育児アドバイザーに聞く、みんなの子育て相談室 第62回 子どもの「叱り方」について悩んだら?

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2021年01月20日 11:12  マイナビニュース

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「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

→これまでのお悩みはこちら

子どもを、怒ってばかりいて自己嫌悪に陥るというご相談が多い一方で、「叱り方がわからない」というご相談も多く受けます。

今回は、「ほめる子育てをしたいので、いけないことやしてほしくないことは真剣に言い聞かせているのですが、効果がありません。やっぱり叱った方がいい時もあるのか、その場合どうやって叱ったらいいのかよくわかりません」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
○「叱る」目的とは何か

「叱らずに子育てできれば悩まずにすむのに」という声もあれば、「叱らない親がいるから、子どもがやりたい放題になり他人に迷惑がかかる。だから叱るべきだ」という声もあります。

そもそも「叱る」目的とは何でしょうか。悪いことをしたから罰を与えるという考え方もありますが、それでは子どもの成長は見込めませんし、このご相談者の意図とは逆になってしまいます。

目的は、子どもが自分で考えて行動できるようにすること、つまり「自己肯定感のある自律した大人に育てること」です。その手段として、「叱ったり」「褒めたり」するのだと思いますが、1番効果的なのは「認めること」です。

具体的に考えてみましょう。例えば、レストランで子どもが走り回った時、どう声をかけますか?

(1)「やめなさい!」「静かにして!」「他のお客さんにごめんなさいは?」と叱る。

これはNGです。なぜなら、言われたときにはできたとしても、子ども自身が「ここでは走るのはやめよう」「ここ(運動場)では思いっきり走ろう」と自分で考えて行動できなければ意味はないからです。

また、親の体裁を保つために人前で子どもを叱っているという見方もできます。しつけのできていない親と思われたくなくて、「私は悪くないわよ」というアピールとして叱ってしまうというケースもあるのではないでしょうか。

結局、何度言ってもまた走り回ってやめないために、感情的になって怒ってしまっては意味がありません。それでは親子ともに疲れてしまうだけです。

逆に、叱る子育てはよくないからといって、全く気に留めない親がいますが、それはただの非常識です。また、子どもが自分で考える力も育ちません。

(2)怒らずに真剣に何度も伝える。理由を説明する声かけをする。

「レストランで走り回ることはいけないのよ」「他の人が静かに食事しているでしょ」「ここは食事をする場所で、走る場所ではないの」どれも正論で、子どもにわかってほしいことですね。

しかし、残念ながらこれもあまり効果がありません。なぜなら、親は教えているつもりでも、言われた子どもは自分を否定されていると受け止めてしまう可能性があるからです。

「レストランで走り回った自分はいけない子だ」「いけないことをした自分はダメな子だ」「お母さんに嫌われたらどうしよう」と、親はそんなつもりはないのに、子どもは悲しく感じてしまいます。

叱らず、説明せず……では、どうしたらいいのでしょうか。

(3)子どもがしていることを「認める」ことばをかける。

これが正解です。そのうえで言葉かけの順番は大切です。まずは子どもがしていることを「認める」ことばをかけましょう。

この例では、
・走り回れること
・楽しさを表現できること
・元気に動き回れること
これらは本来素晴らしいことです。ですから一度認めましょう。

親「おお! 走り回りたくなっちゃったんだね。お友達と一緒で嬉しいね」
子「 ! 」

親に自分の気持ちをわかってもらえた時、子どもはとても嬉しいものです。
そして、信頼関係ができていきます。
○親がしっかりと手本を見せる

何度もいいますが、子どもが理解するためには、言葉かけの順番が大切です。そして認めた後に、親がお手本を見せましょう。

ここでは、親が「(周りのお客さんに対して)子どもが走り回ってすみません」と謝ります。悪いのは子どもだから子どもに謝らせるべきだという意見もありますが、騒ぐ可能性のある子どもをレストランに連れてきたのは親なので、親が謝りましょう。

子どもは、自分の気持ちをわかってくれたお母さんお父さんが謝っている姿を見て我に返ります。自分は大好きなお母さんに謝らせるようなことをしてしまったんだ、何がいけなかったのだろうか、と考えるようになります。

そのあとで、「ここはレストランだから、座って食べようね」などと、社会のルール(正論)を伝えます。そうすると、子どもは自分のことをわかってくれた人の話を聞こうとするので、理解できるようになります。そして応用も利くようになります。

「ここは病院だから走ってはいけないな」とか「ここは公園だから走っていいんだな」と自分で考えられるようになっていくでしょう。

ただし、交通量の多い道路や駐車場で走り回ったりしたら、間髪入れずに
「走るな!」「だめ!」と言いましょう。命に関わる時は、いきなり注意しても問題ないです。認めていたり、ルールを説明したりしている間に、事故に巻き込まれてしまいますからね。

叱り方に迷ったら、まずはお子さんの行動を認めることばをかけることからスタートしましょう。

天野ひかり あまのひかり ・親子コミュニケーションアドバイザー ・NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事 上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師など。 自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰。 ■著書 ・Amazon子育てランキング1位のロングセラー 「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版 ・最新刊 「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。 この著者の記事一覧はこちら(天野ひかり)

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