今後のドラフト戦線にも影響? オリの「28歳・子持ちルーキー指名」に見る新たな可能性

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2021年01月15日 08:42  ベースボールキング

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トヨタ自動車・嘉陽宗一郎投手 [写真提供=プロアマ野球研究所]
◆ “異例の指名”で各球団の戦略に変化も…?

 2021年も年明けから早くも半月が経過。プロ野球もオフの出口が徐々に近づいてきており、各地でルーキーたちによる「新人合同自主トレ」もはじまっている。

 2020年のドラフト会議では、支配下で74名、育成で49名の合計123名が指名を受けた。その中で最もサプライズと呼べる指名だったのが、オリックスの6位・阿部翔太(日本生命)ではないだろうか。


 酒田南高から成美大(現・福知山公立大/野球部は2019年に廃部)を経て、2015年から社会人野球の強豪・日本生命でプレー。入社3年目の2017年にはドラフト候補として注目を浴びたが、NPBへの扉は開かなかった。

 以降もチームの主戦として活躍を見せていた一方、やはり年齢がネックとなってかドラフトでその名が呼ばれることはなく…。それでも、28歳を目前にした昨年の秋、ついにオリックスから指名が。プロ1年目を28歳で迎える“妻子持ちのオールドルーキー”として、大きな話題を集めた。


 大学を卒業して社会人野球に進んだ場合、指名が可能となるのは2年目以降。大半がいわゆる“解禁”と言われる2年目に指名を受けてプロ入りしていく。

 ちなみに、過去5年間に大学卒3年目以降に指名された選手が、社会人でプレーして何年目に指名されたかを並べてみると、以下のようになる。


<3年目>
・平井克典(Honda鈴鹿/16年・西武5位)
・森原康平(新日鉄住金広畑/16年・楽天5位)

・大下佑馬(三菱重工広島/17年・ヤクルト2位)
・大城卓三(NTT西日本/17年・巨人3位)
・福田周平(NTT東日本/17年・オリックス3位)
・谷川昌希(九州三菱自動車/17年・阪神5位)

・大貫晋一(新日鉄住金鹿島/18年・DeNA3位)
・森脇亮介(セガサミー/18年・西武6位)

・岡野祐一郎(東芝/19年・中日3位)
・瀧中瞭太(Honda鈴鹿/19年・楽天6位)


<4年目>
・有吉優樹(九州三菱自動車/16年・ロッテ5位)
・飯田大祐(Honda鈴鹿/16年・オリックス7位)


◆ 意外に活躍?“遅咲き”の選手たち

 過去5年で阿部を入れても13人。1年あたりに直すと3人以下となり、4年目以降となると阿部以外では3人しかいない。

 また、この他に高卒で8年プレーした荒西祐大(Honda熊本/18年・オリックス3位)と、大学を中退して社会人で6年プレーした奥村政稔(三菱日立パワーシステムズ/18年・ソフトバンク7位)という例もあるが、いずれも26歳となる年の指名だった。阿部の「大学卒6年目」での指名というのが、いかに珍しいことかよく分かる。


 ただし、この顔ぶれを見てみると、プロ入りした年齢は高いとはいえ、一軍で戦力になっている選手が多い。

 森原や平井、森脇はブルペンに欠かせない存在となり、大貫は昨年チームトップの10勝をマーク。野手では、大城が厳しい競争の中で正捕手の座を掴みつつある。


 今回の阿部も、彼らのようにルーキーイヤーから一軍の戦力になる可能性は大いにある。

 社会人の舞台で2019年に公式戦で19試合に登板、防御率2.31と見事な結果を残した点を踏まえれば、オールドルーキーとして活躍できる素地を大いに持っていると言えるだろう。


◆ トヨタ自動車・嘉陽宗一郎が注目株

 さらに踏み込むと、阿部がプロで活躍すれば、今年のドラフト戦線にも影響を与えることが予想できる。なぜなら、各球団は下位で即戦力の選手が獲得できると考え、ドラフト対象年齢を引き上げるといった方針転換に踏み切る公算が大きくなるからだ。


 25歳以上となる投手で、2021年のドラフト戦線で最も注目を集めそうな選手といえば、今年で社会人4年目を迎える嘉陽宗一郎(トヨタ自動車)である。彼は亜細亜大卒業後にトヨタ自動車に入社した右腕だ。

 嘉陽は、以前は上から腕を振ろうとし過ぎてバランスを崩していたが、昨年はフォームを見直して一気にその才能が開花した。都市対抗野球の本選では、初戦で敗れたものの、自己最速を更新する152キロをマーク。2回をパーフェクト、4奪三振という圧巻の投球を見せた。

 ストレートの勢いは後輩の栗林良吏(20年・広島1位)よりも上と断言できるレベルだ。この調子が維持できれば、リリーフの即戦力が欲しい球団は獲得を検討することが十分に考えられる。


◆ オールドルーキー候補にぜひ注目を

 嘉陽と同じ社会人4年目となる大卒投手では、飯田晴海(日本製鉄鹿島)や西居建陽(JR東日本)、大場遼太郎(ENEOS)もそれぞれ特徴がある実戦派の投手たちだ。さらに彼らを上回る5年目の立石悠汰(西部ガス)も、今が全盛期と言えるほどの勢いを見せており面白い存在となる。

 また、今年で社会人3年目を迎える大卒投手では、青野善行(日立製作所)や山本晃希(日本製鉄かずさマジック)、坂巻拳(三菱自動車岡崎)、大江克哉(NTT西日本)、高椋俊平(西部ガス)。野手では辻本勇樹(捕手/NTT西日本)や福永裕基(二塁手/日本新薬)、平山快(三塁手/JFE東日本)、向山基生(外野手/NTT東日本)などが有力候補となるが、彼らに注目する球団も増えるだろう。


 思えば、今オフにFA権を行使してDeNAから巨人へ移籍を果たし、大型契約を勝ち取った井納翔一も、大学を経て社会人4年目で指名された遅咲きの選手である。

 また、野手では草野大輔(元楽天)が29歳となる年に指名を受け、4年目の2009年に規定打席に到達して打率3割をマークしたこともあった。

 近年はトレーニングが発達し、20代後半でパフォーマンスを大きく上げるアマチュア選手も少なくない。そういう意味でも、今年は“オールドルーキー候補”となる社会人選手にもぜひ注目してもらいたい。


☆記事提供:プロアマ野球研究所

このニュースに関するつぶやき

  • 25歳以上でプロ入りした投手としては、能美さんが数々の記録を更新し続けていることはあまり知られていない。
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