今、世界で最も欲しがられる選手。アラバはどこでプレーしても最上級だ

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2021年01月22日 17:11  webスポルティーバ

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サッカースターの技術・戦術解剖
第42回 ダビド・アラバ

<食らいまくるカウンターを防ぐ>

 ダビド・アラバ(オーストリア)のレアル・マドリード(スペイン)への移籍が大詰めを迎えているようだ。レアルのオファーは破格だが、移籍するかどうかはこの原稿を書いている時点ではまだ決まっていない。




 アラバが去るとしたら、バイエルン(ドイツ)には相当の痛手だろう。今、最も失ってはいけない選手である。

 昨季のチャンピオンズリーグで優勝、圧倒的な強さを示したバイエルンだが、今季のブンデスリーガではかなりはっきりした弱点を露呈している。

 カウンターに弱い。というより、いくつかの要因が重なって明らかに対戦相手からそこを狙い撃ちされている。それでもバイエルンが依然として強さをキープできているのは、アラバがいるからだ。

 まず今季は、チアゴ・アルカンタラ(スペイン)がリバプール(イングランド)へ移籍した。チアゴがいなくなったことで、バイエルンはボールのグリップを失った。チアゴの役割を担っているヨシュア・キミッヒ(ドイツ)もすばらしい選手だが、パスワークの軸としてはチアゴに及ばない。

 チアゴがいたので、後方のパスワークでボールを失わず、そこから前方へのフィードで違いをつくることができた。チアゴを失ったバイエルンはボール保持の質が少し落ち、ビルドアップ段階でボールを奪われるケースが増えている。

 さらに、ボール保持と前方フィードが少し不安定になったことで、持ち前のハイプレスが空転しはじめた。好調時のバイエルンは包み込むようなハイプレスで相手に組み立てを許さない。ひとりがボールホルダーに素早く寄せてパスコースを限定し、残ったボールの出口を2、3人で封鎖にかかる。

 3、4人が一気に動く同時性、連動性があるのでこの封鎖ができるのだが、封鎖しきれないケースが出てきている。コンディションの問題もあるかもしれないが、わずかではあるがボール支配力の質の低下が影響している。ボールの失い方が悪くなっているし、その頻度も増えている。

 結果的に、バイエルンはカウンターアタックをまともに食らう回数が増えた。ハイプレスにリソースを割いているので、CB(センターバック)ふたりが後方に残っているだけ。広いスペースのどこかにボールが出れば競走になるし、CBを越えられるとGKとの1対1だ。

 今季のバイエルンは失点が多く、よく先制されてもいる。ただ、それで負けないのは地力の差もあるが、アラバのカウンター対処能力とGKマヌエル・ノイアー(ドイツ)の力によるところが大きい。このふたりがいなければ、少なくとも現在の順位(1位/1月21日時点)ではなかっただろう。

<マルチプレーヤーとして有名>

 アラバは、ウイング、MFのすべてのポジション、左SB(サイドバック)とCBでプレーできるマルチロールプレーヤーとして有名だ。器用なだけでなく、どのポジションでもトップクラスの能力がある。

 オーストリア代表に最年少デビュー(17歳)、オーストリアではMFだったがバイエルンでは左SBとしてレギュラーポジションを獲得した。ジョゼップ・グアルディオラ監督(スペイン)が来ると、いわゆる「偽SB」としてボランチ、インサイドハーフ、左ウイングと前進していくプレーで注目された。

 グアルディオラ監督が2年目に3バックを採用した時には、その左側を担当。現在はCBとして不可欠の存在になっている。

 スピード、スタミナが抜群。戦術眼に優れ、左足のパス、シュート、カーブをかけたFKもすばらしい。まさにオールラウンドな才能の持ち主である。ボールを止める、蹴る技術では最高クラスだろう。ファーストタッチが完璧で足下からボールが離れない。

 インサイドで押し出すようなキックは正確無比、素直で真っ直ぐなボールを味方へ届ける。止めて蹴るまでの時間が短く、左足にボールがついたと思った瞬間にはリリースされているように見えることもある。したがってヘッドアップも早く、状況判断を間違えない。

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 広いスペースをカバーできる守備範囲の広さ、1対1のデュエルの強さ、奪ったボールを確実につなぐ技術。空中戦は抜群とは言えないまでも十分に強い。CBとして世界最高クラスなのだが、本人はこの役割に不満があるようだ。それはそうだろう。これだけ何でもできるのだから、自分の力を100%発揮していない気がしていても不思議ではない。

<どのチームにも欲しい選手>

 左側のCBと言えば、リバプールのフィルジル・ファンダイク(オランダ)とレアル・マドリードのセルヒオ・ラモス(スペイン)が双璧だが、ふたりとも右利きだ。右利きはハンデにはなっていないが、左利きのほうが有利なのは間違いない。

 レアルがアラバを獲得したら、右にラモス、左にアラバの理想的なコンビが実現する。MFとしても、どこでもそつなくこなすだろう。どのチームにとっても欲しい選手に違いない。

 ただ、アラバを最も必要としているのはバイエルンのはずだ。CBにはジェローム・ボアテング、ニクラス・ズーレ(いずれもドイツ)がいるが、どちらもフィジカル能力は抜群ながら、アラバの技巧とスピードはない。異常なほど高いライン設定の戦術は、アラバがいてこそ機能している。

 アラバは、ミラン(イタリア)のレジェンドだった、パオロ・マルディーニ(イタリア)とよく似ている。若くして左SBのポジションをつかみ、CBとしても守備の重鎮となった。攻撃力もすばらしく、もしマルディーニがスペイン人だったら、DFではなくMFとして起用されていただろうと言われていたものだ。

 マルディーニは引退までミラン一筋でプレーした。アラバがバイエルンでプレーしつづけるかどうかはわからない。

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