モウリーニョの必勝パターンを分析。トッテナムは優勝のチャンスあり

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2020年12月03日 11:22  webスポルティーバ

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サッカー名将列伝
第25回 ジョゼ・モウリーニョ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回は現在トッテナムの監督を務めているジョゼ・モウリーニョ。これまで数々のビッグクラブの監督を務め、タイトルを獲得。今季のトッテナムも好調だ。無類の勝負強さを発揮してきた、その手法に迫る。

◆ ◆ ◆

<対戦相手を分析し、的確に弱点を突く>

 プレミアリーグ第9節、トッテナム対マンチェスター・シティは、ジョゼ・モウリーニョとジョゼップ・グアルディオラの因縁の監督対決でもあった。




 結果は2−0でスパーズ(トッテナムの愛称)の勝利。ボールを支配したのはシティだったが、「そんなにボールが好きなら家に持って帰ればいい。私は勝ち点3を持ち帰る」と、モウリーニョ監督は彼らしいコメントを残した。

 シティは左サイドバック(SB)のジョアン・カンセロが、攻撃時にはボランチとしてプレーする。グアルディオラ監督らしいポジション変化なのだが、モウリーニョ監督は着実にそこを突いてきた。

 守備では最終的にカンセロが左SBに戻る。この3バックから4バックへの移行時、やや不安定になる。そこでいつもは左サイドにいるソン・フンミンを右サイドに置き、カンセロとセンターバック(CB)の間を狙わせた。

 先制点はカンセロの横をすり抜けたソンに、タンギ・エンドンベレからの浮き球のパスがピタリ。抜け出したソンがゴールしている。シティは4人のラインを揃えることができず、ソンはオンサイドのまま裏へ走り抜けていた。

 ハリー・ケインが偽9番的に下りる。エンドンベレにはマークを外すドリブルがある。3バックの手前でタメをつくり、その間にソンがカンセロの戻り切れないスペースを狙うという作戦だった。

 対戦相手を分析し、的確に弱点を突いていく。モウリーニョ監督らしい采配と言える。ただ、スパーズに来てからのモウリーニョは以前と比べると丸くなった印象がある。温和なモウリーニョではモウリーニョらしくない気もするが、齢をとったというより時代に合わせて変化したのだろう。

 今季のスパーズには優勝のチャンスがある。世界最高のコンビ、ケインとソンがいる。ライバルのシティ、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドはスタートダッシュに失敗。リバプールは負傷者が続出しているのだ。そして、監督就任2年目の時のモウリーニョは、たいがいタイトルを獲る。

<接戦に持ち込み、高確率で勝つ>

 チェルシーの監督に就任した時、モウリーニョは自らを「スペシャル・ワン」と称した。現在は「エクスペリエンスド・ワン」だと言う。監督として直面する出来事にすべて「既視感がある」そうだ。

 ベンフィカ(ポルトガル)で初めて指揮を執ってから20年。常にヨーロッパサッカーの最前線にいた。蓄積された経験値では、世界最高クラスだろう。

 数々のタイトルも獲得してきた。ポルト(ポルトガル)とインテル(イタリア)でチャンピオンズリーグ(CL)に優勝し、長いキャリアでは失敗だったマンチェスター・ユナイテッドでもヨーロッパリーグ(EL)を獲っている。CLとELの両方で優勝した監督は、モウリーニョが初めてだ。

 ベンフィカ、ポルト、チェルシー、インテル、レアル・マドリード(スペイン)、マンチェスター・ユナイテッド、そして現在のスパーズと、名門クラブを渡り歩いてきたわけだが、最もモウリーニョらしいチームではないかと思うのは、ポルトだ。

 それぞれにモウリーニョらしくはあるのだが、ポルトは原点とも言えるチームで、モウリーニョの考え方が色濃く反映されていた。

 2003−04シーズン、ポルトのCL優勝は番狂わせと言える。決勝で対戦したモナコ(フランスリーグ)も下馬評は低かったので、ファイナルはジャイアントキリングではないが、ポルトはラウンド16でマンチェスター・ユナイテッドを下している。

 準々決勝ではデポルティーボ・ラ・コルーニャ(スペイン)がミラン(イタリア)に勝ち、モナコはレアル・マドリードを破る番狂わせ。優勝候補とみられていたチームは全滅となり、ポルト、モナコ、デポルティーボ、チェルシーがベスト4だった。

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 決勝ではモナコを3−0で破る快勝だったが、それ以前にポルトが3得点したのはグループリーグのマルセイユ戦だけ。決勝の3点も、この試合で放ったシュート3本がすべてゴールしての3得点である。

 この時の13試合の戦績は7勝5分1敗。引き分けが多いが、負けたのはグループリーグのレアル・マドリード戦だけだった(1−3)。そして7勝のうち、2点差で勝ったのは準々決勝のリヨン戦と決勝だけ。あとはすべて僅差勝負である。

 戦力的に図抜けているわけでもない。しかし、すべての試合を均衡状態にすることができる。そして僅差の勝負に勝てる。監督の手腕が評価されるはずだ。

 モウリーニョ監督はよく「守備的だ」と批判されてきたが、およそビッグクラブを率いていたこともあり、守備的なプレーばかりしていたわけではない。ただ、格上や同等との対戦では堅守速攻をメインにしてきたので、守備的な印象が強いのだ。ポルトも守備的ではなかった。

 面白いのは、ポルトは堅守ではあったけれども、速攻のチームではなかったということだ。言わば「堅守遅攻」である。

 モウリーニョの編成は中心軸をしっかりつくる。ポルトではGKにビトール・バイーアがいて、CBはリカルド・カルバーリョとジョルジュ・コスタ。菱形の中盤の底にはコスチーニャ、このポジションには必ず守備力のある選手を使う。トップ下にデコ(以上ポルトガル)、エースストライカーはベニー・マッカーシー(南アフリカ)だった。

 安定したGKとCB、守備力のあるアンカー、創造性のトップ下、得点力のあるストライカーという縦軸をしっかりつくる。ある意味、極めてオーソドックスな編成だ。そこに枝葉になる選手を組み合わせ、攻守にバランスのとれたチームに仕上げる。

 ポルトガルらしく、ボールポゼッションのうまさはポルトの特徴だった。格別なFWがいないので、速攻にそれほどの威力がないかわりに、堅守で奪ったら容易に失わない。

 強豪を相手にも僅差勝負にできたのは、ただ守っているだけではなく、ボールポゼッションで相手の攻撃時間を削り取っていたからなのだ。以前はバルセロナ(スペイン)のコーチだったのだから、ポゼッション重視は不思議ではないのだが、それを少し違う用途で活用していたのがモウリーニョらしさだろう。

 モウリーニョが率いたチームは圧倒的な戦績を残すことはあっても、圧倒的に勝利するという幻想を持たない。丁寧に相手の長所を消し、弱点を突く。

 華々しい戦績と目立ちすぎるパーソナリティーとは裏腹に、実に手堅く地味な勝ち方をするのが得意な監督と言える。

 必ず接戦に持ち込み、高い確率で勝つ。モウリーニョがイノベーターだったことはないが、名監督であるのは間違いない。

ジョゼ・モウリーニョ
Jose Mourinho/1963年1月26日生まれ。ポルトガル・セトゥーバル出身。スポルティングやポルト、バルセロナのアシスタントコーチののち、2000年にベンフィカから監督業をスタート。ポルトで2003−04シーズンにCLを制して注目され、以降、チェルシー(04−07、13−15)、インテル(08−10)、レアル・マドリード(10−13)、マンチェスター・U(16−18)とビッグクラブの監督を歴任し、数々のタイトルを獲得する。19年よりトッテナムの監督を務めている。

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