木村拓哉・中居正広・森の「体育系」、新しい地図の「文化系」、元SMAPの“2020”

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2020年12月30日 20:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

SMAP

 稲垣吾郎がベートーベンを演じる舞台『No.9−不滅の旋律−』が12月13日に幕を開けた。2015年、18年に続く再々演だ。

「新しい地図」アート面で活躍

 彼はまた、NHKの『ベートーベン250』プロジェクトでアンバサダーも務めている。この大作曲家の生誕250年を記念する企画の案内役として、さまざまな番組に登場。交響曲『運命』の冒頭を実際に指揮してみた際には、

全然、僕が聴く『運命』と違うんですけど。(略)すっごくリズムが難しいですね」(10月18日放送・Eテレ『クラシック音楽館』)

 と、苦笑したりしながら、ファンの立場でベートーベンの魅力を伝えた。

 かと思えば、草なぎ剛はバレエをモチーフとした映画『ミッドナイトスワン』に主演。しかも、トランスジェンダーの役とあって、話題を集めた。

 そんな草なぎを、香取慎吾はファッションで応援。一昨年に立ち上げたファッションブランドで『ミッドナイトスワン』とのコラボTシャツを発表した。インタビューでは、こんな話もしている。

リモートワークが続いて服が売れない状況だからこそ、あえて服を作りたいとも思う。(略)世界中が模索しているからこそ、もしかしてチャンスなんじゃないかと」(WEBサイト『リアルサウンド』)

 また、雑誌の表紙画を手がけたりもした。

 というように、今年、新しい地図の3人はアート面での活躍が目立った。これはおそらく、偶然ではない。それぞれの適性もさることながら、新しい地図が生まれた経緯にもじつは合っているのだ。

 なぜなら、アートには勝ち負けより自分らしさを優先でき、多様な個性を生かせるイメージがある。SMAPが解散したとき、彼らは結果としてメジャーシーンでの活動が難しくなったが、そのぶん、ネットなどを活用して、以前より個性的な活動をするようにもなった。草なぎがトランスジェンダーを演じたのも、そのひとつだろう

 そんな経緯と独立後の姿に、戦うマイノリティーというものを見て共感するファンがいる。実際『ミッドナイトスワン』はテレビでの宣伝不足をネットでの口コミが補うかたちでロングランを記録した。

中居、木村は体育会っぽい活躍

 では、彼らに遅れること約3年、円満に独立したとされる中居正広はどうだろう。こちらは相変わらず多くのバラエティー番組で見ることができるが、なかでも野球関係の仕事は楽しそうだ。ドラフト会議の日には『ドラフト緊急生特番!お母さんありがとう』(TBS系)先日は『中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞2020』(フジテレビ系)に出ていた。

 珍プレーといえば、その名ナレーションで世に出たのがみのもんた。この前身番組で司会を務めたこともある。中居が精力的にバラエティーをやるのは、全盛期のみのにも通じるものかもしれない。政治から社会問題、女性バラドルいじりまで幅広くこなし、中居はオヤジ世代の代弁者的なポジションにも近づきつつある。

 そして唯一、ジャニーズに残っているのが木村拓哉だ。今年はドラマで役者としての底力を見せつけた。『教場』(フジテレビ系)では警察学校の鬼教官、『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日系)では丸腰のボディーガード。また、3年ぶりに車のCMも始まった。警察、警護に車という男っぽい路線を展開してきたわけだ。

 そういう意味では、中居も木村も体育系寄りに見える。これもまた、必然なのだろう。体育会的な感覚ではタテ関係が重視されるから、木村は事務所に残り、中居も仁義を通すかたちで独立したのである

 つまり、新しい地図は文化系、中居木村は体育系という図式が今年は強まったわけで、これはちょっとさびしいことでもある。両者の距離がより広がった気もするからだ。

もうひとりの「元SMAP」森の活躍に……

 ところが、11月、サプライズな出来事が起きた。24年前にSMAPを脱退してオートレーサーになった「究極の体育系」森且行の日本選手権初優勝だこれを祝して、新しい地図の3人も、中居も木村もコメントを発表。木村の言葉は、

それぞれの選んだ道で、それぞれがつかむもの。今後も健闘を祈ります

 という短いものだったが、それでも画期的なことだ。ジャニーズは森の決断をよしとせず、10年以上にわたってメディアで彼の話や映像を出すことを禁じるなどしてきた。木村としては精一杯の祝意の表明だったのだろう。

 ちなみに、森はCDデビューから5年弱で脱退したが、その果たした役割は大きい。たとえば、SMAPというグループ名は「Sports Music Assemble People」を略したもので「スポーツと音楽を融合させる人々」という意味がこめられている。その両方において、最も優れていたのが森だったのだ。

 その能力はSMAPの出世番組『夢がMORIMORI』(フジテレビ系)でも発揮されたし、さらに彼は料理も得意だった。これが『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)のビストロコーナー誕生につながるわけだ。いわば、なんでもこなせるアイドルグループ・SMAPの源流を作ったのが森だったのである。

 そんな森がいた時代のSMAPで思い出すのが、チーマーとのケンカ事件だ。'09年に放送された『SMAP☆がんばりますっ!!』(テレビ朝日系)によれば、車での移動中、チーマーたちに絡まれるトラブルが発生。森が先頭に立って小競り合いになったものの、稲垣だけは車内にこもり、一部始終をメモしていたという。

 いかにも「究極の文化系」稲垣らしい話だが──。じつは冒頭に紹介した舞台の公開稽古の日、彼は取材陣から「今年を漢字一文字で表すとしたら?」と聞かれ「森!」と答えた。

元、一緒に頑張っていた森くんが優勝したことがうれしかったですね

 というのが、その理由だ。

 そう、いろいろあったとはいえ、文化系と体育系とか関係なしに、稲垣と森、いや、元SMAPの6人はつながっているのだ。

 森もいずれはレースを引退するだろうし、5人の置かれた状況だって変わっていく。もしかしたら、5人はもとより、6人のSMAPだっていつかまた見られる日が来るのでは ──。

 そんな期待も抱かせる、元SMAPたちの2020年だった。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。

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