ファーストサマーウイカの快進撃、売れっ子になるための「自己戦略」がスゴい

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2020年12月21日 17:00  週刊女性PRIME

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ファーストサマーウイカ(公式インスタグラムより)

「指原莉乃ちゃんとは、ハンパねぇやつ出てきたなって」――。そう語るのは小島瑠璃子。彼女が「ハンパねぇやつ」と呼ぶのは、ファーストサマーウイカのことである。

 今年1月、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)に出演し「すべらない話」を披露したウイカ。それをテレビで見た小島は「マジか、ここに出るか」と思い、指原とLINEで連絡を取り合ったという(『「任意同行」願えますか?』日本テレビ系、2020年10月15日)。

 かつて、破天荒な活動で知られたアイドルグループBiSに所属していたウイカ。当時はメンバーの1人としてファンからの熱い支持はあったものの、世間一般の注目度はあまり大きくなかったようだ。

 そんな彼女の転機となったのは、2019年1月に『女が女に怒る夜』(日本テレビ系)に出演したときのことだった。それまで1人でテレビに出ることはほとんどなかったという彼女。世間への実質的な“デビュー戦”となったその番組で、派手な見た目に切れ味鋭い関西弁でコメントする彼女は強い印象を残した。

 そこからほとんど時間をおかず、ウイカはまたたく間にテレビの出演本数を伸ばした。今では、テレビのレギュラー番組も複数担うほどに。そして、バラエティー巧者の小島・指原の両人をもってして、「ハンパねぇやつ」と呼ばれるまでになった。果たして彼女の人気の背景には何があるのだろうか。

“珍名”を芸名にしたワケ

 彼女を最初にテレビで見たとき、個人的に最初に目を引いたのはやはりその芸名だった。ファーストサマーウイカ。一際長い片仮名ネームは、彼女がテレビに出始めた際に番組MCが必ずといっていいほど触れるポイントだった。

 本人が繰り返し説明してきたように、その芸名は本名の「初夏(ウイカ)」を英語に直訳して連結させたものだ。「初=ファースト」「夏=サマー」な「ウイカ」。この命名には次のような理由があったと彼女は語る。

「今までに存在してない言葉を、造語を作らなければ勝ち抜けないと思ったんで。『ファーストサマーウイカ』って思いついて(インターネットで検索に)入れたときにゼロ件だったんですよ」(『人生最高レストラン』TBS系、2020年7月11日)

 ネットの海の中で他の情報に紛れないように。自分の名前で検索したときのヒット件数が、そのまま自分の活動の実績値となるように。他とわかりやすく差異化を図って生き馬の目を抜く芸能界を「勝ち抜ける」ように。世の中にない“珍名”を自身の芸名とした背景には、そんな戦略があったという。

 このように、ウイカはテレビで繰り返しタレントとしての生存戦略を語る。たとえば、彼女はテレビで活躍する芸能人を分析し、法則を発見したという。絵でデフォルメ化される存在、アイコン化できる存在、あるいは3つのワードで表現できる存在になれば、間違いなく売れる。

「たとえば、ピンクのベスト、ぴっちりの1:9分け、トゥースとかって言えば、もう(オードリーの)春日さんじゃないですか。そういうワードで、かきあげ前髪、関西弁、ヤンキーキャラって並んだときに、私が出るようになったらいいなと思って」(『あちこちオードリー』テレビ東京系、2020年7月7日)

 ウイカはリサーチし、実行し、改善する。「かきあげ前髪、関西弁、ヤンキーキャラ」をわかりやすく前面に出すだけでなく、出演番組によって髪型や眉毛の形も少しずつ変えているらしい。彼女はテレビの中でPDCAサイクルを回す。いや、彼女のキャラクターに合わせて表現し直すならば、PDCAサイクルをぶん回す。

的確な分析力

 SNSでエゴサーチを繰り返すという彼女は、「その番組の“民度”とかを測るのが好きで」とも語る。

「いろんな番組出させてもらうんで、ここの番組出たときに、すっげぇアンチが湧くとか、この番組は褒めてるコメントしか上がってこないっていうと、その番組の視聴者の民度がわかる。これに出たら損するとかも」(『お願い!ランキング』テレビ朝日系、2020年9月9日)

 新しい言葉を作る。わかりやすさを重視する。置かれた環境を分析し自身の露出を調整する。そんなウイカはとても戦略的であり、自己啓発的だ。普通の会社員にもセルフプロデュースが求められ、雇用されながらもフリーランス化が進んでいるように見える現在。他者のみならず今の自分からも常に差異化していくことが求められているようにも見える現在。そんな時代背景とも、ウイカの言葉は共鳴している面があるのかもしれない。

 実際、彼女はこう語る。

「ここ2〜3年の間で、自己啓発本とか出していきたい」(『あちこちオードリー』同前)

 ただし、彼女の自己啓発的な言辞は付け焼き刃ではない。下積みが長いウイカ。中学生のころから、大手を含む芸能事務所のオーディションを受け続けたという。ただ、なかなか結果に結びつかない。そんな日々の中で、彼女は戦略を立て始めたという。

「こういう人間は、ほどよいアクで残っていかなアカン」(『おかべろ』関西テレビ、2020年6月13日)

 彼女が所属していたアイドルグループBiSのオーディションでは、履歴書の自己PRの欄には、「アイドルというのは『哀しいドル箱」と書いて『哀ドル』ではないだろうか」と書いた。歌審査では『まんが日本昔話』のエンディングテーマ「にんげんっていいな」をブルース調で歌った。それが「ほどよいアク」だったかどうかはともかくとして、周囲からの差異化を図った彼女の狙い通り、関係者の目に留まった。結果、彼女は現在につながるアイドルとしてのデビューを勝ち取ることになる。

「下積みっていうのは、恵まれなかった時期という意味ではなくて。ホントに1個ずつ1個ずつ積み木のように積んでいったからこそ高くなった。その中で1つでも何か抜いてしまったり、なかったことにしてしまうと、今(の私)はないと思っています」(『不可避研究中』NHK総合、2020年5月30日)

 テレビなどのメディアで語られないものも含め、ウイカのタレントとしての戦略は下積み期間の“実地”の中で1つずつ学ばれ、体得されていったものなのだろう。そんな彼女が、きっかけを手にするとすぐテレビ番組を席巻するようになったのは、当然と言えるかもしれない。

 たしかに、「ハンパねぇやつ」がテレビに出てきた。ただ、まずは彼女が「ハンパねぇやつ」になったのだ。

<文・飲用てれび(@inyou_te)>

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