韓流に負けた蜷川実花『Followers』、『今際の国のアリス』の可能性ーーNetflix国内ドラマの課題とは?

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2021年01月01日 16:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2020年のNetflix配信の国内ドラマを振り返る。

 2020年の2月から、Netflixの視聴画面で「国内視聴ランキング」トップ10が表示されるようになった。上位を独占しているのは『鬼滅の刃』『呪術廻戦』といった「週刊少年ジャンプ」(集英社)の人気漫画をアニメ化したものと、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』といった韓流ドラマだ。

 特に『愛の不時着』は大ヒットし、Netflixの日本法人が12月14日に発表した「2020年、日本で最も話題になった作品TOP10」の1位となった。ポン・ジュノの映画『パラサイト』がアメリカのアカデミー賞の作品賞を受賞し、BTS(防弾少年団)を筆頭とするK-POPが世界中を席巻している今、韓流はブームを超えて日本でも完全に定着したと言える。『愛の不時着』のヒットもそんな流れの中に起こった出来事だが、人気の着火点がテレビでなくNetflixだったことに、時代の変化を感じる。

 国内でサービスをスタートした2015年当初は、映画監督のデビッド・フィンチャーと俳優のケビン・スペイシーが製作総指揮を務めた『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のような豪華な海外ドラマが観られることが、最大の売りとなっていたNetflixだが、国内加入者数が500万人を超えた現在は、話題のアニメと韓流ドラマをいち早く見るためのプラットフォームとして定着しつつある。

 これは国内の需要に適応した結果だが、 ショックだったのは、かつて月9で放送していたドラマのような、女性の憧れを喚起する映像が、韓流ドラマで展開されていたこと。SFやファンタジーの超大作なら日本のドラマと別モノと割り切れるが、韓流ドラマの展開は、かつて日本が得意としたトレンディドラマ的なものである。今はその役割を韓流ドラマが担っているのだろう。

蜷川実花『Followers』と韓流ドラマ『スタートアップ:夢の扉』

 写真家で映画監督として知られる蜷川実花が今年監督したNetflixドラマ『Followers』と比べると、その変化がよくわかる。

 女性カメラマン・奈良リミ(中谷美紀)と女優の卵の百田なつめ(池田イライザ)を中心に、東京で生きる女たちを描いた本作は、蜷川が監督した岡崎京子原作の映画『ヘルタースケルター』のように、おしゃれでポップな東京の風俗が散りばめられているが、80〜90年代のサブカルチャーで“おしゃれ感”が止まっているため、豪華だが古臭く見える。

 SNS等、現在の風俗も一応描かれているのだが、東京で夢を叶えようと悪戦苦闘する若者を見せるパートにあまり魅力がない。これは作り手の責任というよりは、今の東京に「憧れ」を喚起する力がないからだろう。

 Netflixで配信されている韓流ドラマと比較すると、それがよくわかる。たとえば『スタートアップ:夢の扉』は、現在の韓国に生きる若者たちの物語を描いているが、やっていることは80〜90年代のトレンディドラマと同じように見える。だからこそ、 韓国という国の持つ勢いを思い知らされ、このジャンルで勝負するのは無理だと感じた。

 では他ジャンルならどうか? 『呪怨:呪いの家』は、ホラー映画『呪怨』の前日譚を、三宅唱監督がドラマ化したものだ。80年代末から90年代にかけて起こった猟奇殺人の背後に、ある家で起こった惨劇があるのではないか? という描き方は、海外ドラマ『ウォッチメン』(HBO)にも通じるアプローチで、ホラー映画を歴史的な事件とつなげるというアプローチ自体は悪くなかった。

 しかし、残虐な描写がひたすら連鎖するという展開は単調で、良くも悪くも「投げっぱなし」の終わり方なので、散りばめられた伏線が回収されるミステリー的な面白さを期待していると、肩透かしを食らう。昨年に作られた園子温監督の単発ドラマ『愛なき森で叫べ』と同じく、エロ・グロ・ナンセンスの見世物小屋でしかない。

 『Followers』も『呪怨:呪いの家』も、昨年話題になったアダルトビデオ業界の黎明期を描いた『全裸監督』のヒットを受けて作られていることは間違いないだろう。

 どの作品も80〜90年代に対するノスタルジーが強く感じられると同時に、過激な暴力やエロがウリとなっているが、即物的な刺激だけで終わっているというのが正直な印象だ。

『今際の国のアリス』に期待

 『Followers』『呪怨:呪いの家』に比べると12月10日に配信された『今際の国のアリス』には可能性を感じる。

 本作は、無人の街となった東京に閉じ込められた青年たちが謎の「げぇむ」に巻き込まれる物語。00年代に国内ではやったデス・ゲームもので、漫画やアニメでは手垢のついた題材だが、『GANTZ』や『キングダム』等のアクション大作映画を撮った佐藤信介が監督なだけに、東京を舞台にしたアクションドラマとしてクオリティの高い作品となっている。

 実写ドラマでありながら国内ランキングの上位にも食い込んでおり、シーズン2の制作も決定した。この映像が作れるのなら、アニメの専売特許となっている『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』といったジャンプ漫画を、実写ドラマで見られるのではないかと期待してしまう。

 すでにNetflixでは、90年代に大ヒットした「ジャンプ」のバトル漫画『幽☆遊☆白書』(冨樫義博)の実写ドラマ化が発表されている。制作は『今際の国のアリス』と同じROBOTであるため、クオリティは問題ないだろう。

 今後、Netflixの国内ドラマに可能性があるとすれば、ジャンプ系バトル漫画の映像化かもしれない。 
(成馬零一)

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  • 韓流に負けた蜷川実花←普通にテレビでやってないからだろ。
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