F1技術解説バーレーンGP編(1):グロージャンを救ったヘイロー。53Gの衝撃もコクピット内を守る

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2020年12月04日 07:31  AUTOSPORT web

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2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 ロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ。マシンが真っ二つに
2020年F1第15戦バーレーンGPでのアクシデントで、ロマン・グロージャンの駆るハースは、FIAによれば時速220kmでガードレールに激突し、衝撃は最大53Gに達したという。その瞬間、マシンはガードレールの2枚の隙間を押し広げる形で突き破り、支柱によって進路を遮られて右方向に激しくスピン。モノコックとマシン後部が、真っ二つにちぎれてしまった。

 それでもグロジャンの命が助かった最大の要因は、ヘイローの存在だった。2018年からの導入に際しては、見た目や効果への疑念などから、反対意見も少なくなかった。しかしこの1基15000ユーロ(約180万円)のデバイスが、ガードレールのコクピット内への侵入を防いだのは間違いない。オーストリア人のF1ドライバー、ヘルムート・コイニグは1974年ワトキンスグレンでのアメリカGPのレース中、今回と類似したガードレールを突き破る事故で、首を切断されて即死している。

 ヘイロー自体は、FIAの承認を受けたイギリス、イタリア、ドイツの3メーカーが製造したものを、各チームが購入している。しかしモノコックへの取り付けは各チームの責任で行われ、いうまでもなくクラッシュテストを通る必要がある。下の2枚の写真で明らかなように、事故車のヘイローは表面のラミネート部分は焼失したものの、内部のチタン構造は無傷だった。

 3周目に起きたランス・ストロールの横転事故でも、ヘイローがドライバーを保護していたことが下の写真から見て取れる。

 頑丈なモノコックとクラッシャブル構造の衝撃吸収材も、グロージャン生還に大きく寄与した。モノコックに対するFIAによるクラッシュテストは特に厳しく、サーキットでの実走に漕ぎ着けるまでに最低でも18回の様々な角度からのテストを受ける必要がある。クラッシュの模様は高速度カメラで撮影され、衝撃を受けた際の変形の度合いが詳しく分析される。

 そして急激な動きから頭部を保護するHANSと、安全性能が今年から改善されたレーシングスーツも大きな助けとなった。スーツの布地は直接の炎に対し12秒間、グローブは11秒間耐えることが義務付けられた。シーズン当初のドライバーたちは、生地が厚すぎて暑いと文句を言っていた。残念ながらグロージャンは、改良版のグローブでも両手の甲に火傷を負ったわけだが。

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