コロナ飛沫が顔に 医師より感染リスク高い看護師たちの危機

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2020年12月05日 08:05  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
「仕事でコロナに対応していることは、当時は家族にも言えなくて、それがつらかった。現場では支え合いながらやっていましたが、他部署では辞めていった看護師さんもいました」

【表を見る】聖路加国際病院の医療者バーンアウト率はこちら

 そう話すのは、都内の医療機関で、3月から発熱外来を担当している看護師のTさん(30代)。全国的に新型コロナの感染者が急増しているが、ここの医療機関でも発熱外来を訪ねてくる受診者の数が増えた。そのなかには市中感染や感染経路不明の患者もいる。

「最初のころと同じような状況になると考えると不安。夏場からは落ち着いていたので気持ちの切り替えが難しいです」

 コロナ禍で逼迫(ひっぱく)する医療現場を支えているのが、看護師だった。一方、新型コロナの第1波で疲弊した現場で、最も大きなダメージを受けたのも看護師だ。聖路加国際病院(東京都中央区)感染症科の松尾貴公医師が、緊急事態宣言が出ていたころの様子をこう語る。

「マスクや防護具が足りない、医療崩壊が起こる、といった不穏な空気が院内に広がっていた。それまで明るくよく話していたスタッフの表情が急に暗くなったり、病院に来られなくなったりする人も出てきました」

 強いストレスから、疲労感や虚無感、やりがいの喪失などの症状が表れる“燃え尽き症候群”(バーンアウト)の傾向が顕著だったという。バーンアウトでは仕事を続けるモチベーションが失われるため、離職などにつながる恐れがある。

 海外では、フランスの看護師組合の調査で、看護師約6万人のうちの6割弱が、疲労の度合いや健康状態がバーンアウトの状態にあったことがわかった。組合は、3万4千人の看護師が不足し、労働条件の悪化でさらに辞めていく恐れがあるとの声明を出した。

 同様に松尾医師は、今年4月上〜中旬、重症の陽性患者が次々と運ばれてきていた時期に、病院の医師や看護師らがどのくらいの割合でバーンアウト状態にあるかを調査した。対象者は救急、一般内科、呼吸器内科、感染症科、集中治療室(ICU)などで、コロナ診療に対応していた約370人。バーンアウトを測定する尺度を用いて調べた。

 その結果、全職種で、バーンアウトと認められた割合は31.4%(312人中98人)。職種別では看護師が46.8%で最も高かった。自由記述で何にストレスを感じたかを質問したところ、職種にかかわらず、「自分自身の感染」「家庭へのウイルスの持ち込み(と感染)」「患者さんに感染させてしまうこと」などが挙がった。

 看護師のバーンアウトが他職種より高かった理由を、松尾医師は「業務内容の違いが関係するのでは」と推測する。

「例えば、医師は軽症者に対しては、iPadやインターホン越しの診察で感染患者さんとの接触を減らし、曝露(ばくろ)の機会を少なくすることができます。しかし、看護師は食事の介助や痰(たん)の吸引などで感染患者さんと接する時間が長い。心身のストレスを抱えやすい可能性があります」

 関東地方の医療機関で働く看護師のSさん(40代)は、3月からコロナ専用のICUで重症患者をみている。やりきれない気持ちを打ち明ける。

「最初のうちは医師も『チームでがんばろう』と私たち看護師と一緒になってICUに入り、陽性患者さんを診てくれていました。しかし、今は診察した後は安全な非汚染エリア(グリーンゾーン)に戻り、そこから指示を出すだけの医師も出てきています。そういう姿を見ると、なんで自分たちだけという気持ちになりますね」

 Sさんの勤務する医療機関では、使った器具の消毒や汚染された汚物の処理は、担当が決まっているわけではない。だが、医師はほとんど手を出さず、結果的に看護師がやっているという。

 また、コロナでは肺の画像検査は必須だ。ポータブルの機器を用いて病床で行うことになるが、その際、感染患者の体位を変える必要がある。当然ながら患者に触れるため感染リスクが上がる。

「装着していた人工呼吸器が外れたときに、患者さんがむせて、咳(せき)や唾(つば)などの飛沫(ひまつ)が顔面にかかったことがあります。もちろんN95のマスクを着け、フェースシールドをしていましたが、『感染したかもしれない』と、恐怖がこみ上げました」

 看護師同士で「(ウイルスを)浴びてる、浴びてる」と注意し合うこともあったという。

 Sさんの医療機関では陽性患者がゼロになったことはなく、今もICUには、人工呼吸器を装着した陽性患者がいる。

「1日8時間勤務のうち、防護具を着ているのが6時間ほど。その間、トイレにも行けず、水分補給もできない。脱いだ後にトイレに駆け込んだり、脱水でぐったりしたりする看護師もいます」

 防護具を着けるのが長時間になってしまうのは忙しさもあるが、

「マスクやガウンが枯渇していたから、極力節約をしなければという思いが強かった。看護師長からは『休憩するように』と言われましたけど、休むということは防護具を脱ぐということ。不足していることがわかっていたので、休憩する看護師はほとんどいなかった」

 と振り返る。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日  2020年12月11日号より抜粋

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