豪雪でも出社しなくちゃいけないの? 地方のテレワーク事情2021

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2021年01月22日 07:02  @IT

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写真テレワークでご安全に!
テレワークでご安全に!

 2021年1月9〜11日にかけて、日本は北陸や中部地方を中心に災害級の大雪に見舞われました。



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 この記事は、ちょうど大雪の真っ最中に書いています。私が住んでいる新潟県の中山間部、妙高高原は雪が多く積もる地域で、一晩で1メートルほどの雪が降ることも珍しくありません。そのため、雪への備えや耐性はありますが、幸い今回は想定内の降雪で、日常生活に大きな支障はありませんでした。



 今回雪が多く降ったのは、平野部の街中でした。例年だと積もっても数十センチ程度の地域なのに、今回は1日で1メートル以上の雪が積もりました。街中だけに家と家との間隔が少なく、道幅が狭いところも少なくありません。雪のやり場がなく、道路除雪もままならなくなり、街はマヒ状態です。



 災害級の大雪は、このような場所で起こったのです。



 さて、今回は大雪の話をしたいわけではありません。「こういうとき、地方でもテレワークできればいいのに……」というお話です。



●非常事態なのに、出勤を気にしなければならない切なさ



 今回の大雪は3連休に降りました。そのため、「仕事には支障がなかった」ように見えます。



 けれども、大雪が降った地域に住む友人、知人のSNSのタイムラインを眺めていたら、このような投稿が多いことに気が付きました。



仕事に行こうと思って駐車場を見たら、車が雪で埋まっていた。除雪をしたいけど、もう、雪のやり場がないよ



家の前の道路がストップ。明日会社に行けるだろうか



もう、除雪でヘトヘト。週末だったからいいけれど、明日は仕事か……



 世の中が休みでも、仕事の人も当然います。休日に出勤だった知人は、何とか車を掘り起こして仕事に行こうとしたものの、道路の除雪が間に合っておらず、出勤を断念したそうです。



 3連休だった知人は毎日除雪作業。経験がある人ならお分かりいただけると思いますが、除雪作業はかなり重労働です。しかも今回はあまりの大雪だったため、せっかく数時間かけて除雪をしても、その端からどんどん積もって、一晩明けたら前日より多い雪が積もっている……そんな感じです。それがどれぐらいの徒労感か、何となく想像できるでしょうか。



 休日が明けると仕事です。ヘトヘトな体にもかかわらず「明日は会社に行けるだろうか?」と、心配している知人のSNSの投稿を見て、ふと思ったのです。「もしテレワークできたら、どれだけ救われるだろう?」と。



●雪国では「非常事態」が日常茶飯事



 ちなみに今回のような雪害は、雪が積もるのが前提の地域に住んでいる私にとっては、それほどレアなケースではありません。



 「明日は大雪だから、早めに出勤しなくちゃ」と朝5時に起きて、1メートル近い雪の中から埋もれた車を掘り起こし、大型の除雪車が行き来する中、家を出るも、途中で立ち往生している車の列に巻き込まれ、会社に着いたのは正午前。それから、仕事をして、「ちゃんと帰れるかな」と心配しながら夕方帰路に就く……といった経験は、1度や2度ではありません。



 「立ち往生に巻き込まれるかもしれないのに、それでも、なぜ会社に行くのか?」ですって?



 それは「仕事だから」です。私のこれまでの仕事に対する価値観では、「何があっても会社に行く」のが当たり前でした。「仕事とは、会社でするものだ」「仕事には、遅れてはいけない」「仮に遅れても、全力を尽くさないといけない」……それが仕事です。何があろうと、仕事には行かなければいけないのです。



 でも、テレワーク時代の今、ふと思います。「そんなリスクを冒してまで、無理に会社に行かなくたって、テレワークで仕事ができるならそれでいいじゃん」と。「むしろ、そっちの方が安全だし、効率的じゃん」と。



 しかも大雪のようなケースでは、多くの人が同じ時間に無理に会社に行くよりも、外出を控えて、移動する車の数を1台でも減らした方が、立ち往生する車を減らせますし、道路の除雪作業もスムーズになります。



 このように考えると、自然環境の影響を受けやすい地方ほど、テレワークを推進すればいいのにな……と思うわけです。



●地方のテレワーク事情



 しかし理想とは裏腹に、現実は全くそうではありません。



 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、一気に広まったテレワーク。都市部では、多くの人がテレワークを体験しました。そういう意味では、「地方でもテレワーク」は、それほどハードルは高くないのかもしれません。



 けれども、地方のテレワーク事情は都市部とは異なります。



 例えば、私が住んでいる地域の身近に「テレワークの経験がある」人を私はほとんど知りません。2020年春の緊急事態宣言下でも、時差出勤やオンライン会議などの対応をした人はいても、「テレワークをしている」という人の話を聞いたことがありません。



 それよりも、「都会ではテレワーク、テレワークって言うけれど、実際にやっている人、いるの?」と尋ねられる……これが、地方のテレワーク事情です。



 もちろん、何でもかんでも「テレワークがいい」とは思いません。私には道路除雪の仕事をしている知人がいます。以前、知人に頼まれて除雪車のオペレーター補助をしたことがあります。みんなが寝静まっている真夜中に、大型除雪車に乗って除雪をする大変な仕事です。このような皆さんに対して、感謝の気持ちこそあっても、「テレワークすればいいのに」なんて安易には言えません。



 また、都市部、地方に関わらず、サービス業や製造業、電気・ガス・水道・道路といったインフラ関係の仕事、医療をはじめとするソーシャルワーカーの皆さんのように「現場」がある仕事の場合、テレワークをしたくてもできない場合も多々あることは承知しています。



 でも、必ずしもこういった仕事をしている人ばかりではないでしょう。1日の多くをPCの前で仕事しているなら、テレワークできる可能性があるはずです。ましてや、雪国のような地方の方が、自然環境のリスクが多い。それならば、安全かつ効率的に仕事をするためにも、できる人からテレワークが広まればいいのになと思うのです。



●地方でテレワークが広まるために



 では、地方でテレワークが広まるためには、何が必要なのでしょうか。



 1つ目は、今回の雪害のような事態が契機になることです。



 「雪が降ったときは、無理に出社するよりも、在宅で仕事する方が安全だし、効率もいいよね」みたいに。



 2つ目は、リスク回避だけではないテレワークのメリットを、地方の企業に知ってもらうこと。



 例えば、「地方の企業は人材不足」という話をよく聞きます。地方は人口が減っているのですから当然です。でもテレワークができるようになれば、地域外の人たちにも門戸を広げられます。



 先日お話をしたある経営者は、「地元で採用の募集をしたときは申し込みがゼロだったけれど、テレワーク可としたら、80件の申し込みがあった」と話していました。もちろん理由はテレワークだけではないと思いますが、それでも、新しい出会いが生まれたのは大きいことです。



 3つ目は、地方自治体がテレワークを率先して実践することです。



 近年、テレワークやワーケーションの広がりで、地方自治体で「テレワーク」という言葉を見聞きする機会が増えました。でも、外に向けては「テレワークで新しい働き方をしませんか?」「ワーケーションに来ませんか?」と言うのに、自分たちはテレワークしていないケースが多いのです。



 テレワークを推進したいなら、まずは自分たちから、だと思うのです。



 そして今回のような大雪のときに、単に「外出を控えてください」「自粛してください」ではなく、「無理に出勤すると立ち往生する恐れもあり、危険です。業務はぜひ、テレワークで行ってください」と、地域の防災無線から流れてきたら、何か、いいな。



 そのためにも、まずは地方自治体自身がテレワークを推進していただきたいと思います。



●テレワーク、都会も地方も



 新型コロナウイルス感染症の影響で、テレビやメディアで見聞きする機会が多くなったテレワーク。でも、地方の人や企業にとっては、「それは、都会の話でしょ」「地方は関係ないよね」なんです。



 でも、私は思います。「都会にも地方にも、安全で、効率よく働くためにできることがあるのでは? それが、テレワークなのでは?」と。



 だからといって、「うちも今日からテレワークを実践するぞ!」なんて気合は入れなくてもいいとは思いますが、「地方なら、どんな方法があるだろう?」「自分なら、どう生かすだろう?」と少しでも考える機会があれば、都市部、地方に関係なく「これからの働き方」へと、緩やかにシフトできそうです。



●筆者プロフィール



しごとのみらい理事長 竹内義晴



「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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