これって浮気になるの?「バツイチ」だと思っていた彼、実はまだ離婚できてなかった件

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2020年12月06日 10:11  弁護士ドットコム

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交際中の男性がバツイチだと思っていたら、まだ離婚できてなかった——。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられている。


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相談者は、最近交際を始めた男性から「1年前に離婚した」と聞かされていた。離婚話は男性の妻から出されたという。だが、その後話し合いを進める中、男性の妻は突然家を出て行ってしまった。



後日妻から離婚届が送られてきたため、もう関わりたくないと考えた男性はそのまま離婚届にサインし返送したという。この一連の経緯をもって、男性だけでなく、男性の両親も妻側の両親も離婚は成立したものと思っていたようだ。



しかし、その経緯を聞いた相談者は本当に離婚できているのか不安に思い、男性に確認するよう提案した。すると、不安は的中。実際には離婚が成立していなかったことが発覚したという。



相談者は、結果として既婚者と不倫していたことになるため、慰謝料等が発生するのではないかと懸念しているようだ。なお、結婚前提で付き合っており、現時点で別れることは考えていないという。



男性の妻から不貞行為があったなどと慰謝料を請求された場合、応じなければならないのだろうか。また、このまま交際を継続しても問題ないのだろうか。近藤美香弁護士に聞いた。



●「婚姻共同生活の平和」害していないなら、慰謝料は発生せず

――相談者は慰謝料の発生を懸念しているようです。



不貞行為は、民法709条の不法行為に該当すると考えられていますので、不貞行為をしたら、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。



もっとも、民法709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とあります。



すなわち、仮に他人の権利や利益を侵害したとしても、故意又は過失がない限り、損害を賠償する責任を負うことはないのです。



——故意・過失の有無が重要になるということですね。



今回のケースの相談者は、男性から「1年前に離婚した」と聞かされていたとのことなので、男性を独身と信じており、不貞行為をするつもり(故意)はなかったはずです。



したがって、結果的に不貞行為をしたとしても、相談者には故意がないため、原則として、慰謝料を支払う義務はないものと考えられます。



しかし、故意がなくても、男性を独身と信じたことについて、過失があった場合は、損害を賠償しなければなりません。



たとえば、少し気をつければ相手が既婚であるとわかるはずなのに、あえて気づかないようにしていたような場合は、過失があるとされ、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。



——相談者に「過失」はあったのでしょうか。



今回のケースにおいては、相談者が男性と交際を始めたのは最近であり、そのときに男性はすでに別居しており、男性自身のみならず、男性の両親や妻側の両親も、離婚が成立したと信じていたということです。



このような状況で、相談者が、男性が既婚であることを知るのは容易ではないと考えられます。



したがって、相談者が、男性が既婚だということを知らなかったとしても、相談者に過失はないと言えるでしょう。相談者に慰謝料を支払う義務はありません。



●妻の気持ちによっては、トラブル回避のためにも、離婚成立後の再スタートが無難

――相談者はこのまま男性との交際を続けるつもりのようです。



前述のように、相談者は、男性を過失なく独身だと信じていたといえるケースですので、その間に男性と関係をもったとしても、不法行為には該当しません。



しかし、相談者が、男性が既婚であることを知ってからの交際については、別途検討する必要があります。



——たしかに既婚者と知って不貞行為をすれば、今度は「故意がない」とは言えなさそうです。



この点、最高裁判所の判例によれば、婚姻関係が破綻した後に不貞行為をしたとしても、慰謝料の支払い義務はないものとされています。



今回のケースの場合、交際スタート時点で、すでに男性と妻が別居しており、双方が離婚に合意していたと考えられますので、婚姻関係がすでに破綻していたものと考えらえます。



したがって、相談者が男性を既婚と認識した後に、男性との交際を継続しても、法的な問題は生じないものと考えられます。



——では、交際を継続しても問題はないということですね。



今回のケースについては基本的にそうなります。しかし、男性の妻が離婚を拒否し、離婚届を提出するつもりがない場合は、男性が妻との離婚を成立させるために法的手続きをとる必要があります。



また、相談者が慰謝料を支払う義務がないと言える場合でも、実際に男性の妻から損害賠償請求訴訟を提起されてしまうと、相談者は、男性が既婚であると知った時点で、男性と妻の婚姻関係が完全に破綻していたこと等を主張立証しなければならなくなります。



――交際継続にはリスクもあるということですね。



妻が離婚に納得していない場合など、妻の気持ち次第では、交際を継続すると妻の感情を刺激し、妻から損害賠償を請求される可能性があります。



したがって、妻が離婚に納得していない場合などは、一度交際をやめ、離婚を成立させてから交際を再スタートするほうが、リスク回避につながると言えるでしょう。




【取材協力弁護士】
近藤 美香(こんどう・みか)弁護士
弁護士登録直後から大手弁護士法人にて500件以上の離婚・不倫慰謝料問題の解決に関与。夫婦カウンセラー資格保有。これまでのキャリアを生かし、独立後も引き続きこれらの問題に注力しています。
事務所名:エトワール法律事務所
事務所URL:https://etoile-lawoffice.jp/


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