障害者アートの第一人者からセクハラ、女性2人訴え 被告の男性「争う」

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2021年01月12日 18:42  弁護士ドットコム

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障害者の芸術文化事業の第一人者として知られる社会福祉法人の男性理事長から、長年にわたりセクハラやパワハラを受けてきたとして、男性のもとで働いてきた女性らが、東京地裁に裁判を起こした(2020年11月13日付け)。


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第1回口頭弁論(1月14日)を前に、原告の女性らが1月12日、会見で「社会全体で考えるべき課題」と訴えかけた。被告側は「裁判で争う」とした。



●10年以上のセクハラ

訴えられたのは、障害者支援の社会福祉法人「グロー」(滋賀県)と、同法人理事長の北岡賢剛さん。



長年にわたり、性暴力やハラスメントを受けてきたとして、グロー元職員の鈴木朝子さん(仮名)と、北岡さんが理事を務めていた社会福祉法人「愛成会」(東京都)の幹部・木村倫さん(仮名)が、慰謝料など計約4200万円の損害賠償を求めて提訴した。



鈴木さんは、グローに2012年に入社し、2019年8月に退職。木村さんは、愛成会に入社したのち、2015年からは幹部として法人運営にもたずさわっている。



訴状などによると、鈴木さんは約7年間、木村さんは10年以上におよぶセクハラ・パワハラ行為を北岡さんから受け続け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が続いているとしている。



タクシーの車内で体を触られたり、ホテルで服を脱がされるなどの行為があったという。



原告代理人の笹本潤弁護士は、北岡さんには「上司としての立場を利用し、長期にわたり、タクシー内で体を触ったり、ホテルでわいせつな行為をしたことが、民法上の不法行為にあたるとして、損害賠償を求めるもの」とする。



グローを被告とした理由は、事業主としての「安全配慮義務違反」などを根拠とする。



●福祉業界にはびこる悪習

鈴木さんは、福祉業界において「ハラスメントを受けても、受け流すことがプロである」との慣習があると指摘。そのような環境が、性暴力とハラスメントが生まれやすいと話した。



本件訴訟を通じて「福祉業界には、組織のありかた、人を大切にすることを改めて考えてほしい」としている。



木村さんは、北岡さんに対して「なぜ何も表明されないのですか。私たちの尊厳が軽視された理由を教えてください」と呼びかけた。



●グロー「ハラスメント対策委員会をつくる」

グローは12月18日、「一連のハラスメント報道に対して」と題した声明を発表。



訴訟を受けて「当方の主張を的確に行い、適切かつ真摯に対応」するとの考えを示した。



「当法人では、これまでハラスメント規定を制定するなどして、ハラスメントの無い職場環境の整備に努めてきたところですが、今回の提訴を受けて、ハラスメント対策委員会を設け、改めて当法人におけるハラスメント対応について再点検を行っている」としている。



さらに、1月12日の会見終了後、グローおよび北岡さんの広報担当者は、編集部の取材に「裁判で争っていく方針。真実を明らかにしていきたい」とコメントした。


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