逮捕、服役後の不安…前科があると「子どもに迷惑をかける?」「海外渡航はできない?」

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2021年01月18日 10:21  弁護士ドットコム

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「前科があり、刑務所に服役していた過去があります。就職や結婚に影響が出るのではないかと不安です」。弁護士ドットコムには、「前科」に関する相談が複数寄せられています。


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当事者は、就職、結婚、海外に行くことなどに不安を抱えているようです。たとえば、以下のような相談が寄せられています。




・「窃盗の前科があります。就職活動の時、履歴書に前科を書かないとダメでしょうか。入社後にバレたら解雇されますか?」



・「10年位前に懲役4年6月の判決を受け、服役しました。結婚を考えている人がいるのですが、入籍した場合、相手方の家族や親戚に迷惑をかけることはありますか?」



・「女性のスカートの中を盗撮し、逮捕されました。前科がつくと海外に行けなくなるのは本当ですか?」




また、当事者だけではなく、その家族からも「夫に前科があることで子どもに影響が出ないか心配」、「親族に前科があるので、就職や結婚ができないのではないか」など不安の声が上がっています。



前科がついた場合、就職や結婚などにおいて不利益を受けることはあるのでしょうか。村木 亨輔弁護士の解説をお届けします。



●「自己申告しなければ不利に働くことは通常ない」

ーーそもそも、どのような場合に「前科」がつくのでしょうか。



裁判で有罪判決が出て刑を言い渡されると、前科がつきます。前科と似た概念として「前歴」というものがあります。逮捕されたけれども起訴されなかった場合には、前科ではなく前歴が残ります。



法に触れる行為をしたからといって、必ず前科がつくわけではありません。たとえば、スピード違反をして交通反則金を支払うに留まった場合や、万引きをして注意されるに留まった場合などには前科がつかない可能性もあります。



ーー前科があるか否かという情報は誰にでも分かってしまうのでしょうか。



前科の情報は、警察庁・検察庁・本籍地の市区町村で厳重に管理されています。そのため、簡単に他人の前科情報を取得できるわけではありません。よって、原則として、自己申告しなければ相手方には分かりませんので、就職や結婚で不利に働くことは通常ないでしょう。



●前科があることを隠した場合はどうなる?

ーー実際に前科がある人たちからは「前科を隠して結婚した場合、バレたら離婚されるのではないか」という声もありますが、いかがでしょう。



必ずしもそうとは言えません。



裁判で離婚を求めていく際に必要とされる事由として、法律では5つの規定が挙げられています。前科があることは、その中の「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に関することと考えられます。



前科といっても、比較的軽微なものから、強盗や殺人といった重大犯罪に関するものなど、内容は多岐に渡ります。離婚理由に挙げるにせよ、ある程度、重い内容の前科に限られるのではないでしょうか。そうは言っても、前科の内容が明らかになることで、パートナーへの不信感や夫婦仲の悪化につながるおそれがあることは否定できません。



ーー就職や海外渡航については、どうですか。



就職する際、履歴書の「賞罰欄」に、前科があるにも関わらず、「前科なし」と書くことは、経歴詐称にあたる可能性があります。



就職してから経歴詐称が発覚した場合、最悪のケースでは懲戒免職処分を受けるかもしれません。また、弁護士、医師、警備員など、一定の職業に就くにあたっては、前科があることを理由に資格自体の制限を受けることもあります。



海外渡航については、前科があることでパスポートの発給が制限されたり、渡航先から査証(ビザ)の取得を別に求められたりすることがあります。



●一度ついた前科は一生消えない?

ーー2年前に刑務所を出所したという人からは「子どものためにも、前科が消えてほしいと願うようになりました。前科が消えることはないのでしょうか」という質問も寄せられています。一度ついた前科は一生消えないのでしょうか。



前科情報を管理する機関のうち、警察庁と検察庁では、本人が死亡するまで前科情報を管理します。いっぽう市区町村は、刑の言い渡しの効力(刑法27条、同法34条の2)が消滅するまで管理します。消滅するまでの期間は最長10年です。



刑の言い渡しの効力が消滅すると、資格制限がなくなったり、市区町村の犯罪人名簿から抹消されたりします。ただし、逮捕情報がインターネットに掲載されることで、前科情報が長期間残ることもあります。



ーーインターネット上の前科情報を消す手段はないのでしょうか。



インターネット上の前科情報を消したい場合は、サイトの管理者やプロバイダの運営会社に削除要請していくことが考えられます。削除に応じてくれない場合は、裁判所に削除を求めて申立てをおこなう必要があります。



また、そもそもインターネットの検索結果に表示されないよう、検索サイトに要求していくことも考えられます。実際に過去の例では、裁判所が、大手検索サイト運営会社に対し、過去の犯罪歴が検索結果に表示されないように仮処分を命じた例もあります。



(弁護士ドットコムライフ)




【取材協力弁護士】
村木 亨輔(むらき・きょうすけ)弁護士
虎ノ門法律経済事務所神戸支店の支店長弁護士。東京本店を中心に、全国に31の支店があり、今後も各地に拡大する予定。本店支店間が相互に連携を取ることにより、充実したリーガルサービスの提供を可能とする。
事務所名:虎ノ門法律経済事務所 神戸支店
事務所URL:https://kobe-t-leo.com/


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