『天国と地獄』“階段落ち”がトレンド入り もはや伝統? 入れ替わりコンテンツの強度

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2021年01月24日 08:40  ORICON NEWS

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写真(左から)綾瀬はるか、高橋一生 (C)ORICON NewS inc.
(左から)綾瀬はるか、高橋一生 (C)ORICON NewS inc.
 新ドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系)の初回放送が視聴率16.8%と好発進。一話ラストで主演の綾瀬はるかと高橋一生が入れ替わるシーンには、「入れ替わり後の2人の芝居がすごい」と演技に対する反響が。同等に注目されたのが“入れ替わり方”。階段からゴロゴロと転げ落ちて、2人の精神が入れ替わるという演出に「令和になった今でも階段で入れ替わるんだ」と“階段落ち”がツイッターでトレンド入りした。幾度も作られてきた“入れ替わりコンテンツ”。一見ベタに見えても、なぜここまで盛り上がることができるのか?

【写真】高橋一生そっくりの冷酷な表情を思い出す…鋭い目線を送る綾瀬はるか

■「懐かしの『転校生』ネタが」――その様式美に圧倒

 ドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』は、正義感が強く融通の利かない刑事・望月彩子(綾瀬はるか)と、連続猟奇殺人の容疑者で製造メーカー社長の日高陽斗(高橋一生)の互いの心と体が入れ替わってしまう物語。その入れ替わりが起こったきっかけは、2人が階段をゴロゴロと転げ落ちる演出だった。

 2人が階段を転げ落ちて人格が入れ替わる…と聞けば、思い出されるのが名匠・大林宣彦監督の映画『転校生』だ。以前からコントネタに取り入れられるほど定番化された手法であり、もはや“伝統”。SNSでは「階段落ちで『入れ替わってるーーー!??』 懐かしの『転校生』ネタが」「まさか『転校生』方式(階段落ち)のベタベタで来るとか思わなかった」などと話題に。また、入れ替わった後の高橋一生の演技に、「高橋一生の女性的な演技、『転校生』の尾美としのりと並ぶ。第一声も、カラダの動きも」と映画『転校生』が思い出されたユーザーも多かったようだ。

 「人格入れ替わりコンテンツの歴史は実は古い」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「その最初期のものと言われているのは1882年に出版されたイギリスの作家エフ・アンスティの『あべこべ』。父と息子の中身が入れ替わってしまう小説です。1930年には笑気ガスで人格が入れ替わる英小説『Laughing Gas』が。1972年には少女期のジョディ・フォスター主演でディズニー映画にもなった、母と娘が入れ替わる『フリーキー・フライデー』が話題に」

「日本においては作家・サトウハチローによる児童文学『あべこべ物語』(1975年)、映画『転校生』の原作となった児童文学『おれがあついであいつがおれで』(1979〜1980年)あたりが最初期と言われています。“人格入れ替わりコンテンツ”が日本で人気となったのは、明らかに映画『転校生』のおかげでしょう」(衣輪氏)

■ファンタジーから現実味のあるものまで“入れ替わり方”の変遷

 人々に受け入れられた人格入れ替わりコンテンツだが、その設定があまりにもファンタジーであるがため、その入れ替わり方法には日本においても、クリエイターがさまざまなアイデアをひねり出してきた。

 例えば観月ありさといしだ壱成が出演した映画『放課後』(1999年)では、電気工事が行われていた場所に雷が落ち、そこにいた2人が入れ替わるという手法をとっている。娘役の新垣結衣と父役の舘ひろしが入れ替わるドラマ『パパとムスメの7日間』(2007年)では、事故に巻き込まれて。ドラマ『山田くんと7人の魔女』(2013年)は、ぶつかり階段から転げ落ちてキス。このあたりは、イメージ的には『転校生』の設定にプラスαを足した設定が多い。

 一方でドラマ『民王』(2013年)では内閣総理大臣の父(遠藤憲一)と、女子力の高いその息子(菅田将暉)が入れ替わったが、これはCIAの脳波研究を何者かに盗用され、それぞれの歯にチップが埋め込まれたことが要因となっており、やや現実に寄せた手法に。2016年に大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』は、ヒロインが入れ替わりの能力を代々継承されている家系だった、とSF的なバックボーンが設置された。

 今回の『天国と地獄』は刑事と犯罪者、また宿敵同士が入れ替わるということで思い出されるのは、ジョン・ウー監督のハリウッド映画『フェイス/オフ』(1997年)。これは最新医療の技術を用いた整形や移植手術で、犯罪者が刑事の顔を自分に移植、自分の顔を刑事に移植する、というサイコな展開で魅せており、このように、これまであまたの“入れ替わり法”があったため、『天国と地獄』でどのように入れ替わるかについては視聴者の注目ポイントだった。

「さらに言えば、同作の1話は刑事ドラマとしても堅固であり、さらにはコロナ禍、マスク、レンタルサイクルなど“現代”の事象もしっかりキャッチ。手柄を上げたい綾瀬さん演じるヒロイン刑事と北村一輝さん扮する老獪な刑事の対比や葛藤など人間ドラマまで作り込まれており、それだけで良作でした。その出来の良さに、“じゃあ入れ替わり法は?”と視聴者に強く期待させたが、これがまさかの『転校生』ネタ(笑)」

「敢えての“古典的手法”による、いい意味での“拍子抜け”がストーリーの“緩急”にも“スパイス”にもなっており、『思わず笑ってしまった』という視聴者も。脚本が大阪出身で『ごちそうさん』などでも知られる森下佳子さんなので、“いかにも!”といった感じではあるのですが、さすが、まったく陳腐な印象にはなっておらず、“階段落ち”の経年劣化しない“強度”も改めて見せつける形になっていたと思います」(衣輪氏)

■演者の力量が丸分かり “入れ替わりコンテンツ”が愛され続ける理由

 もう一つ、“入れ替わりコンテンツ”の見どころは、演じ分け合戦だ。入れ替わる演者同士が、お互いの役柄をどれだけ理解しあっているかが試されるほか、年齢もジェンダーも超えなければならないなど、役者にとっては難しいジャンル。

 今回の綾瀬と高橋の演技も、互いの細かいクセや表情、セリフの拍の置き方まで意識された演技であり、放送後に「綾瀬はるかのサイコパスな笑い方がこわすぎる」「バラエティで見てた綾瀬のイメージから覆る」「高橋一生の第一声から中身が女性になっているのがわかる、スキルがすごい」などいう感想がSNSを席巻。先述したようにトレンド入りを果たすほど話題となった。

「仕草やセリフの言い回しなど、演者の力量がダイレクトに視聴者に伝わるコンテンツですが、これが演出の細かいところまで考察しながら見ていくSNS時代にも合致。今の時代の視聴法に合っており、古典的ながらより強度が増したと見るべきでしょう。また同コンテンツは役者にとっても演者の既存イメージを大きく打破するきっかけになりやすい。『民王』で菅田将暉の株が爆上がりしたこともまだ記憶に新しい」

「もちろん違和感なく見せる工夫の面で“脚本”も重要になってきます。脚本の森下さんは2020年『今だから、新作ドラマを作ってみました』(NHK総合)の第3夜でも“入れ替わりコンテンツ”を執筆していますが、その力量が認められたのかもしれません。ここ昨今、ドラマのエンドロールは主演の名前が最初に出るのが一般的でしたが、同作では森下さんがトップバッターに。これは最近、本当に見られない番手であり、脚本家が重視された作品という意味でも注目している人は多い」(衣輪氏)

 脚本の素晴らしさ、ファンタジーな設定に重力を与える圧倒的な演技力。同作は“入れ替わりコンテンツ”の面白さを改めて示してくれる作品になりそうだ。

(文/中野ナガ)

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  • 大林宜彦監督の「転校生」は偉大だった。
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