母さん、昭和の映画好きたちが口にする『人間の証明』ってなんなんでしょうね?

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2020年12月05日 18:10  M-ON! MUSIC

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邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

【画像】観賞作品をあみだくじで決めるメンバー

自宅にいながらみんなで映画を楽しむ方法を実践中! それぞれの自宅で「せーの!」で観始めて、終わった直後にオンラインで感想会を展開中。今月は1977年の日本映画界に物議を醸した松田優作出演の奇作(?)『人間の証明』です!

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みんなの映画部 活動第70回[後編]
『人間の証明』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)
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問題のファッションショーシーンでハマが耳コピしていた話を語った[前編]も配信中

■「自首する」と言った息子に返した母親のセリフがとんでもなかった

ハマ あとね、全体的に見ると意外に出番は少ないんですけど、いちばんシビれたのはジョー山中さんの演技っすね。

小出 ね。『人間の証明』はジョー山中さんの映画と言っても過言ではないもんね。主題歌も歌ってるし。

ハマ 適役すぎてすごいっすね。映画の最初、ニューヨークロケのシーンに登場するんですけど、始まり方が最高じゃないですか。ジョー山中さんがジャンプして、タイトル出て、ワケわかんないけどカッケー! みたいな。

そのあと、めっちゃ長いファッションショーを観させられたと思ったら、エレベーターで突然想像もつかない事件が……(笑)。そこに異常にスタイルの良い刑事の優作さんが来て、みたいな。

小出 あははは。もうつるべ打ちだよね。あと岩城滉一さんのボンクラ息子っぷりもやっぱり飛び抜けてる。

ハマ あの息子が事件起こした時の、ファッションデザイナーのお母さん(岡田茉莉子)の乗っかり方も強烈でしたね。

小出 あははは。

ハマ あれ、すげえと思って。

──息子が「自首したい」って言ってるのに、母親が高飛びすることを推奨するという(笑)。

ハマ そうそう。「悪人なら悪人らしく覚悟決めなさい」「ニューヨークに行きなさい」って。

小出 あの理屈ヤバかったよね。

ハマ ヤバかった。誰も納得できない(笑)。

福岡 変だもんね、あの時のお母さん。

ハマ いちばん怖いシーン。

小出 「刑務所に入って罪を許してもらおうなんて甘い考えよ!」みたいな。いやいやいや、逆だろって(笑)。

福岡 怖い怖い。

ハマ 超面白い、あのシーンは。さっきこいちゃんやアッコびんが言ったように、『ジュラシックパーク』(活動第64回参照)で言うところの「セキュリティーが甘い問題」(昔の映画を今観ると設定がユルく見えてくる)みたいなツッコミ方ができるはずのポイントは結構あるんですけど。ただ、ご都合主義をねじ伏せるマンパワーというか演技パワーというか。それが強かったですよね、とっても。

小出 このフォーマットでさ、どんどん予算を抑えていったら火サスみたいになる。

ハマ そうそう。ラストは崖だし(笑)。

小出 土台は同じなんだよね。そこにいろいろ盛りつけていくとこうなるんだなあ。

福岡 でも最後の展開さ、めっちゃ駆け足になってる気がしたの私だけ?

小出 たしかにめちゃめちゃバタバタしてた。そんなに尺まとめなきゃいけないんだったら、ファッションショーのシーンなんとかしろよっていう(笑)。

■観た人全員が松田優作の顔力にしびれる

ハマ でもクライマックスの崖のシーンとかも、あの画の力すごくないですか?

小出 うん。終盤の演出にも、すごく良いなと思ったところがたくさんあって。例えば松田優作さんが、隠された因縁のあるニューヨーク市警の刑事(ジョージ・ケネディ)を撃ち殺そうとするじゃん。緊迫した空気が続いて、ついに「あ、撃っちゃった!」って思ったら実は……ていう。よくある演出なのかもしれないけど、松田優作さんの顔力というかさ、「もうこいつを撃つんだ」っていう決意が顔面から伝わってくるから、しっかり緊張してしまった。

例のお母さんがファッションコンペみたいな授賞式でスピーチに行く前のくだりのさ、「息子さんがニューヨークで死にました」って告げられて、ガーンって顔をした時に、たまたま会場の暗転が重なるっていう演出もすげえシャレてると思った。そのあとお母さんの名前が呼ばれて、茫然とした状態で立ち上がったら名札がポロッと落ちるシーンもすごかった。

ハマ ね。あの受賞のライトが当たってる時の優作さんの顔も結構ヤバいんですよ。真横にいる。

小出 良い顔してたよね。

ハマ 映ってなくていいっていうか、今だったら省かれるんだろうなっていう。当事者の女の人のアップとかにしがちなシーンを結構引きで撮ってて、ああいうとこも良かったですね。

──あのお母さんって今は華やかなファッション業界の名士なんですけど、元々は敗戦の痛手を受けてものすごく苦労した人で、とにかく生きることに必死だった。そのときにいろんな因縁の種が蒔かれるんですね。だから1977年当時はまだ“戦後”だったとわかる。

ハマ そう、それがすごい面白かった。戦争と地続きな“今”を描いている。その感触がリアルですよね。戦争って、別に昔話じゃないんだなって。

小出 そうだね。自分たちも二世代前とか前をたどれば、身内が戦争を体験していたんだから。

福岡 うん。

小出 日本も戦争していたんだっていう実感が濃く画面から漏れてくるのは、今の日本映画にはもうないものだったなって。

ハマ 久しぶりにうなる映画でした。

小出 楽しかった。

福岡 楽しかったです。

小出 映画の面白さって、別に理屈の整合性だけじゃないんだなと改めて。都合良い展開だなとか思っても、それを超えてグッとくる映画でした。音楽にも言えることだと思うけど、こういう説明できない感動って大切だね。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

このニュースに関するつぶやき

  • 私はリアルタイムで観ましたが、ラストに、え?これあり?と思ったほどの駄作でございました。角川映画ってこんなんか?と当時少年だった私は思ったものです。
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  • ホテルニューオータニとストウハ(ストローハット)が舞台でしたね。松田優作さんが凄く格好良かった映画ですɽ���ʴ򤷤����ؤ�OK
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