車いすユーザーの「排泄トラブル」 精神的ダメージと尊厳への問い 「トイレで力尽きるのでは…」ケアは

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2021年01月16日 07:00  ウィズニュース

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写真排泄障がいへの心身ケアは=写真はイメージです=pixta
排泄障がいへの心身ケアは=写真はイメージです=pixta

自分のタイミングで排泄ができないと、その負担は自身にどうにのしかかってくるのでしょうか。排泄障がいのある、車いすユーザーの篭田雪江さんは「誰もが明日にはそうなる可能性がある」からこそ、身体だけでなく精神的なケアのあり方も考えなければならないのではないかと提起します。

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排泄障がいについて語った女性
前回、障がい者の性について、下半身まひの身体障がいを持つ自分自身の経験を元にコラムを書かせていただいた。

発表後、そのコラムの感想を寄せて下さった方がいた。大変嬉しく光栄なことで、この場を借りてお礼申し上げたい。

その方は感想のなかで他にも、障がいと性について印象に残っている記事を紹介されていた。車いす生活を動画発信しているという女性についての記事だった(朝日新聞デジタル「排泄、セックス… 車いす生活を動画発信する彼女の思い」)。

その女性、渋谷真子さんは、2年前(2018年)に転落事故で脊髄を損傷し、車いす生活となった。以来、性や排泄、その他の問題について不安を抱え続け、またそういう不安、悩みを伝えたい、知ってもらいたいという思いから動画サイトをはじめた、という記事だった。最近は本も出版されたらしい(『普通で最高でハッピーなわたし 〜特別でもなんでもない二度目の人生〜』扶桑社)。おなじ脊髄損傷者として、ご自身のさまざまなありようを発信し続ける渋谷さんには、最大限の敬意を送らせていただきたいと思う。

その記事を読み、さっそく渋谷さんの動画を観てみた(渋谷さんのYouTubeチャンネル「現代のもののけ姫Maco」)。もうすでにかなりの動画がアップされていて、すべてを観たわけではないのだが特に印象に残り、また再生回数も多かったのが排泄障がいについて語った動画だった。

詳細はぜひ実際に動画をご覧いただきたいので省略するが、それを観て感じたのが下半身まひの障がい者が自身の排泄について詳細に語った、あるいは記述したものを見たことが、あくまで自分の場合だが案外なかったな、ということだった。

障がい者の性については意外と、というと語弊があるが、ニュースや書籍、ネットなどで語られるケースが増えてきた。だがある意味、性よりも身近なことである排泄障がいについて取り上げられることは少なかった印象がある(医療関係者による論文等では当然あるが、一般的にという観点からはややずれるのでここでは措く)。その理由はわからないが、そういった情報が少なかったからこそ、渋谷さん自身の排泄障がいについて紹介した動画の再生回数が多いのでは、と想像された。

そんな渋谷さんに倣うわけではないが、今回は私自身や私のまわりの障がい者の排泄障がいについてのできごとを、別の角度から少し詳細に書いてみようと思う。詳細に語る理由についてはある思いがあるからだが、それは後述する。

大切な場面でまさかの「戦闘状態」
まことに恥ずかしいことながら、私は排泄管理が生来下手なのでは、と思うほど、排泄の失敗をこれまで何度も繰り返してきた。

以前、このサイトでも高校時代の排泄失敗について書かせていただいたことがある。それ以外にも排泄のミスで自分だけでなくまわりにも苦労をかけたことは数えきれないが、そのなかで特に記憶の傷となっている体験がある。

パートナーとの結婚が決まり、住む部屋を探そうと不動産会社を巡っていた時のことだ。こちらの希望する家賃や場所的にもいいアパートがある、ということでパートナーと女性社員と共に、私の運転する車でそのアパートに向かっていた。

その道中、私は腹部に違和感を覚えた。ぐるぐるとお腹が鳴り、信号待ちの時に気づかれないようズボンの中に手を入れると、脇腹や腰に異様な冷汗がわいていた。これは下痢気味の便が出ようとしている兆候である(前述の渋谷さんの動画によると、彼女にもおなじ兆候があるようだ)。

私は同乗していたパートナーと女性社員に頼み、途中のコンビニに車を入れた。パートナーにトランクから降ろしてもらった車いすに乗り移って店に入り、トイレへと駆け込んだ。間に合え、と念じながら。しかし遅かった。便器に移る瞬間、尻のあたりから泥から泡が噴くような音がしたのだ。

ズボンと下着、そして紙おむつを、慎重にひとつずつはずしていった。しかし、そのたびに水気の伴った便はまわりにこぼれた。全部脱ぐ頃には、ズボンや下着、紙おむつには大量の便がこびりついていた。太腿や性器、尻、腰回りにもべったりとつき、便座や床にまで飛び散ってしまった。

そこからはもう戦闘だった。ありったけのトイレットペーパーでからだや便器を拭った。特に困ったのが便座の汚れだった。座ったままではなかなか落とせない。だから最後には冷たい床に降り、便器に這いつくばるようにして汚れを拭った。ペーパーでは足りず、棚にあった雑巾もしかたなく使わせてもらった。その間とにかく臭いがきつく、汚れた便器に一度吐いた。

どれくらい時間がたったか。なんとか汚れを落とすことができた。私は床の上で、汚れのついたままのズボンと下着を履いた。だがもう紙おむつは使えないので、外で待機してもらっていたパートナーに頼んで(鍵はしていなかった)ビニール袋をもらってきてもらい、それに汚れたおむつを入れた。

だが、当然服が汚れたままなので自分から臭いがただよっている。この状態での外出はもう厳しい。時間もだいぶたってしまっていた。今回、部屋はあきらめようというパートナーの提案に従い、彼女に車をあずけ、社員の方を会社へと送っていってもらった。その間、私はコンビニの駐車場すみで待ち続けた。そして無意識につぶやいていた。「なんでこんな時に漏れるんだ」。汚れた紙おむつを入れた袋を脇に置き、みずからの臭いにえずき、腿を拳で打ちつけながら。

病気の進行で削り取られる「行動」
もうひとつ、自分の身近にいた車いすユーザーのある排泄トラブルについて、忘れられないできごとがある。

私が2020年の8月まで勤務していた就労継続支援A型の職場には、車いすユーザーの後輩女性が今も働いている。その後輩女性は筋肉が徐々に衰えていく進行性の病気を抱えながらも、デザイナーとして日々業務に励んでいる。明るい性格で、私やパートナーとも時々食事や飲みに出かけるほど仲良くさせてもらっていた。

ある日の勤務中、用を足そうと工場の車いす用トイレに向かうと使用中だった。そういえば後輩女性がさっき席を離れていたから彼女がいるんだなと思い、彼女が済んでから入ろうと一旦自分の席に戻った。その少し後、廊下がなにやらざわめきはじめた。見ると何人かの女性従業員たちが車いす用トイレの前に向かっている様子がうかがえた。私のパートナーも(パートナーも現在、その職場で働いている)向かっていた。

その後、ばたばたとたくさんの女性従業員がトイレの前を行き来し、やがて静かになった。しかし後輩女性はその後、席に戻ることはなかった。どうやら早退したらしい。

仕事がおわって帰宅すると、パートナーが事情を話してくれた。後輩女性はトイレで車いすから便器に移ろうと立ち上がった際、誤って転倒してしまったという。当然すぐ起き上がろうとしたが間に合わなかった。彼女は持参していた携帯電話で事務所に電話し、助けを呼んだ。女性従業員たちが駆けつけたが、当然ドアはロックされていたので、それをハンマーで壊し、ようやくなかに入り、手助けをした。清拭や片づけはなんとか済ませたものの、後輩女性は着替えを持ち合わせていなかったので、これ以上仕事は続けられず、その場で家族に連絡を入れて迎えに来てもらい、そのまま帰宅した、ということだった。

後日、私が車いす用トイレに入ると、いつの間にか便器のそばに床から天井までつながっている柱のような長い手すりが据えつけられていた。これも後でパートナーにたずねると、その後輩女性が今後倒れたりしないよう、彼女が使いやすい手すりとして取りつけたのだという。それを聞き、私は出会った頃からずっと変わらず元気そうな彼女だが、やはり病気は進行していて、排泄をはじめとした彼女のできる行動や望みを少しずつ、だが確実に削り取っているのだ、という暗澹とした思いにかられた。これからもこうしたことは増えていくのだろうか、と――。

以上ふたつほど、私自身や私のまわりの排泄障がい、トラブルについて詳細した。読む方にとってはかなり受けつけがたい記述もあったかもしれない。

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