「少年たちは野球を楽しんでいるか」負担の大きい少年野球の保護者

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2020年12月29日 18:42  ベースボールキング

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「文武両道」を掲げる慶應義塾高校野球部を率いる森林貴彦監督の著書『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』。この本の中から少年野球に言及している部分を紹介いたします。今回は第一章の中から「少年たちは野球を楽しんでいるか/負担の大きい少年野球の保護者」を紹介します。



少年野球が抱える問題は、指導者だけではありません。保護者にかかる負担が大きいことも、子どもの野球離れに拍車をかけています。

保護者にたくさんの仕事を任せるチームは非常に多く、練習や試合には父母どちらかが必ず同伴し、駐車場係や、グラウンド周りの芝刈りまでさせられるケースもあるようです。つまり送り迎えだけでは済まないことが多く、こうした事情を考慮して、小学校の段階で「野球はちょっと……」と敬遠するケースが近年、特に増えています。送り迎えだけで済めば、練習が行われている2時間ほどの間に、保護者は買い物を済ませたり、お茶を飲みに行ったりできるため、その違いは本当に大きいと思います。ここ数年で言えば、サッカーだけでなく、バスケットボールやラグビーなども人気の球技となっているため、野球界はもっと危機感を持たなければいけません。

こうした慣例は野球特有のもので、なぜ、他競技には見られないかと言えば、野球界が変わるための努力をしていないからに過ぎません。単純にそれだけです。野球だけ保護者の負担が大きく、他の競技では必要のないことに、合理的な理由があるわけがありません。
「いままでやってきたのだから、いまさら何を変える必要があるの?」「これでうまく回ってきたのだから、何も変える必要がない」。理由を問えば、大半はこのような意見が返ってくるでしょう。しかし、いまになって気付けば、野球界の中では当たり前だったことが、他競技ではまったく非常識となっていて、完全に取り残されてしまっている状況です。

ここから脱却するためには、野球を外から見る客観的な視点がなければいけません。私は他競技の指導者とも頻繁に会うようにしていますが、それはやはり野球界の常識だけに染まらないようにするためです。例えば「なぜ、野球はそんなにも長時間の練習を課すのですか?」と問われたときに、「この世界の常識ですから」と答えてしまえば、それはただの思考停止です。なぜ野球では実現不可能になっているのかを考え、いかに無駄を省くかまで考えを巡らせなければ、何の進歩もありません。また、子どもをもつ学生時代の同級生と話をしても、「野球をやらせるのは二の足を踏んでしまう」という話はよくされます。原因はここまで出てきた、保護者の負担、坊主頭、ケガのリスク、指導体制の古さ……。これだけのマイナス要因がそろえば、子どもにやらせたくないと思って当然です。指導の現場にいると、高校野球だけでなく、少年野球にもまだまだ変えていかなければならないことがたくさんあると、本当に実感します。

(『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』森林貴彦監督/東洋館出版社)

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「少年たちは野球を楽しんでいるか」
・小学生から酷使される選手の肩」
・負担の大きい少年野球の保護者
・加速する小中の野球離れ
・子どもの自立を妨げる親の押し付け

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