医学部合格高校ランキングでわかる、地域の特色と強豪校を徹底分析

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2020年12月05日 17:00  AERA dot.

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写真国公立大合格ランキングの2位である、1927年創設の灘高等学校。授業のほかに医学関連の話題も取り上げる土曜講座を開催することで知られる(写真/長谷川拓美)
国公立大合格ランキングの2位である、1927年創設の灘高等学校。授業のほかに医学関連の話題も取り上げる土曜講座を開催することで知られる(写真/長谷川拓美)
 現在発売中の『医学部に入る2021』では、2020年の入試において医学部受験に強い全国の高校を調査し掲載している。どの医学部に何人合格したのか、「国公立大学」と「私立大学+大学校」別の合格者数を、都道府県ごとに一覧にしている。どんな傾向があるのか……合格実績を見て、学校選びの参考にしよう。

【ランキング】2020年 国公立大医学部医学科合格高校ランキング、1位は?

*  *  *
■制度改正によって中高一貫校が台頭

 医学部進学に強い高校の特徴として挙げるとすれば、私立の中高一貫校が強いということだろう。

 1960年代後半から、学力格差を是正するために全国各地の公立高校で学校群制度が導入された。67 年、この制度が取り入れられた東京都では、都立のエリート校に優秀な生徒が入学する流れは崩れたという。結果、関東圏の場合は、中高一貫を掲げる開成や筑波大附などが台頭してきた。

■実利を重んじる風潮、東海と灘の強さとは
 
 2020年の国公立大医学部医学科(以下、国公立大)、私立大+大学校医学部医学科(以下、私立大)それぞれの合格者数トップ40と、合格者数トップ38の高校をランキングにした。
 
 国公立大への進学でトップなのは、愛知県にある東海で、私立大ランキングでも全国9位だ。もともとは、法然上人が開いた浄土宗の僧侶を育成するための学校として、1888年に創立された。
 
 高校の1学年は約400人で、卒業生には予備校講師でタレントの林修や作家の大沢在昌がいる。医系予備校の進学塾ビッグバンの松原好之代表は、こう話す。

「トヨタ自動車やデンソー、ホシザキなど、愛知県はものづくり産業が盛んで実利を重んじる風潮があります。地に足を着けた商売戦略気質もあり、医学部受験においても、国公立大も私立大も等価とみなす富裕層ならではの考え方を持っています。以前、医学部の学費の値下げが起きた際も、それに伴って偏差値が上昇することをきちんと視野に入れて、偏差値を高めるチャンスも可視化した。東海は、医学部受験に強い高校という看板を不動のものにした結果、進学したい人気校として飛躍したのです」
 
 国公立大の2位は、兵庫県にある灘だ。もともと難関大に強いのが特徴で、授業のほかに医学関連の話題も取り上げる土曜講座を開催することで知られる。

「以前、息子の受験のために灘中学の学校説明会に行ったことがありました。学校の説明を受けた後、校長先生がこう話したのです。『高校2年の後半ごろになると、多くの灘校生は私たち教師を抜くんです。まあ、教師を抜けないようでは、私たちレベルの人間で終わってしまいますから』、と。私はこの言葉に、とても感銘を受けました。灘校には“余裕”があると思いました。それは、生徒の多くが卓越した素質を持ち、教師陣も生徒に対して信頼を持って接し、個性を存分に伸ばそうとする気概を強く感じたからです」(松原代表)

■男女がともに高め合う、共学校が強い理由は

 国公立大3位の洛南は、京都駅から徒歩圏内にある。約1200年前に空海(弘法大師)が創ったといわれる「綜藝種智院」(日本初の私立学校)が源流だ。
 
 1962年の発足時は男子校だったが、2006年に男女共学校となった。
「共学校にしてから、さらに医学部志望の生徒が増えたそうです。やはり、男子よりも女子のほうが真面目で勤勉で、コツコツと努力を重ねます。その姿に、男子がいい意味で意識をし、ライバル心を持つようになるんですね。日々の生活や学びでお互いに刺激し合うことが、医学部進学率を押し上げているのではないでしょうか」(同)
 
 国公立大、私立大ともにトップ10に入ったのは、東海、四天王寺、ラ・サールの3校だ。では、北から南に向けて地域ごとに詳しく見ていこう。

【北海道】
 国公立大合格者数ランキング40 位内に入ったのは、北海道大に13人、旭川医科大に7人の合格者を出した札幌南で全国で11位だ。私立高校は、北海道大に5人、東京大に2人が合格した北嶺が27位となった。
 
 北嶺は、医学部志望者に向けて「北嶺メディカルスクール」を立ち上げており、受験の指導にとどまらず「医療人」として日本や世界で中心的な役割を担う基盤を提供。早期から医療や福祉の現場に触れる機会を設けているという。

【東北】
 東北地方でランキングに入ったのは、国公立大16位の仙台第二で東北大に12人、山形大に13人が合格した。私立大医学部においても東北医科薬科大に17人、獨協医科大にも5人が合格した。
 
【関東】
 関東には国公立大が6大学、私立+大学校が19大学もある。国公立大の10位内に関東の高校名はないが、私立大ランキングには、豊島岡女子学園、暁星、開成、海城、女子学院といった都内の私立高が並ぶ。また、6位には聖光学院もランクインしている。

「進学にしても就職にしても、東京には多様かつ一流の受け皿があります。では、医学部に強い進学校は、どう選んだらいいのでしょうか。その目安として私が話すのは、国公立大医学部だけではなく、むしろ私立大医学部に何人の生徒を合格させているのかが重要ということです。国公立大に合格させる以上に、私立大医学部に入学させるには生徒の家庭の経済面および、家庭環境も整っていることに加えて、学校自体の戦略、ノウハウが必要ですから」(同)
 
 合格ランキング全体を見てみると、国公立大43校中で首都圏にある高校は7校、私立大の場合は28校もランクインしている。
 
 なかでも豊島岡女子学園は国公立で22位、私立大の合格ランキングだとトップに君臨し、国際医療福祉大に23人、日本医科大に17人、順天堂大と昭和大、東邦大に13人ずつなど、139人が私立大医学部合格を勝ち取った。
 
 東京の女子校としては、桜蔭も医学部進学に強い。20年には、順天堂大に24人、東京慈恵会医科大は20人、慶應義塾大と国際医療福祉大にはそれぞれ17人が合格している。
 
 千葉県内では昨今、千葉大へ14人、東京医科歯科大に4人、私立大は国際医療福祉大に21人、順天堂大へ14人が合格するなど、渋谷教育学園幕張の医学部合格者数が飛躍的に伸びている。
 
【中部】
 国公立大ランキングに、東海、新潟、浜松北、滝、南山、旭丘、藤島、岐阜の8校がランクインした。静岡県立浜松北高等学校 進路指導部長の高林英次先生は、こう話す。

「静岡県は有力な関東、関西地域の大都市圏に比べ、優秀な生徒たちが自然と公立高校に集まる傾向が高いといえます。本校は、医学部受験向けのコースなどは設けていませんが、ひと学年400名の生徒のうち130名ほどが医療系の学部を目指します。学区内に国立大の浜松医科大学があり、自宅から通える医学部として進学率も高いです。地方の場合、一定の社会的地位を満たす仕事として、医師という職業は強い。もしかしたら、地域の風土などが反映されて、医学部を目指す生徒が多いのかもしれません」

 私立の東海、滝、南山は、私立大医学部合格ランキングにも名を連ねている。
 
 男子校である東海は、中部地方一円から優秀な男子生徒を集めているが、南山はカトリック系の中高一貫男女併学校であり、男女別々の校舎でそれぞれの授業が行われるため、実際は男子校+女子校である。

【関西】
 医学部人気が高い関西では、東京大に14人、京都大に24人、大阪大に11人が合格した灘を筆頭に、国公立大トップ10には洛南、四天王寺、東大寺学園、甲陽学院の5校がランクインした。
 
 このうち、中高一貫の女子校である四天王寺は、私立大ランキングでも2位。2014年には医師を目指す生徒のための「医志コース」を中学に設置した。独自の英語教育で学力を伸ばし、四天王寺病院の見学や卒業生でもある医師たちの講演会など、日ごろから医療に触れる機会を設けている。
 
 9位の東大寺学園は、1926年に勤労青少年のために東大寺の僧侶たちが東大寺の境内に夜間学校を開いたのが出発点だ。

【中国・四国】
 国公立大トップ40の6位にランクインした愛光は、70周年の記念事業として現在、新校舎・新キャンパスの建設が進む。21位の広島学院は広島大へ21人、私立大医学部にも30人が合格した。
 
 私立大のランキング35位の岡山白陵は、大阪医科大や川崎医科大ほか私立大医学部に45人が合格した。

【九州・沖縄】
 国公立大トップ40には、久留米大附設、青雲、ラ・サール、熊本、昭和薬科大附、宮崎西、鶴丸、大分上野丘の8校がランクインした。熊本と宮崎西、鶴丸、大分上野丘は県立高校だが、あとの4校は私立の中高一貫校だ。久留米大附設は九州大へ26人が合格した。
 
 私立大合格ランキングでも8位に入り、寮のあるラ・サールは、全国から成績優秀な生徒が集まることでも知られており、毎年東京大や京都大への合格者を出している。

(文・長谷川拓美/編集部)

※『医学部に入る2021』本誌では、医学部に強い238高校を一覧にして掲載。合格者数は高校への調査による人数。

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