写真 試合中に左腕などのタトゥーが露出した井岡一翔(右)(C)朝日新聞社 |
左腕のタトゥーが露出した状態で試合をしたWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(31)について、日本ボクシングコミッション(JBC)は22日、厳重注意処分にしたことを発表した。処分としては最も軽いものとなる。井岡の行く末を案じていた「元祖入れ墨ボクサー」の川崎タツキ氏(48)に率直な思いを聞いた。
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JBCのルールでは、日本のプロライセンスを持つボクサーで「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」は、試合に出場できないと定めている。入れ墨やタトゥーをしている選手は、ファンデーションなどで隠す措置が必要となる。
井岡は、昨年大みそかに行われた田中恒成との防衛戦の最中、左腕などのタトゥーが露出した状態のまま試合を続行した。何らかの理由でファンデーションがはがれたもので、故意に露出させたのではないとみられていたが、ルールに抵触したのは間違いなく、ネット上などで激しいバッシングを浴びた。
一方で、タトゥーを禁止すること自体が時代遅れであるという意見や、JBCルールでは外国人選手はタトゥーを隠す必要がないため、ルールそのものの矛盾も指摘されていた。
今回、JBCは井岡と、所属ジムの木谷卓也会長に、処分の中では最も軽い厳重注意処分を下した。合わせて、現段階では「入れ墨禁止」のルール変更はしない姿勢を示した。
井岡への処分を人一倍気にしていた人物がいる。元プロボクサーの川崎タツキ氏だ。元暴力団組員、元薬物中毒者という荒れた人生から立ち直り、友人たちからカンパを受けて背中の入れ墨を手術で消し、プロボクサーになった川崎氏。「入れ墨ボクサー」として注目を浴び、日本と東洋太平洋の王座にも挑戦するなどボクシングの聖地・後楽園ホールを沸かせた人気者だった。
そんな入れ墨ボクサーの「元祖」である川崎氏は、井岡が軽い処分に落ち着いたことについて、開口一番「それは良かった。日本でボクシングができないとか、厳しい話にならずに本当に良かったです」と喜んだ。
「あれだけ素晴らしい試合をした井岡君がたたかれているのを見て、正直、つらい思いがありました。井岡君も次の試合からはしっかり(タトゥーの対策を)するでしょうからね。ルールを破ったじゃないか、とたたきたくなる人の気持ちも分からなくはないけど、これで許してあげてほしいなと思います」
JBCが、入れ墨禁止のルールを変えない姿勢を示していることについては、
「ルールについては、僕がどうこう意見するつもりはありません。僕はJBCのルールに合わせて背中の入れ墨を消しましたが、そのことに何の後悔もないし、プロボクサーになれて良かったと心から思っています。僕の時代の入れ墨と今のタトゥーでは世間の見方も違ってきているでしょうけど、JBCがこれからどうするかを考えていけばいいことですよね」
井岡が望むかは定かではないが、これからもタトゥー対策をしっかりやれば、日本のリングに上がることができる。
最後に、川崎氏は井岡にこうエールを送った。
「どこで試合をするかは、ボクサー本人が考えて決めればいいことだと思います。今でもすごいチャンピオンだけど、もっともっと強くなって、また素晴らしい試合を見せてほしいです」
(AERAdot.編集部 國府田英之)