと考え、「セミたま」というグループを立ち上げた。現在のコアメンバーは4人で、セミだけでなく昆虫食全般に関する情報発信やイベント、自販機運営を手掛け、将来的には事業化を目指している。

 記念すべき第1号となるこの自販機は伊藤さんが100万円以上を負担して新品を購入し、親類の土地に間借りして設置したという。それこそ、ムシできない本気度だ。

 「昆虫を食べる魅力を発信し続けることで、将来的には “昆虫食=セミたま”というポジションになれたらなと。まだまだ興味本位で買われる方が多いと思いますが、設置から4日間で80食ほど売れました」
 
 意外にも売れ行き上々のようだ。ちなみに商品の仕入れ先は6カ所ほどで、仕入れ原価は6〜7割だという。そんなことを聞いている間にも、次々と自販機をのぞきこむ人が現れた。

 「昼間気になった人が、夜間に買いに来るケースも多いですね」

 自販機ならではの利便さだが、ロケーションといい、パッケージデザインといい、奇をてらったゲテモノ販売という感じは微塵(みじん)もない。エコでおしゃれな自然食というスタイルなのだ。

 5月に無印良品が「コオロギせんべい」を発売し、6月には東京・日本橋馬喰町に本格的なコース料理を楽しめる昆虫食レストランが開店するなど、昆虫食のおしゃれ化が著しい。とはいえ、まだまだ心理的なハードルは高いのも事実だ。

 「その姿から気持ち悪いという先入観があると思いますが、アブラゼミなどは本当においしいですよ。成虫はカリッと素揚げに、幼虫は燻製にすると芳醇な味わいに……」

 そうなのかなあと思いつつ、ほかの魅力も聞いてみた。

「国際連合食糧農業機関(FAO)は、昆虫を代替たんぱく質として推奨しています。小魚のように丸ごと食べられる昆虫は栄養満点。課題としては昆虫食を安定供給するには養殖が必須ですが、日本はまだまだ天然物と養殖物が曖昧な状態なんです」

 確かに、イナゴや蚕の佃煮などは稲作や製糸業の副産物扱いとして生産されてきた。だが、昆虫を食べることを主目的で養殖するようになれば、伊藤さんの目指す新たなビジネスや食文化の創造につながる可能性があるかもしれない。

 さらに昆虫食は食肉に比べて生産コストや育成期間が圧倒的に抑えられるので、国連がリードするSDGs(持続可能な開発目標)の食糧難対策などとの親和性も高い。そんな昆虫界のスターがコオロギなのだ。

 「養殖のしやすさ、栄養価、味を含めてコオロギが抜群ですね。私たちが数ある動物の中から牛や豚、鶏に絞って食べているのと同様に、コオロギや蚕、ミルワームといった種類が昆虫食の中心になりつつあります」
 
 あのコオロギが昆虫界の“牛肉ポジション”だとは驚きだ。形状はそのまんまというより、パウダーにして菓子や麺類に練り込んだ製品が多い。価格は500円から1000円程度。伊藤さんは「お求めやすい価格帯で売っています」と胸を張るが、気軽に買うにはちょっと高いと感じた。コスパのよい食品ではないが、「虫って意外とうまい」などとSNSで発信することも含めてのお楽しみだと考えれば納得か。何はともあれ、いくつか実食してみよう。
 
 まずコオロギ系のせんべいとゴーフレット。パウダーになっているからか、「これがコオロギだ!」という明確な味の主張は感じなかった。強いていうなら微妙な雑味がそれなのか。知らずに食べればコオロギ入りとはまず気づかないだろう。
 
 続いてのオオスズメバチは、そのままの姿。ほかのスナックと一緒に皿に盛りつけると、蜂がたかっているように見えてしまうのが残念なところだ。一口サイズだがあえて二口でいただく。複雑な味が舌を刺激し、脳裏に野山の風景が浮かんできたが、控えめに言っておいしくはない。内臓までパサパサに乾燥しているのとあっさり塩味なのがいけないのか、イナゴの佃煮のようなご飯のお供という感じでは断じてない。昆虫の加工品を食べつくした上級者が、原点回帰で戻ってくるような素材の持つすごみを感じた。
 
 変わり種である蚕のお茶もいれてみた。桑の葉だけを食べた蚕のうんちが原料だ。強烈なインパクトがあるものの、味わいはとても上品。さすがシルクをつくる“お蚕様”の面目躍如といったところか。体によいお茶だと勧められたら、ありがたく飲み干すだろう。
 
 バラエティー豊かすぎる昆虫食だが、注意することもある。コオロギ系スナックには「エビやカニに似た成分を含みます」との記載が。甲殻類アレルギーがある人には、伏せて食べさせないように。また、買うのは割高だからコオロギやセミは自分で捕る……という狩猟派は、煮沸消毒を忘れないこと。自己責任とはいえ食中毒の可能性があるからだ。まずは今回紹介したような加工品を試すのがおすすめだ。
 
 昆虫食が人類を救う……とはまだまだ大げさだが、この昆虫食自販機が「虫を食べること」について考えるきっかけとしては役立つことだろう。(取材・文・撮影/アエラムック編集部・杉澤誠記)

自販機所在地/東京都渋谷区本町4−43−5

このニュースに関するつぶやき

  • ブラックバスとか特定外来種も是非。
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  • 実は多くの人が気付かずに昆虫食をしている。そう、「コチニール色素」ですw もっとも最近はそれを理由に使わないメーカーが増えてるが、昆虫食の普及によって、復権するかもw
    • イイネ!27
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