前作は人間国宝にあやかり、今回はダジャレ…春風亭一之輔の新刊発売

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2021年01月17日 16:00  AERA dot.

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写真春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「新刊本」。

【今週のお題のイラストはこちら】

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 1月20日にこの連載をまとめた『新刊本』が発売されます。ありがたいことです。3年ぶりの第2弾なのです。

 前回のタイトルは、このコラムを落語の「まくら」になぞらえて、オーソドックスに「いちのすけのまくら」としてみました。編集のK氏が決めたんじゃないかな。K氏は敏腕女性編集者です。年齢は私より少し上だったような気がします。ただ年齢より若く見えます。声の大きいキュートな方です。声の大きい→キュートはちょっと不自然な流れですが、褒めているので問題ないです。今どき珍しく腹から声が出ている人、ということです。繰り返しますが年より若く見えます。問題なし。

 前回のタイトル決めのとき、「柳家小三治師匠の講談社文庫の『ま・く・ら』は◯刷なんですよぉぉぉぉっ!!」とK氏。そんな人と比べられても困るんだけどな。◯の数字は忘れてしまいましたが、途方もない数です。まだそんなに儲ける気か!?という数。さすが人間国宝です。「あやかりましょうっ! 『まくら』と入れましょっ! 入れなきゃ売れません!」とK氏。で、ついたタイトルが「いちのすけのまくら」。パクリギリギリです。結果「いちのすけの〜」はかろうじて重版。とてもあやかったとは言えませんが、私の独演会のロビーでK氏が声をからして売り子をつとめてくれたおかげです。「『まくら』いかがっすか〜っ!!」と実に腹から声が出てました。さすが敏腕。

 今回のタイトルは……『まくらが来りて笛を吹く』。これもK氏の案です。お互いに意見を出し合って、煮詰まった揚げ句に「編集部でも評判がよいですっ!!」というので決まりました。

 前作に比べるとかなりトリッキーだなと思います。ゴーサインを出しときながらなんですが、本当に売る気があるのかちょっと心配になります。賢明で妙齢な読者の皆さんはお分かりでしょうが、横溝正史先生の『悪魔が来りて笛を吹く』のダジャレです。おっかないやつ。子供の頃、テレビで観て夜中一人でオシッコ行けなくなったやつ。でも、そもそも日本の人口の何%が『悪魔が〜』を認識しているのでしょう。もし本のプロモーションに呼ばれたら、私はまず横溝作品の話をして、ついては映画化作品にも触れつつ「これは西田敏行さん主演の唯一の金田一耕助ものでして、いわゆる角川映画ではなく春樹さんがプロデューサーとして参加した東映制作の……」と、回り道を繰りかえさねばなりません。かなりめんどくせえタイトルだな。

 K氏からサイン本を100冊頼まれました。100冊にサイン、というとかなりの数に感じられるかもしれませんが、30分もかかりません。正直、こんなものか、という数です。売れ線の方はもっと大量のサインをするのでしょう。サインして売れるのならば、いくらでもします。コロナでキャンセル食らった落語会のあがりをこれで取り返すのだ。

 皆さま、この時期のおせちとお酒で弱った胃腸に。曲がり角のお肌に。五十肩と関節痛に。拗れた男女関係に。コロナで疲れた頭と心と身体に。不要不急のこの一冊をどうぞ。Kさん! サインペン買い足しといてっ!

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

※週刊朝日  2021年1月22日号

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