ミヤコ蝶々さん、長男が“波乱の人生”を独占告白「本気で惚れたのは三遊亭柳枝だけ」

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2021年01月13日 17:00  週刊女性PRIME

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ミヤコ蝶々さんと森田健作の貴重なツーショット

 2020年11月30日よりスタートした、NHK連続テレビ小説『おちょやん』。松竹新喜劇で活躍し、「浪花のお母さん」と呼ばれた女優の浪花千栄子さんをモデルとしたヒロインの生涯を描く作品だ。

 だが、もうひとり、「浪花のオカン」として親しまれた女優がいた。いや、むしろこちらの女性のほうが記憶に残っているのではないだろうか。

 大阪はもちろん、全国区でも女優、そして天才芸人として知られたミヤコ蝶々さん、その人だ。

 7歳から芸に生き、戦中戦後と時代に翻弄され、恋を糧にした蝶々さんの生きざまは、彼女の存命中から幾度となくドラマや舞台となり、いずれも大反響を呼んできた。

 女性が自分らしく生きることがまだ難しかった時代。そんな中、人間の喜怒哀楽を生業としながらも、己の感情とのせめぎ合いに紆余曲折しながら前に歩み続けた彼女の物語は、時を越えて人々の胸を打つ。

 そんな蝶々さんに魅せられたひとりが、女性漫画誌を中心に活躍された人気漫画家の長崎さゆりさんだ。10年ほど前、蝶々さんの生涯を、美しく力強い珠玉の作品として形にした。しかしその後、闘病生活に入り、入退院を繰り返すことに。そして、同作品の改訂版を週刊女性に託した後、2020年9月に58歳で逝去された。

   ◆  ◆  ◆

 死後もなお、まさしく蝶のように魅力をふりまき続けるミヤコ蝶々さん。素顔はどのような女性だったのだろうか。

 そんな蝶々さんを、亡くなるまで傍らで見続けたひとりの人物がいる。蝶々さんとの“関係”がコロコロと変わり、それでも寄り添い続けた男性は、蝶々さんの実の息子だった。しかも、それが正式に判明したのは、蝶々さんの死後、数年たってのことだった─。

「あのオバはんには、本当に苦労させられましたわ……」

 こう語るのは、大阪で建設関連の会社を経営する日向利一さん(76)だ。長年、蝶々さんの父親・英次郎さんの養子、つまり年の離れた義弟といわれてきた利一さんだが、蝶々さんの死後、DNA鑑定で実の息子と判明した。上背があり、がっしりとした体形の利一さん。鼻と口元に、どことなく蝶々さんの面影がある。

 蝶々さんのことを「オバはん」と、ぶっきらぼうに語るが、そのそっけなさに、親しい人間だからこその愛情が垣間見える。

「物心ついたときからお父ちゃん(英次郎さんのこと)とオバはんと、柳枝と暮らしとったんです」

 小さいころは、蝶々さんのことを“おかあちゃん”と呼んでいた記憶があるという利一さん。柳枝とは、蝶々さんの恩人であり、最初の夫となる芸人の三遊亭柳枝さんのことだ。

 後ろ盾となる師匠がいないのに、売れっ子になってしまった若き蝶々さんの手助けをしてくれたのが、柳枝さんだった。蝶々さんが柳枝さんと恋に落ちた際、柳枝さんには妻子がいた。不倫の果てになんとか一緒になることが叶ったものの、まもなく柳枝さんに複数の女性の存在が発覚。蝶々さんは再び茨の道に舞い戻ることになる。

「(蝶々さんは)昭和18年の日記に、柳枝の心をなんとかつなぎとめようと、『柳枝との間の子どもが欲しい』と、何度も書いているんです。で、(9月27日に)その日記が止まって約10か月後が、私の誕生日(7月30日)なんですよ」(利一さん)

おとなしくさせるために“ヒロポン”を

 当時は戦時中であり、売れっ子芸人である蝶々さんが略奪愛の末に子どもを産んだとなると、世間からの非難は必至。そのため、妊娠・出産を必死に隠したのではないか、と利一さんは語る。

「でも、柳枝は、子どもがあんまり好きじゃなかったんやね。私もあまり可愛がられた覚えはないし、子どもができたからオバはんにも興味がなくなったんやと思う」

 終戦後、やはり柳枝さんの女性関係が原因で、結局ふたりは破局を迎えた。ほどなくして蝶々さんは弟子の南都雄二さんと付き合い始めるようになる。

そのころから蝶々は、私のことを人に紹介する際“もらいっ子や”“弟や”とコロコロ変える。いったい俺はなんなんやと。そのうちお母ちゃんとは呼べなくなって、“オバはん”か弟子たち同様に“センセイ”と呼ぶようになったんです」

 柳枝さんと別れて南都雄二さんとコンビを組み、漫才を始めたものの、前のようにはうまくはいかない。そして、まだ柳枝さんを忘れられない蝶々さんは、当時は合法であった覚せい剤の一種であるヒロポンにハマるようになる。

「注射器を持ってるオバはんに『なにしてんの』と聞くと『ヒロポンや』とニヤリと笑う。このときはまだ正気なんやね。でも薬が切れると、『死ぬ死ぬ』と、包丁やかみそり持って暴れだす。それを雄二さんらと布団をかけて静かになるまで押さえつける、と。おとなしくさせるために、お父ちゃんが(蝶々さんに)またヒロポンを打つこともあった。

 このままでは死んでしまうと仕事を休ませ、入院させて20日くらい薬を断たせて、なんとか抜け出せたんですわ」

 その後、雄二さんとは夫婦漫才でテレビ出演を皮切りに一斉を風靡するのだが、神は再び気まぐれを起こす。雄二さんのたび重なる浮気のため、またまた蝶々さんはひとりになるのだ─。

「本気で惚れたのは柳枝だけやった」

「蝶々はのちに『私が本気で惚れたのは、柳枝さんやった。上背のあるところと、寝たときにこんもり盛り上がっている胸板の厚さ、無口でとにかく優しいところがほんまにたまらんかった』と言ってました。

 柳枝は、女性を口八丁手八丁で口説くタイプではなく、その場にいるだけでよろめかせてしまうような、色気のある男だったそうです。あのオバはんが、柳枝の前ではとにかく、か弱いひとりの女になってしまうのだ、と」

“ミヤコ蝶々”と本名の“日向鈴子”のギャップに悩んでいた蝶々さんの素顔もつぶさに見続けてきた利一さん。

「オバはんは、糖尿病を悪化させて当時の妻に見放された雄二さんと、幼いころにいっとき一緒にいただけの父・英次郎の妻と、ふたりの最期の面倒を見てやったりした。“そうしてやるのがミヤコ蝶々の生き方やないか”と」

 いろいろ苦労はさせられてきたが結局、今は感謝と尊敬の念しかない、と利一さん。

「まともに学校に行ってないはずなのに、いろんなことを知っていた。人一倍思いやりと気遣いがある人でしたね。よく『学つけなあかん。大学行きなはれ』と言われていましたが、オバはんのそばにいるほうがずっと勉強になると思って、大学には行かんかった。でも、オバはんの威を借りて仕事をもらったりするのはイヤやったから、芸の道には行かず、自分で独立して会社を興しました」

 その昔“おかあちゃん”と呼ばれていたはずの蝶々さんは、しっかり自立した利一さんに、なんやかんやと頼るようになる。利一さんは、蝶々さんの個人的なマネージャーだった。個人事務所、晩年に手がけた演劇スクールの運営にもかかわってきた。

「芸の道しか知らんから、金勘定ができない。入ってきた金は全部使ってしまう。演劇スクールを作ったときも、テレビで   あのオバはんは『理事長(利一さん)が使い込んだからクビにした』なんていいよった。もう、むちゃくちゃですわ。

 そんな感じなのに、会うと『利一、肩痛いんで按摩して』『足按摩して』と甘えよる。私は今でこそ、こんなにしゃべりよりますが、オバはんが生きてたころは無口やったもんね。いろいろ言い返されたらめんどくさいから」

 上背もあり、がっしりとした体形。そして無口。ということは、蝶々さんは利一さんに、永遠の思い人である柳枝さんを重ね、あの時代にできなかったことをねだっていたのではないだろうか─。

「オバはんは、死ぬ数年前から、『利一、あんたに言っとかなくてはならんことがあるんや……』といっては口ごもっていた。結局、それが何かは聞けなかった。

 言ってほしかったですけどね。長くそばにいたから、何を言いたかったのかなんとなくわかるんですが……」

 長く人々から慕われ、愛された浪花のオカンは、隠し続けた息子にも愛されたオカンだったのだ─。

(取材・文/木原みぎわ)

 芸能界の“息子”が証言 森田健作(千葉県知事・俳優)

「『健作と私は似ているところがある』と可愛がってくれた」

 先生(蝶々さんのこと)との思い出は、語りだしたら止まらないですよ。最初にお会いしたのは19歳のデビューしたてのころで、親子の役をやらせていただいたのが、お付き合いの始まりです。

 うちの母親と同じ年だったんですよ。芸能界のお母さんとして、芸事もいろいろ学ばせていただいたし、公私ともにお世話になりました。ハワイやロサンゼルスなど、何度も一緒に旅行に行きましたよ。先生のご自宅には、私の部屋みたいになってしまった客間もあったほどです。

 子どもが生まれた際には、名付け親をお願いしました。私が目をケガしたときに、とても心配してくださいましてね。「私が手を引いてやるからな。でも、どっちが先に手を引かれるようになるかな」なんて、冗談まじりにおっしゃっていました。

 先生は“義理と人情”の人。僕もそれを信念として生きてきたから、性格や考え方が『似ている』と、可愛がってくれたんでしょうね。

 私が衆議院議員だったころお亡くなりになる前に病院にお見舞いに行ったんですよ。しゃべることが少しつらそうだったけど、普段と変わらなかった。“じゃあね”って、手を振ってる姿が最後になってしまいました。今でも思い出しますよ。

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