低身長をも武器にする。「小さな大投手」たちがプロで輝ける理由

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2020年12月04日 11:42  webスポルティーバ

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 新型コロナウイルスの影響で異例づくめだった今シーズンはソフトバンクの4年連続日本一で幕を下ろし、ストーブリーグに突入した。今シーズンに国内FA権を取得した選手の中で、去就が注目されている選手のひとりが、ヤクルトの小川泰弘だ。




 ルーキーイヤーの2013年は新人王に加えて最多勝利と最高勝率(16勝4敗)のタイトルを獲得し、その後もヤクルトの主力投手として活躍。今シーズンは5年ぶりとなる2ケタ勝利(10勝8敗)を挙げ、史上82人目となるノーヒットノーラン(8月15日のDeNA戦)も達成した。

「ライアン」という愛称の由来でもあるMLBの大投手、ノーラン・ライアンを彷彿とさせるダイナミックなフォームが印象的だが、小川の身長は171cm。プロ野球界においては小柄な部類に入る。プロ入り前には自身の身長について悩んだこともあったそうだが、その答えが、体を効率よく使える現在のフォームだった。

 左足を高く上げる独特なモーションから、140キロ代中盤のストレートと、カットボール、スライダー、チェンジアップといった変化球を駆使し、多くの強打者に立ち向かってきた。まだ30歳で、今シーズンは本来の球威が戻り、先発ローテーションを1年間守れるスタミナも健在。獲得したい球団が多そうなだけに、小川がどのような決断を下すのか注目したい。

 一般的に投手は、「長身のほうが有利」と言われている。高い位置から投げ下ろすことができるため、いわゆる「角度がある」ボールになり、変化球の落ち幅も大きくなる。さらに、長い腕のしなりを生かして速いボールを投げやすいことなどが背景にある。

 それゆえ小川のように、体は小さくてもプロで奮闘する投手は、そのチームのファンでなくても思わず応援してしまいたくなる気持ちが湧いてくるもの。長くヤクルト投手陣を牽引してきた石川雅規がまさにそうだ。

 小川よりもさらに小さい167cmの石川は、プロ1年目の2002年に12勝(9敗)を挙げて新人王に輝くと、5年連続で2桁勝利を挙げ、2008年には最優秀防御率とゴールデングラブ賞のタイトルも獲得した。ヤクルトひと筋で積み上げてきた勝利数は173。今シーズンは8敗と苦しみながら2勝を挙げ、プロ入り以来続いている19年間連続勝利を達成した。40代投手の勝利は、球団史上3人目、チームの生え抜き選手としては初の快挙で、来シーズンの記録更新も期待されている。

 石川の武器は、緻密なコントロールと、シンカーをはじめとする多彩な変化球。そして球速こそ140キロ台前半だが、打者には「速く見える」というストレート。それらを巧みに使い分ける石川の投球術が、長年に渡って活躍できている要因だろう。

 石川と同じように、速いボールに頼らないピッチングで活路を見出したのが巨人の田口麗斗。今シーズンは主に中継ぎとして起用され、巨人のセ・リーグ連覇に貢献した左腕も、身長は171cmと決して恵まれてはいない。

 直球のスピードは140キロ台中盤。それでも、切れ味がいいスライダーや制球力を武器に2年目から頭角を現し、今では先発、リリーフをこなすチームに欠かせない存在になっている。

 かつて、巨人の投手コーチとして田口を指導した尾花高夫(現ヤクルト2軍投手チーフコーチ)は、田口が初めて2桁勝利の10勝(10敗)を挙げた2016年に「速いボールはないが、低めへの変化球がきちんと投げ分けられる。思い切り腕を振って速い球を投げることばかり考える投手も多いなかで、自分をよく知っている」と取材陣にコメント。低身長での投手としての生き方を見出したことが、これまでの活躍につながっている。

 かつて日本ハムでセットアッパーやクローザーを務めた身長170cmの武田久も、140キロ台中盤のストレートや変化球で、2006年に最優秀中継ぎ、クローザーに転向した2009年からは最多セーブのタイトルを計3回も獲得した。

 クローザーは長身の速球派投手が務めることが多いが、そこで武田が活躍できた背景には、低身長を逆手に取った投球術があった。リリース時に、右投手の軸足となる右足の膝がマウンドの地面につくほど沈み込むフォームは、他の投手にはない"角度"を生んだ。それによって浮き上がるようなストレートと、シュートやスライダーなどの変化球を操り、アウトを積み重ねたのだ。

 武田久の成功は、後に続く「低身長の投手」たちの指針になる。ロッテの169cm右腕・美馬学は、藤代高校時代は最速130キロ台の目立たない投手だったが、中央大学に進学してから肉体改造に取り組んだ。武田のフォームを参考に下半身の筋肉を鍛え、スリークォーターのフォームから斜めの軌道を描くボールを投げるように心がけたという。

 結果として社会人野球の東京ガスでは最速152キロを誇る投手になり、2010年のドラフト2位で楽天に入団。2013年には日本シリーズMVPに輝くなど、チーム初の日本一に貢献した。FAでロッテに移籍した今シーズンは、ソフトバンクを相手に5勝(1敗)を挙げるなど10勝4敗と大きな貯金を作り、チームは2位とCS進出に貢献した。

 角度を出すために工夫を凝らしているのは、中日のベテラン右腕・谷元圭介も同様だ。

 日本ハム時代の2016年に28ホールドを記録し、日本シリーズでは胴上げ投手になった。2017年シーズン途中に金銭トレードで中日に移籍したあとも中継ぎとして活躍を続け、今シーズンも36試合に登板。8年ぶりにAクラス入りを果たしたチームを支えた。

 ヤクルトの石川と同じ167cmの谷元の球速は140キロ台中盤だが、手元でホップするようなストレートを武器に三振の山を築いた。現在のピッチングスタイルを志したのは、「高めに投げろ」という大学時代の監督からの助言がきっかけだったという。低いリリースポイントで投げるために、体幹や下半身の強化にも積極的に励んだ結果が、プロ野球で成功につながった。

 今回取り上げた選手以外にも、172cmの山岡泰輔(オリックス)や嘉弥真新也(ソフトバンク)、170cmの東克樹(横浜DeNA)など、小柄な投手たちが多く活躍している。身長のハンデを乗り越えるための取り組みからは、選手それぞれの考えや個性が垣間見える。これらに目を向けると、また違ったプロ野球の楽しみ方が見つかるかもしれない。

このニュースに関するつぶやき

  • 小さな大投手というとつい里中を思い出してしまう・・
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  • 石川の身長が2割高くて、同じ動きをしていたら、とんでもない剛速球投手になるのにな、、、と時々思う���ޤ���
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