「協力金はもらう」でも「19時以降も酒は提供する」店側の主張とは

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2021年01月27日 16:40  AERA dot.

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写真1月8日、午後6時34分の神戸市・三宮の繁華街の様子。写真はイメージ(C)朝日新聞社
1月8日、午後6時34分の神戸市・三宮の繁華街の様子。写真はイメージ(C)朝日新聞社
 店の電光看板の明かりは消えているが、店内では客らが酒を飲みながら談笑している。午後9時過ぎ。都内のとある居酒屋での光景だ。「うちは閉めないよ」。新型コロナ感染者急増による時短要請の協力金は求める意向だが、午後7時以降も酒類の提供を続ける店主らに思いを聞いた。

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 東京都東部の下町にある繁華街。午後9時を過ぎたころに歩くと、周辺の店の電光看板の明かりがほぼすべて消え静まり返っている。ただ、路地にある一軒の小さな居酒屋の前に立つと、店から楽しげな話し声が聞こえた。

 店内には、2人のサラリーマンと思しき客がいた。70代の店主は語る。

「夜7時までで酒をおしまいなんてできないよ。だって、そのあとも飲みたいっていう常連さんが店に来るんだから」

 新型コロナ流行以前は、早い時間は主に近所の高齢層の常連客が来店し、午後7時ごろからは仕事帰りのサラリーマンらで賑わい、ほぼ毎日、席は埋まっていた。テレビや雑誌の取材が来たこともあった。

「お店って、信用商売なんだよ。遅くまで働いたサラリーマンの常連さんが来てくれるのに、こっちだけ閉めるっていうのはできない。ずるしてもうけようとしてるって思うかもしれないけど、こんな時期だから8時以降に来る常連さんは多くても3、4人くらいで、ちょっと飲んで食べて帰るだけ。新規のお客さんは絶対に入れないよ。協力金があるし、自分の体力を考えたら早く店を閉めて帰った方が楽だけど、それはできないよ」

 客の男性も言う。

「外からは閉店しているようにみせて、ひっそりとやっている店はあります。常連だけしかいませんけどね。あとは、壁掛けの時計の針を15分くらい遅らせてやっている店もありますよ。まだ7時になってませんよって」

 東京の多摩地域にある、カラオケを備えたバーも午後7時以降の酒類提供を続ける。ここは常連以外のお客の入店も断らない姿勢だ。

 男性店員は声をひそめる。

「クレジットカード決済は会計の時間が分かってしまうので、遅い時間のお客さんは現金でのお会計をお願いしています。遅くまで営業している店は、現金でやっているところが多いでしょうね」

 としてこう続ける。

「もともと深夜が稼ぎ時だったので、協力金では全然足りません。店を開けているのはスタッフが食べていくため、ただそれだけです。いま店がつぶれたとして、スタッフが働ける他の店なんてそうそうないですから」

 別の立ち飲み居酒屋も午後8時閉店にはしているが、酒類を含めたラストオーダーは午後7時半ごろまで引っ張っている。

「7時近くに入ってくるお客さんがいるし、店としても少しでも売り上げを増やすためです。バイトの学生たちにシフトを減らしてもらっている中で、ラストオーダーを伸ばして出せる売り上げで、ひとり分のシフトを増やせるかもしれない。雇用を守るために必死ですから、30分くらいなら別にやましいとは思いません」

 新型コロナの感染状況が目に見えては改善せず、医療機関の逼迫(ひっぱく)が続く中、緊急事態宣言を延長する案が政府、与党内で浮上している。

「延長になったら、いまの不公平な協力金では経営が限界に達して、遅くまで開ける判断をする店が増えると思いますよ」(前出の居酒屋店主)

 思いを話してくれた店は、すべて「協力金は申請するつもり」と答えた。これに対して「ズルをしている」と非難することは簡単だが、「従業員を守るため」だったり、損得を超えたところで「客のため」に続けているという現実もあるようだ。

 時短要請がいつまで続くのか不透明な中、店主たちの苦悩は続く。

(取材・文=AERAdot.編集部・國府田英之)

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