「最強の補強」は選手とは限らない? 勝てるチームに“敏腕コーチ”あり

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2021年01月21日 16:00  AERA dot.

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写真巨人の石井琢朗野手総合コーチ(左)と広島の河田雄祐ヘッドコーチ(右)(写真提供・読売ジャイアンツ/広島東洋カープ)
巨人の石井琢朗野手総合コーチ(左)と広島の河田雄祐ヘッドコーチ(右)(写真提供・読売ジャイアンツ/広島東洋カープ)
 勝てるチームに敏腕コーチあり。

 投球、打撃、守備、走塁など、各分野に精通したコーチの存在が勝敗を大きく左右する。優れたコーチの必要性は年々増し、引き抜きとも思える球団間移動すら起こっている。

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「コーチは選手の邪魔をしてはいけない。コーチは教えてはいけない。教えるのではなくて、あくまでも選手のサポートをしないといけない」(ロッテ吉井理人/19年1月9日付スポルティーバ)

 自らコーチングした選手が結果を残したり、チームが勝利を挙げた時ほど指導者にとって嬉しい瞬間はない。しかしそこで調子に乗ってしまう可能性は、誰もが持っている。結果を自分自身の手柄にして増長、勘違いして人間性まで変わってしまう人も少なくない。コーチはあくまで脇役。吉井の言葉には最も重要なことが凝縮されている。

「コーチ職の重要性が再認識され始めた。これまで技量に問題があって、選手に教えることすらできないコーチがいたことは確かで、球団内での(コーチの)評価自体もあまり高くなかった。試合は選手自身がやるもの。試合の采配は監督が振るうもの。各部門のコーチはその下に位置するもの。そういった評価を露骨にしているところもあった。しかし近年結果を残している球団は、『専門職』といえるコーチを採用している場合が多い。彼らは現役引退後も勉強を欠かさない」(在京スポーツ新聞記者)

 投手コーチとして現在最も評価されているのは吉井だ。常に自らの立場についてブレず、どの球団でも評価される。そして、どんな時でも投手の立場を最優先に考えて守り抜く。吉井を慕う投手はあとを絶たない。

「日米で経験豊富な吉井は、どうやったら前向きになってマウンドに立てるかを重要視している。勝負の世界なので結果は悪く出る時もあるが、それを次の登板に生かせるように接する。対話を大事にして投手の本音を聞き出すことが最初のスタートと考えている。また最高のパフォーマンスを発揮するにはコンディションは不可欠。自分自身の状態を、常に完ぺきに把握させる。またどんなに重要な局面でも無理な登板は絶対させない。投手はやりやすいはず」(ロッテ担当記者)

 日米で23年間に渡って投げ続けたレジェンド投手。先発、ブルペンとあらゆる役割をこなし、メジャーのスター投手たちとも投手論を交わした。

「自分の経験を理論で理解したうえで、言葉で説明できるようになりたい」(吉井)

 一時期、現場から離れた際には筑波大学大学院へ通い体育学を専攻した。実技と理論の両方に裏打ちされたコーチングには説得力があり、結果に直結するのもわかる。

「大学院入学の情報が出た時には、何でそんなことするのか?という声も聞かれた。今となってはその方法は間違いではなく、あとに続くコーチたちも増加している。また同時期に入学した工藤公康(ソフトバンク監督)は4年連続日本一に輝いた。仁志敏久も今年からDeNA2軍監督へ就任する。日本球界でのコーチング、マネージメントへの意識が変わり始めている。現状、吉井に次ぐ投手コーチの人材は見当たらないので、下世話な話で言うと今後も食いっぱぐれはない。仮にロッテを退団した場合、引く手あまたのはず」(ソフトバンク時代の担当記者)

 投手コーチ以外でも評価の高い人物がいる。それは現在巨人の野手総合コーチを務める石井琢朗だ。

 選手としては横浜ベイスターズ時代(現DeNA)に、チーム38年ぶりの日本一に貢献。09年からは広島に移籍し、現役引退後は同球団でコーチ人生を開始した。当初は守備・走塁部門を任されたが16年から打撃専門となった。リーグ2連覇を達成した17年限りで退団し、翌年からはヤクルト1軍打撃コーチに就任。前年リーグワーストだったチーム打率(.234)が、リーグトップ(.266)に上昇するなど、結果を残した。

「打撃技術の高さには定評があった。また誰にでも分け隔てなく気を配れる性格はコーチ向き。現役時代から女性にモテたのがわかるし、選手たちにも慕われるはず。経験を生かした打撃論は引き出しが多く、打者のレベルに合わせて様々な指導方法を持っている。選手が納得するまで理論で語り、実際にやってみせる。キャンプでは朝の早出から居残りの最後まで、石井の姿は常にグラウンドにあった」(広島時代の担当記者)

 先述したようにヤクルト時代も変わらぬ指導力を発揮、村上宗隆など若手の底上げに尽力した。昨年からは同様に世代交代が必須の巨人へ移った。

「若手を1軍レベルの選手へ引き上げる技量は素晴らしい。石井本人もそのあたりは理解しており、家庭問題もあったが広島を退団したのは1つの区切りだったのではないか。当時ヤクルト以外の数球団からもコーチ就任の打診を受けており、その中には巨人も含まれていた。坂本勇人がベテランの域に差し掛かっており、その下の世代を育てるのが急務。岡本和真とともに打線の核を任せられる人材育成には最適なコーチ」(巨人担当記者)

 石井とともに16〜17年の広島を支え、外野守備・走塁コーチとしての評価が高いのは、今季から広島のヘッドコーチを務める河田雄祐。

 現役時代は俊足を生かし攻守の“サブ選手”として広島、西武で存在感を発揮した。現役引退後は西武、広島、ヤクルトと主に外野守備・走塁コーチを務めて来た。3連覇後に広島が低迷したのをきっかけに、今年から古巣への復帰が決まった。

「河田自身のプレースタイルが広島野球そのものだった。長打はないがしつこく食らいついて出塁し、1つでも先の塁を狙う。外野守備では俊足と練習によって積み上げられた打球感で広い守備範囲を誇った。コーチになってからも同様の選手を育成、地味ながらも強さの礎を作り上げた。明るい性格でチームを鼓舞するのも得意。暗黒時代に戻ったような低迷に苦しむ広島には、とっておきの人材。ヘッドコーチという肩書だが、主な役割は外野陣の再構築。主砲・鈴木誠也のメジャー挑戦が噂される中、今後を担う外野手の育成は急務。14年ドラフト1位の野間峻祥を、再び磨き上げることも重要」(広島担当記者)

「コーチに求められる技術とともに責任も大きくなっている。例えばロッテでは大物新人・佐々木朗希の育成は吉井に全権が委ねられている。球団としては、顔見せとして(昨季に)少しでも登板させたかったはず。しかしコンディション不良もあり、佐々木と話し合ってストップをかけた。将来的に主力投手になれば良いが、仮にダメだった場合、すべての責任を負わされてしまう。コーチも文字通りの『プロ』が求められている」(在京スポーツ新聞記者)

 かつて名監督と呼ばれる指揮官には、腹心と呼ばれる人物が数人つき、コーチとしての手腕は二の次という時代もあった。

 しかし状況は変わった。技量があればコーチ単体でも評価され、契約されるようになって来た。必要とあれば出戻りも許され、“ヘッドハンティング”のようなことも起きている。求められるのは結果のみだ。

 歴史に残る名監督がいるように、名コーチとして名前が後世に残る人が出るかもしれない。














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  • いやいや、計算でけへんのか?コーチは頭数に入らんぞ。こういう記事はほんま不快。
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