『東京喰種:re』生き延びた金木は幸せなのか? 物語に込められたメッセージを読み解く

0

2021年01月13日 09:01  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『東京喰種:re』

 2011年から2014年まで「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた石田スイによる『東京喰種トーキョーグール』。2014年にはアニメ化、2017年には実写映画化もされた人気作品である。その続編となるのが『東京喰種:re』だ。


関連:【画像】『東京喰種』の金木


 人間以外に、人を喰らう喰種(グール)が蔓延している東京。主人公の金木研は事故をきっかけに突如人間から半喰種にされてしまう。人間と喰種の間で揺れ動きながらも、大切な人を守るために戦う金木。しかし、喰種対策局(CCG)の特等捜査官・有馬貴将との対峙で敗れ、その後は行方不明となる。


■生き延び、居場所を与えられた金木


 『:re』で改めて登場した金木は「佐々木琲世」(ハイセ)としてCCGにいた。それも一等捜査官として喰種の能力を持っている「クインクス」と呼ばれる4人の捜査官をまとめる立場としてである。髪色に少し変化があるものの、ビジュアルは金木そのままだ。中身はというと、読書は好きなままだが、少し嗜好が変わっており、明るく、冗談が好きで……とまるで別人のよう。


 周りからは人間として扱われているが、実際は喰種であり、暴走し、制御が効かなくなった際はSSレートの喰種として駆逐されることになっている。


 金木のころの記憶がないハイセは、4人のクインクスと共に暮らし、面倒を見て、彼らを大切に思っていた。また、上等捜査官でハイセの教育係を務める真戸暁(アキラ)を母親のように、そしてかつて相対した有馬を父のように慕っていた。有馬の指導によって体術においても優れた能力を得ており、『:re』での金木は以前よりも圧倒的に“人間として”戦う力をつけているのが分かる。そしてその力で、今は喰種を駆逐する側にいる。無用な殺生は避けているが喰種対策局にいる限り、立場としては喰種の敵だ。


■「家族」を与えられたことで変わる生への意識


 ハイセは優しい。金木であるときも優しかったが、ハイセは前向きな優しさだ。共に戦おうとする。何かあれば必ず守る。それぞれが自分の身を守れるようにしっかりと稽古の相手もする。クインクスたちから反発を受けても笑顔で受け止める。自分にとってアキラや有馬が親ならば、自分はクインクスの親や兄になろうとしていた。そんな「今」に幸せを感じていたが同時に、今の「佐々木琲世」としての自分の存在にも危うさを感じていた。


 ハイセに過去20年間の記憶はない。つまり、金木研としての記憶がないわけだ。しかし、閉じ込められたかつての自分に、今の自分の存在を脅かされ続けている。過去を思い出してしまえば、今の自分は同じ場所にいられないだろうし、その時は遠くないという予感を常に抱いていた。


■守るものが増えたことで金木は生きなければならなくなった


 金木の「ハイセとしての穏やかな生活」は続かなかった。かつての自分と対峙することで、背負うべきものが増えていく。性格も変わり、金木のころより表情は暗く、冷徹になっていった。やがてハイセはCCGを去り、喰種側へと戻る。


 「人間」との関係を新たに構築したハイセは、喰種と人間を相対するものにしたくないという気持ちが芽生え、常に心が揺れていた。


 そんな中で、ハイセは喰種のトーカと結ばれ、人間と喰種の戦いが激化する中で子どもを授かる。喰種たちの命、かつて心を通わせた人間たち、そしてこれから生まれてくる「家族」。かつて死にたがっていた金木は、次第に「生きなければならなくなって」いく。たとえ、それが多くの人たちの犠牲の上に成り立っていたとしても。


 喰種と人間は捕食する側とされる側の関係だ。それが金木研という半喰種の存在によって、最終的には共存の道を歩み始める。


 金木はずっと死にたかった。それでも生き続けることで、ひとりぼっちだった彼は家族と仲間を得た。守る存在が増えた。それは金木にとって幸せなことなのか、それとも重荷なのか。


 「生きていればいいことがある」とはなんとも平凡な言い回しだ。本当は生きていれば辛いことも幸せなこともある。誰かに必要とされるときも来る。生き続けなければ、それを知ることもできない。 『東京喰種:re』には、そんなメッセージが込められているのかもしれない。


(文=ふくだりょうこ)


    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    オススメゲーム

    ニュース設定