写真 ともに巨人のスターの系譜を継いだ原辰徳監督(左)と坂本勇人(右) (c)朝日新聞社 |
坂本勇人は現在の巨人を代表するスター選手であり、同時に日本の野球史に残る名プレイヤーでもある。
【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手! ここ10年以上チームの顔となり、スターの系譜を受け継ぐ選手として存在感を放っているが、気になるのが坂本に続くような選手が、現状では球団内に見つからないことだ。
「我が巨人軍は永久に不滅です」
終身名誉監督の長嶋茂雄が、74年10月14日の引退セレモニーで残した名言。日本国民にとっての英雄が発した言葉は、半世紀近い時間を経ても未だ色褪せない。
球界の盟主・巨人には、誰もが認める生え抜きのスーパースターがいつの時代もいた。スポーツという枠を超え、誰もが知る稀有な存在だった。巨人は日本初のプロ野球球団として誕生して以来、長きに渡り球界を牽引している。栄光の歴史の中で名選手を輩出して来たが、その中からは多くのスーパースターが生まれた。
先述の長嶋と王貞治(現ソフトバンク球団会長)は、日本の歴史上に残る人物と言ってもいいほどのヒーローだった。
天覧試合でのサヨナラ弾など、走攻守の全てにおいて記憶に残るプレーで見るものを魅了した長嶋。王は通算868本塁打の世界記録保持者で、誠実な人柄は誰からも慕われた。V9時代の象徴であった2人は、球団最高の功労者であり、野球人の模範。高度経済成長時、日本がガムシャラに突き進んでいる中での活躍は、国民の希望のような存在だった。
「チャンスに強い派手な長嶋と世界中で尊敬され続ける王。野球の実力や人間性の素晴らしさと同時に、時代背景も味方した。新聞に加え、テレビが国民の大衆娯楽となりその中心人物だった。活躍は国中に報道され、誰もがファンになった。また2人とも人間性に優れ、ファンを大事にしたのも大きい。現役引退後も監督、球団フロントなどとして活躍。長嶋、王を超える人材は球界から出ていないと言っても過言ではない」(在京テレビ局関係者)
そして江川卓と原辰徳(現監督)は新しい形の野球選手として輝きを放った。
江川は高校時代から『怪物』と呼ばれ、大学、浪人を経て野球協約違反すれすれの『空白の1日』で入団。入団時の騒動は国会で取り上げられるほどの社会問題になった。『若大将』原はアマチュア時代から追っかけのファンがいたほどのアイドル。チャンスに弱い、とも言われたが、球団史上4位となる1066試合で4番を任された。80年代の投打の柱は、ファンとともにアンチが多かったのも特徴だ。
「好き嫌いがはっきり分かれた。2人ともアマチュア時代からよく知られた存在。巨人入りへの物語性も抜群でキャラクターが立っていた。プロでの飛び抜けた結果はないが、それ以上の強いインパクトを残した。ユニフォームを着ていなくても顔と名前が一致するので、CM起用したがる企業が後を絶たなかった。野球選手と芸能人の距離が縮まり始めた時代のスター。今の時代ならネット上で連日炎上することは間違いないが、それも人気のバロメーター」(大手広告代理店関係者)
ゴジラの愛称でファンに愛された松井秀喜(現ヤンキースGM特別アドバイザー)は、巨人では最後の“国民的スター”かもしれない。
日本人離れした体格とイカツイ風貌。見た目とはかけ離れた謙虚な人間性。野球の飛び抜けた実力に加え、高校時代の5打席連続敬遠というストーリーも併せ持つ。真面目なだけでなく、時にウィットに富んだ発言をするなど、お茶目な面を見せてくれたのもファンからすると身近な存在に感じた。イチローと同時期にメジャーリーグで活躍し、国民栄誉賞を受賞した歴史に残る選手だ。
「『今は何を言っても裏切り者と思われるかもしれませんが』というメジャー挑戦会見時の言葉も衝撃的だった。寡黙に試合に出続け、チームのためにプレーする姿勢も日本人好み。野球、巨人の危機が叫ばれる中、監督待望論が強いのも人気の証明。最も愛されているOBかもしれない。松井関連の番組は今でも数字が良い。巨人の中心選手で、他球団ファンから悪く言われないのも珍しい」(在京テレビ局関係者)
松井以降、巨人に真のスーパースターは見当たらない。だが、現役時代にその領域に近づいたのが高橋由伸(前監督)と阿部慎之助(2軍監督)だった。
高橋は慶応大からドラフト1位入団のエリート街道を歩んできた。見た目、プレーともにスマートで洗練され、都会的な印象で人気を誇った。阿部は捕手のイメージを覆した強打の捕手。明るい性格で攻守に渡リ大きな存在感を発揮し続けた。国民的とまではいかないが、2人とも間違いなく球団の枠を超えたスタ―選手であった。
「高橋は現役としてプレーしていれば2000本安打達成の可能性もあった。しかし引退して監督を引き受けたが、結果を出せずに終わった。阿部も次期監督候補の一人として見られているが、選手に罰走をさせるなど指導者としては疑問符がつき始めた。両者ともに、球団内の人事に巻き込まれてしまった感があり、ここへ来て現役時代の印象が薄くなってしまった。まあ、原監督も最近は同様ですが、監督問題が絡むと良いことがなく評価が下がってしまうこともある」(巨人担当記者)
現役でこのスターの系譜を継ぐのが坂本だ。生え抜きとして、史上2番目の早さで2000本安打を達成、ルックスも際立っており、実力、人気とも今や球界ナンバーワン。生涯巨人を宣言したのも大きい。
「坂本は過去のスーパースターとの類似点がある。しかし、坂本に続きそうな選手が他に見つからない。生え抜きで4番に定着した岡本和真も素晴らしい選手だが、地味な印象がぬぐえない。今後は松井のような対外的な明るさが必要になる。実力、ルックス、カリスマ性など、現状では当てはまる選手が見当たらない。最近は球団主導でマスコミやCMへ出演の売り込みをかけているようだが、スターとは本来、周囲が自然に認めるもの。公私ともに飛び抜けている存在が出現するのを待つしかない」(大手広告代理店関係者)
今やプロ野球=巨人という時代は過去のものとなった。それでも巨人の球界での注目度は群を抜いている。坂本もベテランの域に差し掛かっており、そろそろ次世代のスーパースターになるような雰囲気を持った選手が現れて欲しい。今後のプロ野球の人気を左右する大きな問題でもある。