西野亮廣のオンラインサロン会員になっても……「夢をかなえることは難しい」と思ってしまうワケ

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2021年01月22日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「彼らにどんなメリットを提供できるのか?」西野亮廣
「西野亮廣ブログ」(1月20日)

 キングコング・西野亮廣が原作・脚本・製作総指揮を務める映画『えんとつ町のプペル』が観客動員数100万人を突破したそうだ。コロナ禍のご時世にこの数字は驚嘆すべきものだが、同作については、こんな出来事があったことをご存じだろうか。

 西野のオンラインサロン会員の20代前半男性・A氏が『えんとつ町のプペル』の台本&前売りチケットを仕入れ、販売できる権利を80セット、23万6,000円で購入した。仕入れ値よりも価格を上げて販売し、お小遣いを稼ぐつもりだったようだが、うまくいかず。結局、自分で80回映画を見ることにしたそうだ。

 この顛末をつづった「note」の記事がSNSでバズり、それに伴い「西野のやっていることは、マルチ商法などの犯罪行為ではないのか?」という意見を見かけるようになった。しかし、記事を見る限り、西野やその周辺が「買え」と圧力をかけている様子はないし、マルチ商法のキモは「新規会員を獲得すること」だから、それには当たらないと個人的には思う。当のA氏はチケットを買った理由を「挑戦している自分でありたかった」「オフ会で輝いている人の土俵に立ちたかった」とつづっているから、まぁ、若気の至りというやつだろう。

 ちょっと高めの授業料を払ったと思えばいいが、A氏がまた自分から厄介ごとに首をつっこんでいく気がしてならないのは、私だけだろうか。

 A氏の危なっかしい点は「やりたいことがなさそうなのに、目立ちたい」こと。どんな分野でもいいが、「やりたいこと」が決まっていれば、それを磨く手段が自ずと見えてくる。しかしA氏は、おそらくビジネスでの成功を夢見て、さまざまなプロジェクトに参加できる西野のオンラインサロン会員になったのだろうが、具体的に「やりたいこと」がないようにしか見えず、だから努力のしようもなく、結果も出ない。そのため、オフ会で輝けなくて落ち込み、だからこそ、無謀な挑戦をしてしまうのだと思う。

 断っておくが、私はA氏にダメ出しをしたいわけではない。A氏をはじめ、大多数の人は「やりたいことがないという幸せ」について、無自覚すぎるのではないかと感じるのだ。

 「やりたいことがない」のは、「今の生活に不満はない」ということだから、十分幸せであるといえるだろう。それなら、何も無理に「やりたいこと」なんて探す必要はない。「やりたいことがある」というのは一種の飢餓状態で、「才能を持て余している」「大いなる欲求不満」「もう後がないので、やるしかない」くらい追い詰められていることと紙一重ではないか。

 例えば、インドネシア建国の父、スカルノ大統領の第3夫人だったデヴィ夫人。彼女は極貧家庭の出身である。『デヴィ・スカルノ自伝』(文藝春秋)で、夫人は当時を「地獄のような状態」「貧乏の恥ずかしさが、どこまでも追いかけてきた」と振り返っている。

 夫人は幼い頃、お父さんと銭湯に行った帰りに空を見て、自分は「どこか遠い遠い国に行くだろう」と予感していたそうだ。神からの啓示のようにつづられていたが、この現実から抜け出したい、ここではないどこかに行きたいという強い思いが、夫人にそう思わせた部分もあるのではないだろうか。

 スカルノ大統領が夫人の若さ、美しさに心ひかれたことは確かだろうし、あの時代に、夫人が熱心に英語を学んでいたことが功を奏したことは間違いないはず。しかし、それ以上に、食べるものにも事欠き、数々の侮辱を受けて育ったことで培われた尋常ではないデヴィ夫人のガッツが、このロマンスの決め手になったと思えてならない。A氏には、そんな耐えられないほどの不満があるのだろうか。

 A氏に限らずだが、オンラインサロンでの経験を生かし、ビジネスで成功するのは難しいと思う理由はほかにもある。

 そもそも彼らが憧れる「ビジネスの世界で成功し、オンラインサロンを展開している人」は、どんな人なのだろうか。

 会員数の多いオンラインサロンといえば、ホリエモンこと堀江貴文氏、イケダハヤト氏、箕輪厚介氏らが思い浮かぶが、中退も含めて彼らがいずれも高学歴であることに気づく。仕事の出来に学歴は直接関係ないと思うが、学歴はブランドもしくは信用につながる。大手メディアは経歴が秀でている人を好む傾向があるので彼らを取材したがるし、一方で、注目された彼らもそれを実績もしくは信用に変えていく。また、ビジネスには元手が必要だが、例えば堀江氏は元妻の実家に出資してもらって会社を設立するなど、金銭的に困っていた様子はない。つまり、彼らは高い学歴、または資金力を持っているので、この時点でフツウではないのだ。

 西野は学歴こそ突出していないが、芸人としてわずかデビュー2年目で『はねるのトびら』(フジテレビ系)のレギュラーになっていることから考えると、非凡な才能の持ち主といえるだろうし、知名度もある。何も持たない人が成功したのではなく、もともと恵まれている、もしくは成功している人が、新ジャンルに挑戦してさらに成功したという見方が妥当ではないだろうか。

 もちろんオンラインサロンとの付き合い方は、人によって違うだけに、うまく楽しめるのなら何ら問題ない。しかしこういった人にビジネスを学ぶたいと思っているなら、やはり不十分ではないか。

 その理由は、1月20日付の西野のオフィシャルブログに求めることができるように思う。オリエンタルラジオが吉本興業を退社したことについてコメントを求められることが多いという西野は、こう書いている。

「今回の見なきゃいけない部分は、『オリラジ』じゃなくて、『吉本興業』です。これって結論を言っちゃうと、『発信力を持ってしまったタレントに事務所としてのメリットを提供できなかった』ということだと思うんですね」
「なので、『吉本興業を辞めても食っていける芸人』をリストアップして、『彼らにどんなメリットを提供できるか?』を緊急会議した方がいいと思います」

 西野は“メリット”という言葉を繰り返して使っていることに気づくが、ビジネスの基本は、これではないだろうか。その人と組んだり、その人を起用することで得られるメリットがなければ、ビジネスとして成立しない。しかし、すでに成功している西野と、これから何かしようとしている何も持たないサロンメンバーでは力量が違いすぎて、一緒にプロジェクトをするにも、メリットを共有することが難しい。

 そうなると、メンバーは今回のように、無理をして映画のチケットを売って、西野に貢献するくらいのことしかできないだろう。その結果、「オンラインサロンでマルチ商法をしているのではないか」と言われてしまうような事態になったと思うのだ。

 今回は大事に至らなかったが、例えば今後、若い女性が映画のチケットを大量購入するために借金をし、チケットがさばけず、借金も返せないから風俗で働くことになったなんて出来事が起きたら、オンラインサロンはそれこそものすごいバッシングに晒されるだろう。

 2020年11月放送の『華丸大吉&千鳥のテッパンいただきます』(フジテレビ系)に出演した西野を、千鳥・大悟は「捕まっていないだけの詐欺師」と表現した。詐欺師というと「お金を騙し取る人」のイメージを持つ人が多いだろうが、私に言わせると「夢を持て」と煽る人こそ詐欺師だ。

 その昔、小室哲哉は渡辺美里のために書いた楽曲「My Revolution」で「夢を追いかけるなら、たやすく泣いちゃだめさ」とつづっているが、「夢を持つ」「やりたいことをやる」と、尋常じゃなく傷つき、時には人生さえも棒に振って破滅することになるかもしれない。一人の成功者の陰には、何千、何万もの落伍者がいることを忘れてはならない。お金なら働けば戻ってくるが、人生はそうはいかない。若い人たちには、気を付けていただきたいものだ。

このニュースに関するつぶやき

  • 個人的な見解ですが、西野亮廣は胡散臭い。最初は絵が上手くらいだったけど。今は教祖の臭いしかしない。しかも、邪教の教祖。西野礼賛のオバサンたちを見ていると余計にその思いが募ります。
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