自転車の後ろカゴを狙った窃盗犯、近隣住民に贈った「不可解なプレゼント」

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2021年01月21日 04:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

写真犯行現場周辺は人目につきやすい場所で
犯行現場周辺は人目につきやすい場所で

 年老いた男が狙ったのは高齢女性だった。言うなれば“老老犯罪”といったところ。いい年をして道を踏みはずした男は奇妙な行動をとっていた。

 赤い自転車をこぐ男は、前を走る自転車の後ろの荷台に取りつけられたカゴをじっと見ていた。静かに接近してカゴの中に手をのばし、ふくらんだエコバッグをつかむと、わざとスピードをゆるめて遠ざかっていった──。

 そんな手口で、80歳女性から衣類などの入った時価計約1万円相当のエコバッグを奪ったとして、神奈川県警が1月13日に窃盗の疑いで逮捕したのは同県川崎市川崎区の無職・わき硯也容疑者(76/わきの字は「脇」のつくりの「力」がすべて「刀」)。いわゆる“ひったくり”に該当するが、こっそり盗もうとする犯行態様は“コソ泥”に近いかもしれない。

 地元を担当する全国紙社会部記者は言う。

「逮捕案件は昨年10月30日昼すぎの川崎区内での犯行。周辺では2年前の秋ごろから、自転車の後ろのカゴを狙う窃盗が約30件発生しており、捜査当局は関連を調べている。逮捕の決め手は現場周辺の防犯カメラ映像で、複数の類似案件でも赤い自転車が確認されている。捜査員は“赤自転車”と呼んで逮捕に執念を燃やしていた」

 同容疑者は取り調べに黙秘しているという。

 被害女性にとっては、購入した1万円相当の衣服を奪われた損失だけでなく、ひったくりに遭った精神的ショックも大きいだろう。

まるで忍者のように

 わき容疑者は犯行現場から約2キロ離れた家賃月約5万円のワンルームマンションでひとり暮らし。周囲には「元畳職人」と名乗り、近所の住民らに気さくに話しかけるなど人当たりがよかった。

「6〜7年前に引っ越してきたときからひとりで、男性なのに毎日、布団を干し、こまめに洗濯や掃除をするきれい好き。“お金がかかるから外食はしない”と自炊して、おいしい炒めものやみそ汁を作る。ときどき、お裾(すそ)分けしてくれるんですよ。お年寄りが重そうな荷物を持っていると“オレが持っていってやるよ”と運んでくれるし、面倒見のいい性格なんですけれどもね」

 と同じマンションで暮らす女性。

 しかし、数年前に警察ざたになる事件を起こしたという。

「どこかで泥棒をしたみたいで、警察が自宅に来たとき無理やり玄関ドアを閉めて刑事さんが指を挟まれたり、逃げようとして3階ベランダから隣の建物の屋上に飛び移るなど大捕物を繰り広げたんですよ。あれには驚きましたね。忍者かって」(同女性)

 別の近所の女性はこのとき、「わき容疑者が隣宅との垣根をたやすく飛び越える姿を見た」と振り返る。あまりの身軽さに実年齢よりずっと若いと思い込んでいたそうだ。

 前出のマンションの女性住人は言う。

「大捕物から約1か月後には自宅に戻れて、“あー、のんびりしてきたよ”と、うそぶいていました。もともとホラ吹きというか、つじつまの合わない話が多く、“おふくろはオレがお腹の中にいるときに死んだんだよ”と言ったことがありました。じゃあ、あんたはどうやって生まれてきたんだと突っ込んだら黙っちゃって。都合が悪くなると無視したり、急に“うるせー”と怒ったりするんですよ」

 複数の近隣住民によると、わき容疑者は小柄で引き締まった体形。おでこの広くなった頭髪を黒く染めハンチング帽を好んでかぶった。

 日中は赤い自転車でどこかへ出かけ、遅くとも夕方には帰宅した。タバコもギャンブルも「お金がもったいないから」とやらず、晩酌に缶ビールを少々。「西日本の出身で娘がいる」と話したが、具体的な地名や娘の現況を話すことはなかった。

「腰痛で通院しており、生活保護を受けて慎ましく生活していた。金に困ることはなかったはず。ただ、読み書きが苦手で、役所からの通知などはひとに読んでもらったり、代書を頼んでいたようだ」(関係者)

 マイナンバーカードをつくるときは街角の証明写真ボックスの使い方がわからず、知人に付き添ってもらっている。ボタンを押す順番などをその場で教えてもらったにもかかわらず、誤操作してしまい、大きく引きのばした写真がプリントされ苦笑いした。エアコンの冷暖房を切り替えるリモコン操作も苦手だった。

不思議なプレゼント

 困ったときは周囲に手助けしてもらうなどコミュニケーション能力が高かったわき容疑者は、気遣いのつもりか、不思議なプレゼントをあげることも。

 犬を飼っている近隣宅には、「おばちゃんからもらったから」と言って高級ペットフードをポン。

 顔見知りの女性には、「娘からもらったから」と言って、なぜか中古の男性用財布をあげようとしている。

 前出の女性住人が振り返る。

「そういえば、自転車のカゴにつける防犯カバーをくれたことがあった。自分の自転車にもつけていました。“年の瀬でひったくりが多いから気をつけなきゃダメだよ。持っていかれちゃうから”と言って取りつけてくれたのに」

 そんな、わき容疑者も、ここ最近は外出が減っていた。

 近所の男性が言う。

「数か月前から警察がマークするようになり、周辺宅に防犯カメラの設置協力を求めるなど身辺があわただしくなっていたんです。わき容疑者は建物の陰からこっそり警察の様子をうかがうなど、そうとう気にしていましたね」

 逮捕当日は“大捕物”を回避するためか、少なくとも10数人の私服刑事らがマンション周辺にスタンバイし、騒ぎにもならずおとなしく連行されていったという。

 取材するかぎり、周囲に一度でも借金を申し込んだ痕跡はなかった。実際、金に困っていた様子はみられない。前出の女性住人に対し、なぜ犯行におよんだのでしょうねと尋ねると、こう返ってきた。

「泥棒の癖がついちゃっているのかもしれないですね。逆に聞きたいんですけれども、それって直るんですかね」

 さあ、わかりません、と答えることしかできなかった。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する

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  • 川崎もなぁ…、北と南で犯罪の質が変わるからなぁ… 以上! ああねみぃ…と言いたい馬神ヨリ。
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