【南生田ウイングス】独自のチームマネジメントと「勝つこと」を目指す理由

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2021年01月18日 16:34  ベースボールキング

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2009年には高円宮賜杯全日本学童大会に出場し、2015、16年には多摩区年度チャンピオンにも輝くなど神奈川県下で強豪として知られる南生田ウイングス。強いだけではなく、昨年は「エニタイムフィットネス プレゼンツ ベストコーチングアワード2019」で三つ星を獲得するなど、その指導法、育成方針も高く評価されています。「強い」と「育成」の両立の秘訣に迫るべく、前編(「「強い」と「育成」を両立させる“ウイングスメソッド”)に続いて総監督にお話を伺いました。



「自分で考える力」も養う課題克服練習
ウイングスでは試合後に反省練習を行なっています。反省練習と聞くと罰、ペナルティのような印象を受けますが、実際は課題の克服練習。試合でミスやエラーをしてしまった時はもちろん、例え10-0で試合に勝っても、ミスなく試合を終えても、試合の中で自分の課題を見つけて「あれはもっと上手くできたはずだ」と試合後に各自で練習を行うというものです。
反省練習はまず、その子が試合を通じて考えた自分の課題を監督、コーチに報告することから始まります。その課題と指導者が感じた課題が一致していればOK、そのまま反省練習に移ります。課題が異なっていたら「本当にそうかなぁ?」と子どもに再考を促します。そうすることで、「考えろと言われたから考えた」という受け身の姿勢や、「反省のための反省」にならないようにしているのだそうです。

総監督の山内渉さんは反省練習の目的についてこんなことを言っていました。
「イチローさんが『自分で考えて自分の課題が何なのかが分からないと成長しない』とこの前何かで話されていました。我々の考えていることとドンピシャだったのでうれしかったですね」

チームに根付く「書く」習慣
ウイングスでは様々なメンタルトレーニングも取り入れられています。プレーのイメージトレーニングや気分を盛り上げるサイキングアップ、集中力を高めるためのトレーニングなどですが、野球ノートもメンタルトレーニングの一環として導入しています。それは日々の目標を書き記し、それがどの程度できたかを確認して次の目標を考えるため。またプレーを振り返ることでどうすればよかったのか? じゃあ次はこうしてみようなど、上達に向けたヒントを考えるきっかけにもなるから。



実際、この日も他会場での練習試合を終えたAチームが練習グラウンドに戻ってくるなり、各自ノートを持ってミーティングに参加し、一生懸命に鉛筆を走らせていました。学童野球の現場ではなかなか見られない光景でしたが、普段は休憩時間などにもノートに何か書いたりしている子どももいるそうです。
「汚ったない字なんですけどね(笑)。思考を文字に落とし込むことが凄く大切だと思っています」


会社のような組織マネジメント
ウイングスの指導方針や練習法を伺っていると、まるで「株式会社南生田ウイングス」の話を聞いているようでした。
年齢に応じた4つのチームはさながら「部署」のよう。部署にはそれぞれ目標があり、目標を達成するための練習には年間計画があり、3ヶ月目標、今月の目標、その日の目標、と細分化もされています。試合後の反省練習はPDCAサイクルのようにも思えます。
会社であれば社員の健康管理にも気を配る必要がありますが、ウイングスも子どもたちの健康と安全管理のためにAEDの場所が保護者で共有され、専門家を招いてAEDの講習会も実施。近隣の大学病院のドクターによる指導も受け、ストレッチ、野球体操、投球制限などで子どもたちの体調管理も実施しています。
会社のように思えたのにはもう一つ理由があります。
それはこのチームが「子どもたちがスポーツをやれる環境を増やしてあげることが大事」という考えのもと、無料のスポーツ教室も開催しているから。これはウイングスへの入部を促すためではなく、子どもの遊ぶ場所を設けることを目的に行なっている取り組み。これなどはCSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)活動そのものとも言えると思います。学童野球でここまで意識高く取り組んでいるチームはあまりないのではないでしょうか。

ウイングスが勝つことを目指す理由
最後に、「強い」と「育成」が両立できているチームだからこそ、「『勝利至上主義』をどう思いますか?」と山内総監督に聞いてみました。ちなみに、ヤキュイクでは勝利至上主義を「選手の健康や安全、フェアプレーよりも目の前の試合に勝つことを優先する主義」と定義しています。
「たまにそういうチームとも対戦することがありますが、ありえないと思いますね。そんなことをしなくても、子どもたちに正しい努力の仕方を教えて、それを積み重ねていけばある程度は勝てるようになると思っています」



「もちろん勝つことを目指しています」と続けた総監督。子どもたちには勝つことを目指す理由をこのように話しているそうです。

「勝ち上がって上部の大会に進めばもっと強い相手と戦える。強い相手と戦うためにはもっとレベルアップをしなければいけない。それは成長できるチャンス。だからそこを目指そう」

成長するのは選手に限った話ではありません。監督を含め、コーチ陣、保護者、ウイングスの選手全員が成長し続けるー。

山内総監督はそんな風土を作っていきたいと思っている。(取材・構成・写真:永松欣也)

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