駒澤大の大八木監督が箱根逆転優勝の要因を分析。ピタリとハマった狙い

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2021年01月22日 06:42  webスポルティーバ

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 今年の箱根駅伝で駒澤大は、目標を3位以内としていたものの、10区で創価大との3分19秒差を逆転して13年ぶり7回目の総合優勝を果たした。




 駒澤大は、昨年11月の全日本大学駅伝も6年ぶりに制している。チームとしては、エースの田澤廉(2年)を筆頭に、1年生と2年生に勢いがあり、谷間の世代とも呼ばれる3年生は、起用されてこなかった。これまでも現3年生は、前回の箱根10区(区間7位)を走った石川拓慎以外、3大駅伝の経験がなかった。

 しかし、大八木弘明監督は、全日本後にこんなことを考えていた。

「全日本は田澤をアンカーにして、4年の小林歩と1年エースの鈴木芽吹のどちらかを17.6kmの7区に起用し、外れた方を真ん中の区間に持っていけば優勝できると考えていたんです。結果的にはその通りになりましたが、つなぎの6区は、石川と山野力(2年)のどちらを使うか迷い、5000mの結果がよかった山野を使い、石川は箱根に取っておくことにしました。それを決めた時に、3年間コツコツとスタミナを積み上げてきた、石川以外の3年生も箱根で使いたいなと思ったんです」

 1区の候補は、全日本1区を走った加藤淳(4年)と白鳥哲汰(1年)だったが、ともに15km以降に不安があった。序盤からハイペースになる展開であればファーストチョイスは加藤。大八木監督は2年連続1区だった早稲田大の中谷雄飛(3年)がいないだろう1区は、スローペースになる確率が高いと読んで、最後の状態のよさから白鳥を1区走者に決めた。

 田澤の2区起用は、苦肉の策だった。じつは田澤は、12月4日の日本選手権1万mでは、27分46秒09で8位になったあとに腰と背中の張りがひどく、1週間かかって状態を戻したものの、疲労が残っていた。

 それでも、1区がスローペースで数十秒差の勝負になれば2区は集団走になる。彼の力があれば、そこで2、3番手には上げてくれるはずと大八木監督は考えた。そこで、3区には区間賞も狙えるほど絶好調の小林を置き、先頭争いに加わる構想だった。

「1区はやっぱり、15km以降の不安が出てしまった。できれば30秒差でつなぎたかったのですが、47秒差だったので田澤も8位までしか上げられなかった。でも、3区の小林がいいペースで突っ込んで、3位まで上げる走りをしてくれたのは大きかったですね。4区の酒井亮太(2年)は区間11位でしたが、2位に上げることもできました。創価大が(4区で)トップに立ったのは驚きましたが、メンバーを見て4区、5区に強い選手が配置されていて、そのまま逃げ切られるだろうと思っていました」

 駒澤大は、5区の鈴木が東洋大に28秒差の位置でスタートしたことが幸いした。「鈴木は初めての5区でなかなかリズムをつかめていなかった」と大八木監督は振り返るが、東洋大の宮下隼人(3年/前回5区で区間賞)が追いついて鈴木の前に出たことで、鈴木は宮下のリズムについていく走りができた。この経験は来年に向けても重要であり、最後に離されながらも下りではタイム差を詰める走りができたことは収穫だった。

 往路のトップの結果は、創価大と2分21秒差、2位東洋大とは7秒差の3位。総合3位狙いから優勝が見えた瞬間だった。大八木監督は、こう振り返る。

「青学大と東海大がミスをして、うちの後ろだったのは助かりました。層の厚さが全然違うから、両校が前にいたら『復路はうちより強いだろうな』と思ってしまう。でも創価大と東洋大だったから、何とかなるかもしれないと思いました」

 翌日の復路は大八木監督が考えていた、「3区間で3年生起用」がピタリとハマった。6区の花崎悠紀(3年)には58分台中盤の走りを期待していたが、それを上回る区間賞獲得の57分36秒で走り切り、創価大との差を1分13秒に詰めた。大八木監督は「これなら8区くらいで捕まえられるかな」と思ったという。

 だが、創価大はしぶとかった。7区で創価大の原富慶季(4年)が好走を見せ、駒澤大の花尾恭輔(1年)は再び引き離されてしまった。

 次の8区で、駒澤大は区間エントリーで全日本4区(区間7位)の伊東颯太(4年)が入っていたが、最終的なコンディションを比較して、佃康平(3年)に替えた。3年前、故障中のエース工藤有生(当時4年)を7区に起用したもののタイムが伸びず、その結果シード権を逃した苦い経験を反省しての決断だった。

 佃は区間4位の走りで創価大を追ったが、結局1分29秒差と詰め切れなかった。それでも大八木監督は9区が終わった時点で1分半差なら、逆転は可能と考えていた。まだ勝算があったのだ。

「この差を維持できればと思っていましたが、9区で創価大は最初からすごく突っ込んで、5km通過がうちよりも20〜30秒速いのには驚きました。ただ、山野もまあまあのペースで行っていたし、創価大もどこかでペースが落ちるかもしれないとも考えていて。

 15kmで2分差になった時はきついかなと思いましたし、最後の中継で3分19秒差になった時には『これは逆転できない』とも思いました。だから10区の石川には、『2位確保でいいから、区間賞狙いで攻めるだけ攻めて、諦めないで走れ』と指示しました。『前回10区で7位まで上がりながら、ラスト1kmで早稲田大に振り切られた悔しさを晴らせ』という感じで。石川も気持ちよく走れたのだと思います」

 創価大の榎木和貴監督は10区で初出場の小野寺勇樹(3年)を起用した。これは、最後は競り合う展開になると予想していたからだった。小野寺は相手への対応がうまく、スピードのある選手だが、苦手な単独走であり、そこに加えて優勝のプレッシャーもかかった。その結果、小野寺は失速。粘り強く走ってきた駒澤大が逆転に成功した。

「3年生を全日本に出さなかったのは正解でした。(出られなかった)その悔しさを箱根で全部出し切ってくれました。3年生が『自分たちがやればいける』という気持ちで走ってくれたのは、来年につながります。

 全日本でまずまずの走りをしていた2年生の酒井と山野が、今回は区間11位と6位だったのは誤算でしたね。田澤も含めて長い距離でも安定感を持たせられるように、もっとレベルを上げていかなければ、連覇にはつながらない。勝った上にそういう課題が見つけられたことは大きな収穫です」

 こう話す大八木監督は次の箱根について、有望な新入生も複数加入する青学大や東海大だけでなく、往路を若い選手で組んだ東洋大や創価大、さらには27分台のエースがふたり残る早稲田大の強さを考慮して、混戦になると予想する。そしてこうも話す。

「今回の優勝記録は青学大の大会記録より10分以上遅いですが、1万mの平均タイムが一番いいうちが勝てたことはよかったと思います。スピード駅伝、スピードマラソンと言われるようになっているこの時代で『箱根はスピードだけではダメなんだよ』という結論になってしまうのは悔しいですからね。1万mの平均タイムが速く、なおかつスタミナもあって勝てるようなチーム作りが理想です。来年は青学大の10時間45分23秒の更新を目指していきたいと思います」

 箱根駅伝は大学生ランナーが世界へ挑戦する足掛かりとなるべき。大八木監督のその意識は、総合優勝を果たして益々強くなっている。

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