“口の筋トレ”で介護&死亡リスクを減らす(東京都健康長寿医療センター平野先生監修)

0

2021年01月23日 11:40  週刊女性PRIME

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週刊女性PRIME

写真※写真はイメージです
※写真はイメージです

 口まわりの筋力が低下する『オーラルフレイル』。むせる、こぼす、口の中が乾くといった状態を放置しておくと、心身の健康寿命を縮める事態に! 注意すべき予兆と改善エクササイズを紹介します。

むせる、食べこぼすが寝たきりへの入り口!

 生涯、健康を保つために口から食事をとることは大きな意味をもつが、今、口の働きについて一歩進んだ考え方が注目されている。

「これまでは80歳で自分の歯を20本以上保つなど、歯の維持を中心に考えられてきましたが、これからは“食べる機能の維持”が重要です」

 と話すのは、東京都健康長寿センター歯科口腔外科部長の平野浩彦先生。

 食べる機能=口腔機能が注目されるようになったのには、大きな理由がある。高齢になれば誰しもが、筋力や認知機能、コミュニケーション力などが衰えてくるもの。この衰えのことを「フレイル」というのだが、老化によるさまざまなフレイルは、“口の機能の衰え”が引き金になることが多いのだ。

「口の衰えは“オーラルフレイル”といい、全体的なフレイル進行の前兆。例えば、かたいモノが食べにくい、汁物でむせる、口の乾きが気になる、食べこぼしが多い、滑舌(かつぜつ)が悪くなった、などがあれば要注意。初期老化の重要なサインなのです」(平野先生、以下同)

 いずれも、ささいな症状ゆえに、年だからしかたないと放置しがちだが、やわらかいものばかりを食べれば、さらに口腔機能は低下し、偏った食事で栄養不足を招く。やがて心身にも悪影響をもたらし、気持ちの落ち込み、社交性の減少、ひいては要介護へ……と負のスパイラルへと陥る。

 東京大学で行った調査では、オーラルフレイル群は、身体的フレイルが2.41倍、要介護認定が2.35倍、筋力が低下し寝たきりの原因になりやすいサルコペニアは2.13倍、総死亡リスクが2.09倍という結果に。

「飲み込む力などは、50代から落ち始めます。大切なのは衰えの兆候を見逃さないこと。歯ごたえのあるものを食べ、口のエクササイズを習慣化するなど、衰えに対抗する意識が大切です」

 またオーラルフレイルは、2018年から口腔機能低下症という疾患名で保険診療の対象となった。罹患(りかん)している割合をみると、65歳〜69歳で3割、75歳以上で4割と年齢とともに増えている。気になる症状があれば、歯科医院で噛む力や滑舌具合などを測り、客観的な診断を受けることが可能だ。

「“健康で長生き”を叶(かな)えるためにも、オーラルフレイルに早く気づき、積極的に予防や改善に努めましょう」

【自分でできるオーラルチェックリスト!】
□ 半年前と比べて、かたいものが食べにくくなった(はい2点/いいえ0点)
□ お茶や汁物でむせることがある(はい2点/いいえ0点)
□ 義歯を入れている※(はい2点/いいえ0点)
□ 口の乾きが気になる(はい1点/いいえ0点)
□ 半年前と比べて、外出が少なくなった(はい1点/いいえ0点)
□ さきイカ・たくあんくらいのかたさの食べ物を噛むことができる(はい0点/いいえ1点)
□ 1日に2回以上、歯を磨く(はい0点/いいえ1点)
□ 1年に1回以上、歯医者に行く(はい0点/いいえ1点)
(※歯を失ってしまった場合は、義歯などを適切に使ってかたいものをしっかり食べることができるよう治療することが大切です。)

合計点数が
0〜2点:オーラルフレイルの危険性は低い
3点:オーラルフレイルの危険性あり
4点以上:オーラルフレイルの危険性が高い
(※出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢)

放置はキケン! 口 の衰えサインを見逃さない

 オーラルフレイルの代表的な4つの症状の原因と対策を徹底解説。心当たりには、すぐケアをしましょう。

【1】むせる →食事のときは“深呼吸の姿勢”を意識!

 ゴクンと飲み込むことを“嚥下(えんげ)”というが、汁物を飲んだときにむせるのは、この嚥下機能の低下の表れ。主な原因は筋力の低下だ。食べ物や飲み物は、口→のど→食道と3つの部屋を通っていく際に、のど仏や喉頭蓋(こうとうがい)などのドアをあけて流れていく。しかし50代を過ぎると、筋力低下からドアの開け閉めがしにくい状態に。

「前かがみな姿勢で食事をすると、むせがち。深呼吸するときのように、胸をしっかり開けることで、通り道をまっすぐに保てます」

 また、舌の力が弱った場合も嚥下機能は低下する。

「何かを飲み込むとき、舌が上あごに押しつけられることでのど仏が上がり、食道の入り口を広げ、食べ物を通過させます。舌の力が弱いと、のど仏が上がりきらず、食道への入り口も開かないままです。『舌の体操』(記事の後半で紹介)で筋力キープに努めましょう」

【2】かたいものが食べにくい →献立に噛みごたえのある食材を追加!

 たくあんなどが食べにくくなるのは、入れ歯や歯の欠損、あごの筋力低下などが原因で、食事の内容には注意が必要だ。

「噛む力が弱まると、野菜、海藻、魚介、肉などを避け、パンや麺、菓子類を多くとりがち。栄養状態は悪化し、噛む力はますます低下していきます。毎日の食事は何よりの咀嚼(そしゃく)トレーニング。一品でも歯ごたえのある食材を取り入れて」

 噛むことで、唾液の分泌を促し、胃腸への負担も軽減できる。

「口のまわりの筋肉も鍛えられるので表情も豊かになります」

【3】口臭が気になる →歯磨きケアと舌の体操が有効!

 口臭の原因は、歯石や歯垢(しこう)、舌苔(ぜったい)などの汚れや自浄作用のある唾液量の減少などだが、

「口腔内の汚れ、嚥下機能の低下、免疫力の低下などの要因が重なると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります」

 口の中が不衛生だと、肺炎の原因となる細菌が多く増殖して症状の悪化につながる。

「基本は1日3回のブラッシングで口の中を清潔にすること。歯間ブラシを使ったり、入れ歯の手入れも丁寧に。舌は、動かさないと汚れが付着しやすいので、『パタカラ体操』(記事の後半で紹介)などで意識的に動かしましょう」

【4】口が乾く →唾液腺を刺激し分泌量をアップ!

 年齢とともに唾液の量と質が変わってくるのが、口が乾く原因。若いときの唾液はサラサラとしているが、年齢を重ねると粘り気のある唾液が多くなる。加えて唾液の分泌量も減ってくるので、口の中がネバつき乾きを感じやすくなるのだ。

 そのまま乾燥が進むと、舌や唇・頬の動きが悪くなり、嚥下や会話がしにくくなる。すると味覚も鈍くなり、食べる楽しみも低下してしまう。

「食事の前に唾液腺のマッサージ(下記参照)をすると、口の中がうるおうので、食事がしやすくなります。市販の口腔保湿剤を使うのもおすすめです。口の乾きや不快感が軽減しますよ」

【唾液腺マッサージ】
●舌下腺マッサージ
親指を立てて、あごの下から舌の部分をやさしく押す。強く押しすぎないように注意。7〜10回繰り返す。
●顎下腺マッサージ
両手で握りこぶしを作り、左右のあごの下にはめ込むように当てる。首のほうから手前に向かってこぶしを動かす。10回以上繰り返す。
●耳下腺マッサージ
左右の耳の下より少し前の位置に人さし指、中指、薬指の3本を当て、そこを中心にゆっくり円を描くように指をやさしく回す。2分以内に10回以上繰り返す。

毎日実践! 口の筋トレ&エクササイズ

 飲み込む、噛む、唾液を出すなどの口腔機能を高める、口と舌の体操をご紹介!

【1】口の開閉と口輪筋の体操

 口の開閉は、咀嚼に使われるこめかみ上の側頭筋と頬の後ろの咬筋(こうきん)の筋力アップに。また、舌を上あごに押しつけてかみしめる動作は、舌の筋力をアップさせて、嚥下機能の向上に役立つ。頬をふくらませたりしぼませたりする動きは、口輪筋に効果的。朝晩2回行います。

(1) 人さし指をこめかみに、親指をあごにあて、ゆっくりと大きく口を開けて「アー」と声を出す。
(2) しっかりと口を閉じて、口の両端に力を入れながら、舌を上あごに押しつけるようにして、「ンー」と声を出しつつ奥歯をかみしめる。(1)〜(2)を3回繰り返す。
(3) 頬をふくらませて、舌を上あごに押しつけ、口から息がもれないようにこらえる。
(4) 息を吸うように口をすぼめる。(3)〜(4)を3回繰り返す。

【2】ブクブク&ガラガラうがい

 実は、複雑な口腔機能をきたえられる“うがい”。ブクブクとゆすぐ動きは、水がこぼれないように口輪筋を締めるという頬の筋トレに。ガラガラうがいの動きは、舌の奥の筋力を高め、嚥下機能を維持する訓練になる。1日に数回行い習慣化しよう。

(1) 水を口に含んで頬全体をふくらませ、10秒ほどブクブクして水を吐き出す。
(2) 水を口に含んで上を向き、のどの奥で15秒ほどガラガラして水を吐き出す。

【3】舌の体操

 舌と舌の動きに関する筋力の向上に役立つ体操。舌の動きがよくなると、唾液も出やすくなり、ゴクンと飲み込む動作がスムーズになる。誤嚥の防止に効果的。朝晩2回行います。

(1) 口を開けて、舌をできるだけ出す。
(2) 上唇を舌先で触るように上へ持ち上げる。
(3) 左右の口の端を舌先で触るように左右交互に動かす。この動きを3回繰り返す。

【4】パタカラ体操

「パ」は食べ物を口からこぼさない唇の働き、「タ」は上あごに舌をくっつける嚥下の働き、「カ」は誤嚥せずに食べ物を食道に送る筋肉の働き、「ラ」は滑舌をよくする働き。唇、舌の先端、舌の奥を意識しながら2セット行います。

「パパパパパパパパ」唇をはじくように8回発声。
「タタタタタタタタ」舌先を上の前歯の裏につけるように8回発声。
「カカカカカカカカ」舌の奥を上あごの奥につけるように8回発声。
「ララララララララ」舌を丸めるように8回発声。
(パタカラを2セット)

《便利なアプリも!》
スマートフォンのマイクに向かって発音すると、口の筋肉の働きを「良好」「少し心配」などチェックできて、トレーニングのガイドも。
無料アプリ 『毎日パタカラ』
Google play https://bit.ly/2Kny3DA
App Store https://apple.co/3myse3j

(取材・文/樫野早苗)

《PROFILE》
平野浩彦 ◎東京都健康長寿センター歯科口腔外科部長、歯科医師。専門は老年歯科学。オーラルフレイル研究の第一人者として、臨床のかたわら研究も行い、講演も多数行っている。

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定